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美那子が危機をかわし、命子が予言を聞く 3
しおりを挟む「良助は車を置きに行ってて、あとから来るよ」
そう言うと舞は、独りでベンチに座っている命子を、立ったまま見つめた。命子は舞をうかがった。舞が自分の味方になる義理のないことが思われた。
美那子と百貨店を失った舞はなんだかくすんでしまったようだった。それで以前がどれほど愛らしくて善良だったかをようやく知るような気持ちがした。舞にとって命子は大切なものを一切合財奪って行った悪魔なのに違いなかった。
そんな考えにうらぶれている命子へ、
「――あたしね、今度のことをキッカケに、美那子さんを卒業できるようにがんばるの」と言いつつとなりに座った。「卒業ってもね、なんていうのかな――自立するの。今までは、美那子さんの瘤みたいなものだったから」
命子は、それじゃ今はわたしが瘤だと言うのかと、飛び出そうになるものをすんでのところで抑え込み、きっと舞さんもそんなつもりはないのだろう、いやあるのかしら、つもりはなくとも無意識的に、などと考えてしまう、これではいけないと、苦しまぎれに「美那子さんと舞さんはどんなお友だちだったんですか」。
舞はむつかしい顔になって、だって命子ちゃん知ってるでしょと言うけれど、返事がないので、そういうことじゃないのかと、探し探しし、あれこれ話す。まだ返事がない。これでもないのか、これでもダメかと、内容はどんどんデリケートなものになり、遂には……ああ、こんなことまで言っちゃった。でも命子ちゃんだからいいか。
命子はうつむいて聞いていた。自分には、今からでは、そんなえげつなくも輝かしいエピソードはとうてい持てないけれど……いや、舞さんの思い出も自分は吸収した。懐かしさというものは、自分の体験じゃなくとも持てるはずだ……云々と、陰った顔が卑屈に明るみかけたところへ
「ねえ命子ちゃん」と真剣なまなざしで。「もしなにかあっても、今度は急に出てったりしないでね。美那子さんに言えなかったらあたしに、ひとまず絶対相談してね」
命子は、なんと答えてよいやらわからなかったけれど、あくまで真剣なまなざしなので、とりあえず小さくうなずいた。
そこへ美那子と良助が探しに来た。命子は舞に対して内心、激しく塗り替えられるものがあったけれど、舞はうなずきを得たことでさっぱり切り上げて立ち上がり、嬉しそうに美那子へ手を振ると、軽やかに右手を差し出して、小さく座っている命子を引っぱり起こした。
「なんだ、舞と話してたの」
と美那子が、帰りが遅かった理由を早とちりするのを、強いては否定せず、
「賢也はどうしました?」
「帰ったよ」
「そうですか。――なんか失礼なこと言いませんでしたか」
「――まあ、ちょっとくらいね」
「すみません……」
美那子は曖昧に笑って済ませた。一同いったん部屋に上がって、しかしすることがないので縁日ヶ丘に行った。
舞は命子に対して、以前と変わらなかった。ただべっぴんの後輩が可愛いくて誇らしいだけな、素朴で優しい先輩であった。
ただ、露店に対するセンサーは、もう働かなくなっていた。
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