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緩慢に流されながら、縄の端だけはいつまでも握りしめている 2
しおりを挟む大きなレンタカーを借りて山の中の貯水池にいる。女性三人は土手にシートを広げてお菓子をついばみ、良助は向こうで工場の後輩と釣り糸を垂れていた。
異様に巨大なブラックバスがいるという噂なのだった。後輩は美那子と命子をちらちら見ていた。ふと命子が、薬指にタトゥーを入れていたころの名残と察しられる軽快さで以て可愛らしく手を振ると、嬉しそうに振り返し、良助に小突かれていた。
舞が、洗面所の蛇口の網が取れて水が撥ねまくるトラブルが起きたことを、延々と話していた。手伝ってくれない良助、頼りたくない管理人さん、でもこれからはなんでも自分で解決しなきゃと思って、洗面台にシールが貼ってあった番号へ電話すると、蛇口の会社は別だと言われ、蛇口の根元に貼ってあった番号にかけると、ぜんぶ取り換えるならいいけれど部品修理は違うと言われ、部品修理の会社の番号を調べて電話したらホームセンターに卸していますと言われ、ホームセンターに行ったら在庫が無いから直接購入してくださいと言われ、また部品修理の会社にかけ直して着払いで送ってもらって、割高になって二千六百円もした云々……。
それから良助の悪口になり、話を最後まで聞いてくれない、すぐ「話が長い、要点を言ってくれ、結論から言ってくれ」と遮られる、でも違うでしょ、なんかスポーツとかでも、それは勝ち負けのためにやってるんだろうけど、途中が楽しいからやるんじゃん、勝ち負けは途中をやるための口実で、途中が大事なんでしょ、それを要点を言ってくれ結論から言ってくれとか、だから運動神経悪いんだよ、云々……。
ふと舞が良助のほうを見た。糸を引き上げたので、なにか釣れたのかと目を凝らしたのだったけれど、ルアーを手繰り終えただけのことで、ふたたび投げ入れていた。
舞は大きくため息をつくと、
「まあいいや。言ってても仕方ないから」
「それだけ言い尽くしてから」
と美那子が言えば、舞は肩をすくめて、
「そうツッコミなさるな。自立した女は大変なのよ」
噂の大魚は釣れなかった。
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