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永遠の迎え酒が底をつく 3
しおりを挟む舞は意想外に手際よく、たいそう自然な感じで命子を買い物に連れ出した。
プリンだのエクレアだの白玉ぜんざいだの物色しながら相談した。美那子を解放し、おのが等身大の人生へ帰還する案件について。すると舞は造作もない口調で、
「美那子さんと命子ちゃんで久美ちゃん育てればいいんだよ。美那子さんならいいお父さんになるから」
これに命子は一瞬世界がぱっと明るく、非常に幸福な気分に満たされて、それから重たい不快感に見舞われた。舞が真剣に答えていないはずはなかった。遊歩道をぶらぶら歩きながら、
「……美那子さんは、久美子のお父さんなんかにならなくっても、いい人見つけて、いいお嫁さんになれますから」
舞は閑散としたベンチを見つけると、虫がいないか調べて、座った。なんだかすぐにはとなりに腰かけない命子に頓着なく、添加物の少ないスナック菓子の袋を開けつつ、
「あたしたちがくっついてなかったら、美那子さん今ごろ家庭を持って、幸せに暮らしてたかな」
命子は舞が「あたしたち」と言ったことに対して、どうとも定まらないものを感じつつ、
「そうですね。美那子さんだったら引く手あまたでしょ」
「ヒクテアマタ?」
「引っぱりだこでしょ。モテたでしょ」
すると舞はかぶりを振って、
「いやァそれがあんがいモテないんだ。きっとね、今の時代は男が賢くなってナヨナヨだから、敷居が高いんだよ。あんな美人で、いい匂いで、スタイルがよくて頭のいい女がモテるには、男がもっとちゃんと馬鹿でギラギラしてないとダメなんじゃないかな。――その点ではある意味、あたしみたいななんてことないのが、ずいぶんトクしたけどさ」
「それだったら、わたしもそのクチかな」
「命子ちゃんは違うよ。しっかり上玉だよ――ああ、美那子さん、女の子にはモテてたけどね。高校時代めっさ告られてた。女子高だったの言ったよね?」
「付き合った人もいたんですか」
「さあ。二年の時だけ、なんとなく疎遠っぽくなってたから、そのあいだのことは知んないけど、いないんじゃないかな。……とにかく、美那子さんが賛成するなら――絶対するけど――実家に帰るのいいと思うよ。久美ちゃん、命子ちゃんのこと大好きだもんね」
「舞さんのこと、わたしよりも好いてましたよ」
「それはお友だちとしてだよ。あたしなんか、同い年くらいだと思えたんじゃない? 久美ちゃん大人だから。でも実家帰って狭くないの? 弟君もいるんでしょ。コヤンキーの」
「田舎だから家は広いです」
「もしかしてお金持ち?」
「そうでもないですけど。でもせめて光熱水費とか食費とか、入れられるくらいの仕事は探します。最低限は自立しないと」
「別にいいじゃん。しっかりのんびり久美ちゃんのお母さんやればいいんだよ。働いてるだけが自立じゃないよ」
「――じゃあ、なにが自立ですか」
「えっとね、ああ、それもそうだな。――……うんとね、きっとね、幸せであることが自立なの。――うん。そう。不幸せな人は自立できてないの」
ずっと立っていた命子は、ここでようやく舞のとなりに腰かけて、
「だったら、美那子さんからの卒業は、わたしたちには自立じゃないですね」
舞はうーんとうなり、お菓子を命子にもさし出して、
「きっとあたしたちは、みんなよりもいっこズルしてたんだよ」と言った。
それから二人で味の薄いスナック菓子を黙々と食べて、部屋に戻った。
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