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軽く自暴自棄る
しおりを挟む舞と良助が遊びに来た。舞は持参の薄いルイボスティーを飲み、オーガニックなお菓子を盛んに食べていた。
しばらくしてドライブに出かけた。いつかのステンドグラス教室がなくなっていた。舞が残念そうに空っぽの倉庫を見送りながら、
「みんなで骨相学の会社やる計画って、あたしまだあきらめてないんだ」とつぶやいた。
おなかの子どもは男の子らしかった。
「名前決めたの?」
「候補はあるけどまだ。どれも画数がよくなくて」
「姓名判断?」
「うん。あたしたちは気にしないんだけど、良助のお母さんが、絶対ちゃんとしなきゃダメって言うから。そう言われて逆らうほどの信念も逆にないしね。それで、美那子さんの住んでた部屋に来た人ってね、」
「脈絡脈絡」と良助。
「うるさいな。――美那子さんの出てったあとにすぐ入ったんだけど、中年のご夫婦でね、内緒で犬飼ってるの。郵便とか来るたびに吠えるのが聞こえて来るんだけど、誰かが苦情とか言って管理人さんにバレやしないかって、こっちがひやひやしちゃってさ。ね、」
と良助を見る。良助はただ肩をすくめた。
「お子さんはないみたいで……この話、もう言ったっけね」
「まあね」と美那子。
「あたし何回くらい言った?」
「今のが三回目」
「そうか……じゃあまだ大丈夫だね」
「大丈夫よ」
昔日に鴨の親子が泳ぎ去った川に行って、座られそうな土手を探し、道路わきに車を停めた。虫がいないかどうか舞が入念にチェックして、良助が敷いたシートに座った。
美那子が重範のことを報告すると、舞はたいへん喜んで、部屋まで送ってくれながら上がり込まなかったことに対して
「すっごい良い人じゃん。ジェントルマン。良助なんか送り狼だったよ」
「お前も悪い羊だったよ」
「私も悪い羊になろうかしら」
「美那子さんはダメ」
「そうそう」と良助。
美那子は一瞬良助を見、川面へ視線を戻すと、
「なんで私はダメなの」
「だって美那子さんは、完璧ウーマンだから。我々しもべたちを悲しませない義務があるんだから」
「そうそう」
美那子は良助を横目で睨んで黙らせると、
「――私なんか、ただのあわれな売れ残りよ」
「違うよ。絶対そんなんじゃない。そんなこと言わないで」
「しもべたちが悲しむから?」
「そうだよ」
「しもべたちは、恋人や、家族を持っているのに?」……
夜になって独りでいると、色々な考えに襲いかかられる。えらく粘りついて、ずいぶんやかましい。無駄に重たい。だんだん精神や神経が耐え切れるのか心配になって来る、なかなかにそれは逃げ場のない――。
本当に独りになったことがこれまでなかったのだと思った。常に誰かがいてこその、比較の上でのシッカリ者で、誰かがいてこそのお山の大将で、こうして独りにされてみればたちまち、流されやすいことこの上ない、あんがい自分というもののない――……嗚呼耐えがたい。無駄にしんどい。ぜんぜん時が経ってくれない。
――いやだいやだ。
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