Untold Quest

尼子猩庵

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第三話 冒険者の誕生

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○見張り台

   小汚い少年が、なにかの草の茎をしがみつつ、退屈そうにしている。
   ふと、手びさしをして、ある一点を見つめる。
   つかのま見つめたあと、ぽかんと呆けた顔をして、手を下ろす。
   少年、自嘲的な笑みを浮かべ、ふるふるとかぶりを振り、目をこする。
   そうして、もう一度、手びさしをして、ある一点を見つめる。
   その顔がさっと青ざめる。

○カフィンの部屋

   薄暗い部屋。
   一つの寝床に、並んで眠っているカフィンとコーチャ。
   と、窓の外に響き渡る、指笛の音。
   二人、目覚める。
   指笛は、いつもと様子が違う。
   ぴゅうっ、ぴゅうっ、――ぴィィィいいい!!!……
   裸のカフィン、跳ね起きて窓に駆け寄り、カーテンを少し開けて外を見る。
   上半身を起こして目をこするコーチャ。

○広大な森(引き)

   ホリウドの村のほうへ、非常に巨大なモンスターが歩いて行く。
   森の木々をばきばきと倒し、土煙を上げながら。

○見張り台

   少年の隣、新たに駆けつけた村人(大人)が、息を切らしつつ、手びさしをしてモンスターを見ている。

村人「(たらりと汗を流し)――やっぱり、まっすぐ向かって来てるな……」
見張りの少年「なんで? ここにゃ、冒険者はいないのに」
村人「わからん。とにかく、なんとかやり過ごすしかない」

○ホリウドの村・広場

   病人や妊婦やお年寄りに手を貸しながら、人々がぞろぞろと避難してゆく。
   コーチャと並んで避難していたカフィン、立ち止まり、家々の隙間から遠くに見えている巨大モンスターを見つめる。
   カフィン、人々の流れから離れる。

コーチャ「カフィン?」

   カフィン、立ち止まり、なにか言葉を探すふうを見せるが、

カフィン「……ごめん」

   それだけ言って駆け去る。立ち尽くして見送るコーチャ。

○広大な森(引き)

   歩いてゆくモンスター。
   先ほどよりホリウドの村に近づいている。

○森の中

   せっせと荷物をまとめているタルニコ。 
   はっと顔を上げると、カフィンが木にもたれかかって立っている。

タルニコ「……なにしてるの」
カフィン「友だちが無事か、心配でさ」

   タルニコ、答えず荷物の整理に戻る。
   と思うや、くるりと背後を振り返って、

タルニコ「あのモンスター、懸賞金クラスだよね」
カフィン「余裕でな」
タルニコ「村に向かってるよね」
カフィン「まーっすぐな」
タルニコ「誰か冒険者が滞在してるの?」
カフィン「(真面目な顔になり)いや、それが、いないんだ。なのに、完全に村をロックオンしてる感じなの」
タルニコ「……」
カフィン「まあとにかく、前代未聞だしするからさ。友だちは無事かなって――」
タルニコ「(さえぎるように)あたしのことを、怪しんで来たんじゃなくて?」

   カフィン、怪訝そうな顔でタルニコを見る。
   タルニコ、カフィンの顔を見つめ返す。

タルニコ「……ほんとに、そういうわけじゃないんだね」
カフィン「どういうことだ? お前、なんかやったのか?」

   タルニコ、荷物を抱えて、歩き出す。
   ちょっと行ったところで立ち止まり、振り返る。
   カフィンもあとに続く。

○大きな木の前

   以前にロクパンクを埋めた場所。
   あたりは前よりも草むしている。
   埋めた地面はカモフラージュしたはずが、なんだか今も、そこだけ真新しい。
   タルニコ、地面を指さす。
   カフィン、首を傾げて、腕を組み、

カフィン「ここに埋まってる冒険者が、復活した」

   タルニコ、首を振る。

カフィン「じゃあ――……クイズする気はないぞ。簡潔に」
タルニコ「ここには、冒険者が埋まってる」

   カフィン、タルニコを見つめて、聞いている。

タルニコ「もちろん、深く埋めたし、何年も経ってるし、本当なら、モンスターを吸い寄せたりはしない」

   カフィン、タルニコを見つめて聞いている。

タルニコ「――それを、最近、時々掘り返しては、その白骨を、まるでくまさんのぬいぐるみかなにかのように、抱きしめて、いい子いい子している人がいましたとさ」
カフィン「…………お前、なんでそんなことしてんの」

   タルニコ、自嘲的な笑みを浮かべるばかりで、答えない。

カフィン「なあ。そんな姿、想像しただけで怖いよ。なんでそんなこと――」
タルニコ「懐かしくって」
カフィン「……」
タルニコ「二人で埋めたなって。あの頃、よく一緒にいたなって。ちゃんと、使い終わったあとは、元通り戻してたんだよ。……でも最近、ちょっと、ひんぱんに出し過ぎた」

   カフィン、地面を見下ろす。
   何度も掘り返された、不自然な地面。
   タルニコ、カフィンを見つめる。
   と思うや、笑顔を作り、

タルニコ「もうこれで、完全にアウトだな。いよいよあたしは――」
カフィン「今オレがなに考えてるか、わかる人」

   タルニコ、黙る。

カフィン「正解者には500G差し上げます」

   タルニコ、一瞬眉をひそめ、不快そうにするけれど、やがて、おずおずと手を挙げる。

カフィン「はい、そこの毛深い人」
タルニコ「――あたしが知ってるカフィンのままで、ちゃんとまだバカだったら、きっとこうすると思う……」

○ホリウドの村の前

   モンスターがすぐそばまで来ている。
   村の入り口に、数人の男たちが、粗末な武器を手に手に、立っている。

引率の村人「いいか。ダメそうだったらすぐに逃げるぞ」
村人(若い男性)「じゃあもう逃げていいか」

   そこへ茂みから、手を泥で汚したタルニコ登場。
   次いで、重そうに、泥に汚れた剣と盾を手にしたカフィン登場。

引率の村人「カフィン! それに……(とタルニコを見る)」
村人(若い男性)「いや、それよりその剣は……?」

   モンスター、一瞬カフィンを見る。
   すぐに視線を戻しかけるが、二度見する。
   モンスター、立ち止まり、カフィンとしっかり向かい合う。

カフィン「(足をがくがく震わせながら)さて、タルニコさんや。さっきの話だけどね、イメージとゲンブツは大違い。オレが今どれだけビビってるかわかるかい」
タルニコ「(全身震えながら)そんな余裕ない」
カフィン「この剣が、勇者マグカフや相棒ペルトボルの持ってるような代物なら吉。そうでなけりゃ――せめて即死させてもらいたいな」
タルニコ「来るよ!」

   モンスター、非常な巨体にぶるぶると力を籠め、大いなる一撃を繰り出そうとする。
   カフィン、じわっと股間を濡らす。
   が次の瞬間、剣を構え、山のようなモンスターに向かって駆け出す。

カフィン「クソッタレェェェ!!!……」

   スパァァァン!
   真っ二つになるモンスター。
   驚愕する村人たち。
   バンザイして、瞳を輝かせるタルニコ。
   誰よりも驚いたあと、高笑いするカフィン。

○広大な森(引き)

   森の中へ、斬られたモンスターが左右に、ズゥゥゥン……と倒れる。


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