Untold Quest

尼子猩庵

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第四話 旅立ち

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○見張り台(引き)

   村の子どもたち、町の役人たちの指揮のもと彼方へ引きずられてゆく巨大なモンスターの死骸を、見送る。

○見張り台(寄り)

子ども「ちぇっ。カフィンが倒したのにな」
子ども2「マジで1Gも払わんとは」
子ども3「『ほんとはダメなんですけど、内緒ですよ』みたいなよォ。どろぼう」
子ども4「だけど、カフィンってもう冒険者なんだろ? だからモンスターは来たんだろ?」
子ども「倒したから冒険者になるんじゃないの」
子ども2「それだったらどうしてモンスター来たんだよ。倒す前に来たんだぞ」
子ども3「どっちみち、ちゃんと登録してないから、御上ぼろ儲けなんだ」
子ども4「タコがよォ」

   子どもたち、遠ざかるモンスターを、指をくわえて見つめる。

子ども「せめてちょっと置いてけよ。やわらかいとこだけ。どんだけ食えたんだよって」
子ども2「でも食えないとこもスッゲーぞ。アレ埋めるんだったらどれだけ掘らなきゃ」

   子どもたち、遠ざかるモンスターを見送り続ける。

子ども3「……いつまででも見てられるな」
子どもたち「うん」

○村長の家・中

   《村長の家》のテロップ。
   大人たちが集まっている。
   カフィンとタルニコもいる。
   扉の隙間からそっと聞いているコーチャ。
   カフィンは剣と盾を持ったまま、興奮冷めやらぬ様子。
   目はキラキラと輝き、頬は上気してつやつや光っている。
   タルニコは陰気な上目遣いで大人たちを見ている。

引率の村人「――……なるほどな。道理で吸い寄せたわけだ」
カフィン「でも、埋めたの何年も前だからなァ。今さら過ぎるよ」
引率の村人「うむ、確かに、それはそうだ……」
カフィンの父親「どうして黙ってたんだ(ゲンコツ)」
カフィン「(平気の平左で)だけど、深ァァく埋めたんだよ。その証拠に何年もモンスター、来なかったでしょ」
引率の村人「しかしそれなら、どうして今さら来たのか……」

   みんな、なんとなくタルニコを見る。
   タルニコは陰気に見返すばかり。

○大きな木の前(回想)

タルニコ「――それを、最近、時々掘り返しては、その白骨を、まるでくまさんのぬいぐるみかなにかのように、抱きしめて、いい子いい子している人がいましたとさ」

○村長の家・中(現在)

カフィンの父親「問題はな、カフィン、この先のことだ。あのデカブツは、お前を明らかにロックオンしていた。そしてお前は、信じがたいことだが、倒した。これでもう、ゴリゴリの冒険者だ。これからも吸い寄せ合って、モンスターがどんどん来るだろう、ということだ」
カフィン「早い話が、出てけって?」
引率の村人「しかし、あのデカブツがどうして来たかがハッキリせんうちは」
村人(女)「わからないままカフィンが出て行って、また来られたら、今度はおしまいだものね」

   カフィン、奥でニコニコしている村長に、

カフィン「にだけなら言えることあるんだけど、いいかな」

   大人たちを見回す。
   村長がうなずいたので、みんな道をあける。
   カフィン、村長にボソボソと耳打ちする。
   村長、片方の眉を上げ、目だけでタルニコを見る。
   タルニコ小さくうなずく。
   村長ほほ笑み、深くうなずいて、

村長「カフィンが出て行ったら、もう次は来んじゃろ」
引率の村人「しかし、ハッキリした原因が」

   村長、ぷるぷるとかぶりを振り、

村長「つまりカフィンが、突然変異的に、覚醒したのよ。あのデカブツは、その気配に吸い寄せられて来た。以上」
カフィン「じゃあ、結論として、オレは出てくってことね。ざっくばらんに言えば」
引率の村人「いや、もっと言えば、出稼ぎに行ってほしいというのが本音だ」
カフィン「それは、どうしたらいいの」
引率の村人「役場で登録して、公的な冒険者として、懸賞金クラスのモンスターを倒して回るんだ。そして仕送りをしてほしい。――恥を忍んで言えばな」
カフィン「いいよ」

   大人たち、苦々しい笑み。
   奥で村長がタルニコをちょいちょいと手招きしている。
   タルニコが行くと、村長はタルニコの頭をなでて、

村長「ついて行っておやり。お前がいれば誰より心強い」
タルニコ「はい」

   扉の向こうのコーチャ、うつむき、そっと去る。

○大きな木の前

   白骨が埋まっている上に新しいお墓。
   大きめの石に『冒険者のおっさん』と彫ってある。
   旅支度をしたカフィンとタルニコが手を合わせている。

カフィン「これだけ深く埋めりゃ。誰かさんが掘り返さない限りね(と言ってタルニコを見る)」
タルニコ「(ポカリとカフィンをたたいて)デリカシー」
カフィン「(お墓に向き直り)剣と盾、死んだら返すからね(そう言ってお墓に水をかける)」

   カフィン、なにか思案するふうになり、タルニコを振り返ると、

カフィン「あのー……わりィ、ちょっと野暮用。すぐ帰って来るから」

   荷物を置き、駆け去る。
   そこへコーチャが現れる。
   じっとタルニコを見つめる。
   タルニコも見つめ返す。

タルニコ「カフィンなら、あなたを探しに行ったよ」
コーチャ「知ってる」
タルニコ「? 会わないの?」

   コーチャうなずく。

タルニコ「なんで?」
コーチャ「……最高の姿を、覚えておいてもらうために」

   タルニコ、少し考え、思い当たったふうになり、

タルニコ「てことは、最後はアレしてたの?」
コーチャ「(一瞬わからず、きょとんとして)アレって?」

   タルニコ、平然と黙っている。
   コーチャ、思い当たった様子で、真っ赤になり、

コーチャ「違うよ!」
タルニコ「隠さなくっていいよ」
コーチャ「(なお赤い顔で)違うって! ――ていうか、カフィンが言ったの!?」
タルニコ「ううん。知ってた。においでわかった」
コーチャ「(たちどころに納得し)ああ、なるほどね……。――いや、でもそうじゃなくって。わたしはただ、『探したけど見つからなかった、最後に会えなかった』っていうのが、最高の姿かなって思ったの。心残りにするのが」
タルニコ「(すなおに感心するふうで)なるほど……。やっぱりコーチャは、頭いいね」

   コーチャ、顔をしかめて、うつむく。
   うつむいたまま、

コーチャ「さ、わたしは最悪の顔、見せたんだから。今度はあなたの番」

   タルニコ、ちょっと意味をはかりかねるふう。

タルニコ「わかんない。簡潔に」
コーチャ「(髪をがしがしとかきむしって)ああ、カフィンの口癖! それでもいいけど、もっと――わかりやすく最悪の感じ、出してよ」
タルニコ「どんなのよ」
コーチャ「ざまァみろとかさ。わたしの『負け犬感』を逆なでしてよ」
タルニコ「やだよ」
コーチャ「ずるいよ。わたしばっかりワル役じゃない」
タルニコ「あたし、コーチャのことも好きなんだよ。カフィン以外では、一番優しかったよ」

   コーチャ、暗い笑みで胸中「、か……」と思う。

コーチャ「――それじゃ、元気でね。ケガとか病気とか、しないでね。無事を祈ってるから」
タルニコ「わ。今から取り返そうとしてる」

   二人、顔を見合わせて、ちょっと笑う。

○ホリウドの村の出口

   人々が見送りに来ている。
   コーチャの姿はない。
   タルニコ、きょろきょろしているカフィンに、

タルニコ「野暮用は済んだの?」
カフィン「(心ここにあらずで)――ああ、済んだよ」
タルニコ(心の声)「今けっこう、最悪の感じ出たよ。コーチャ……」

   大人たちの中から、引率の村人が声をかける。

引率の村人「ほら、さっさと行け。間が持たん」
カフィン「はーいはい。それじゃ、みんな元気でね。色々ムリだったらすぐ帰って来るから」
カフィンの父親「すぐ帰って来るな。バカタレ」

   カフィン、シッシッシと憎たらしい笑み。

カフィンの父親「(真顔になって)モンスターを吸い寄せなくする方法、どこかにはあるだろうさ」
カフィン「うん」

   カフィンの父親、タルニコの前で、膝に手をつき、目線の高さを合わせるも、うつむいたままで、

カフィンの父親「……色々と、すまなかった。君が一緒なら安心だ。よろしく頼む」

   タルニコ、こくりとうなずく。

○森の道

   カフィンとタルニコ、歩いて行く。
   その後ろを、ロクパンクの幽霊がついて行く。


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