Untold Quest

尼子猩庵

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第五話 頼もしい仲間

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○野原

   故郷の森の外、野原、青空の下を、元気よく歩いてゆくカフィンとタルニコ。
   カフィンは盾を背中に負い、剣は腰に帯びている。
   タルニコは(カフィンの分も?)大荷物を軽々持っている。
   二人ともそこらへんで拾ったような棒切れを手に手に、歌を口ずさんでいる。 
   と、いきなり二人同時に振り返る。
   ギクリ、と止まるロクパンクの幽霊。
   ジト目で見るカフィンとタルニコ。

カフィン「……あれ? なんか見たことあるな」
タルニコ「……あたしも」
カフィン「(あ、と手を打ち)白骨のおっさんじゃないか? 生きてた時の」
タルニコ「(手を打ち)ほんとだ。そういえば死ぬ前、こんな顔だったね」

   ロクパンクの幽霊、うおっほんと咳払いをして、

ロクパンク「えー、なんだ。決してコソコソしていたわけではないのだが、なにからどう話したものか整理がつかんでな」

   カフィンとタルニコ、こしょこしょと話し合い、ふたたびロクパンクの幽霊に向かうと、

カフィン「仲間になってくれるの? だったら大歓迎」

   タルニコもうんうんとうなずいている。

ロクパンク「それは、やぶさかではない」

   カフィンとタルニコ、無邪気にバンザーイと喜ぶ。

ロクパンク「まあ待たっしゃい。やぶさかではないが、まず整理せんけりゃならんことが色々あるんでな」

   カフィン、腕を組んで、

カフィン「簡潔に言ってちょ。生前のこと覚えてないとか? 怨みを残してて成仏できないとか?」

   あっ、と柄に手をやり、

カフィン「死んだら返すってば。あんがいすぐかもしんないじゃんか。チャンスくれよ」
ロクパンク「いやいや、そういうわけでもないんだが」

   ロクパンクの幽霊、タルニコを見やる。

ロクパンク(心の声)「この子、あれだけわしの骨を抱いて、あれだけ赤裸々に色々と打ち明けとったもんだが、気まずかァないのかしら?……」

   タルニコは友好的な笑み。

ロクパンク(心の声)「――まあ、当人がいいならいいか」

   ふたたび、うおっほんと咳ばらいをし、

ロクパンク「その剣と盾は、くれてやってもいい。『世の中に我が物とてはなかりけり身をさえ土に返すべければ』。なんの未練もござらぬわ」
カフィン「(安心して柄から手を放し)それじゃ、好きなだけ整理していいよ」
ロクパンク「わしは、仇を討ちたいんだがな」
タルニコ「そういえば、あなた殺されたんだっけね。仲間に手柄を横取りされて」
ロクパンク「左様。だからわしはわしで、そっちのほうにウェイトを置いても構わんか」
カフィン「そういうことなら、今からちゃっちゃと済ましに行ってもらっていいけど」
ロクパンク「それが、そんなに自由にも動かれんでな。要するに、色々と複雑なのよ……」

   カフィン、ぱちりと指を鳴らして、

カフィン「わかった。この剣と盾に憑いてんでしょ。だから、半径何キロ以上離れられないとか」
ロクパンク「……まあ、そういったことだな」
ロクパンク(心の声)「どっちかと言うと、こっちの子(タルニコ)に憑いとるんだが……」
ロクパンク「それに、仇の奴が今どこにいるのか、皆目わからん」
カフィン「仇の名前は?」
ロクパンク「それも模糊としとってな」
タルニコ「あなたの名前はなんていうの?」
ロクパンク「わしはロクパンク。騎士であった。今はなんなのかわからん」
カフィン「オレはカフィン、こっちはタルニコ。よろしく」
タルニコ「よろしくね、ロクパンク」
ロクパンク「よろしく」

○岩場

カフィン「ところでロクパンクって、戦力になるの?」
ロクパンク「それだがな、先ほどちょいちょい試してみたが、やはりは面白い――」
カフィン「――待った、そういえば死ぬ前にも言ってたね。辺境が云々って。もしかして《表》の人だったの?」
ロクパンク「左様。いわゆる浪人だ。亡き主君が死の間際、追い腹禁止令を命ぜられ、失意のまにまに漂流して来た。それゆえ《こっち》のこと、それほど詳しゅうないんでな、知識のほうではあまり頼りにならんかもしれんが、戦力というと――」

   ロクパンク、武道的な構え。
   正拳突きをすると、空気が鳴り、向こうの岩が粉砕する。
   カフィンとタルニコ、無邪気に飛び跳ねる。

ロクパンク「いわゆる《遠当て》というやつだな。武道の極意、触れずして離れた敵を《気》で倒すんだが、生前はどうしてもできなんだ。この体だとできるできる」

   そう言いながらさらに三つ四つと《遠当て》で以て岩を砕く。

ロクパンク「(ニヤリと笑い)戦力になると思うぞ」

○草原

   三人、ぽくぽくと歩いて行く。
   モンスターの巨大な糞から美麗な花が咲いている。

カフィン「――……忘れた!」
ロクパンク「(何度目じゃい、と考え、ため息して)ダイベイの町」
カフィン「あァそうそう。ダイベイの町。そこで冒険者の登録……だけどほんとにオレ冒険者なのかなァ。あのデカブツは、ロクパンクの怨念に吸い寄せられて来たわけで、まあ武装したオレをロックオンしたはしたわけだけども……」
タルニコ「大丈夫だって」
カフィン「でも恥っずいぞー? 登録お願いしますって言って、違いますよって言われたら……」

   タルニコ、ロクパンクを見上げて、

タルニコ「どう思う、ロクパンク?」
カフィン「どう、ちゃんとした大人」
ロクパンク「(腕を組み、もぐもぐと唇の皮を噛みながら)そうさなァ。なにしろ《こっち》と来た日には、《表》ほど因果律がシッカリしておらんからな」

   その時、行く手に中型のモンスター。
   タルニコが指さして、

タルニコ「ほらほら。おあつらえ向き」
カフィン「――あれって、なにしても襲わない系の奴だよな」

   タルニコ、うんうんうんとうなずく。

カフィン「てえことは、あれが襲って来たら、オレはガッツリ冒険者」

   タルニコ、目を閉じてほほ笑みながら、うんうんうん。

カフィン「オレだけを襲えば、カンペキだ。よし、じゃあ二人とも離れててくれ。の可能性は一気に潰しときたいからな」

   タルニコとロクパンク、「了解」と答えて物陰へ引っ込む。
   カフィン、空々しく口笛を吹きつつ、モンスターの視界に入る。
   モンスター、ぴくりと反応し、きょろきょろし、カフィンを見つけると、それまでの温厚な感じが打って変わって、攻撃的になる。
   カフィン、突進して来るモンスターに向き合い、剣を鞘から抜いて、

カフィン「冒険者カフィン、か。勇者マグカフにはなれないけれど――」

   スパーンと斬る。

○木々の点在する野原(夜)

   野宿の用意をする一行。
   奥には煙の立ち昇る焚火の跡と、モンスターを食べた痕跡、地面には可食部以外を埋めた痕跡。
   タルニコが木に登り、枝をたわめて縛って樹上に空洞を作る。
   あっという間に寝床がこしらえられる。
   それからタルニコ、恐ろしい形相になって、きばるふう。
   《虫よけのにおい》を放つ。
   虫がわらわら逃げ、ポトポト落ちる。
   傍にいるカフィン、むんむん匂い立つタルニコを、頬杖ついて見ている。
   ふと、くんくん嗅いで、

カフィン「懐かしい匂い」
タルニコ「(恐ろしい形相と独特の姿勢を保ったまま)そんなに嗅がないで」
カフィン「ガキの頃には気にしなかったけどさ、これって人体には影響ないの?」

   タルニコ、ふうと息をつき、恐ろしい形相を引っ込めて、

タルニコ「毒ガスじゃないよ。虫が逃げるのはね、天敵臭? 捕食者臭? みたいなもんだから……」

   タルニコ、おずおずとカフィンを見やる。
   胸中(あたし、虫とか、食ってる種族だから……)
   カフィン、目を閉じて、《虫よけのにおい》の残り香を嗅いでいる。

タルニコ「嗅ぐなってば(コツンと殴る)」

   ロクパンク、苦笑しつつも、仲睦まじい二人の様子に、どこかしんみりと嬉しげ。


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