Untold Quest

尼子猩庵

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第六話 ダイベイの町

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○樹上の寝床(朝)

   樹上の空洞の中で、カフィンとタルニコとロクパンク、すやすやと眠っている。
   ロクパンクの「んごっ!」といういびきで、三人(ロクパンクも)びっくりして目を覚ます。
   カフィンが大あくび&背伸びをしている後ろで、タルニコが枝を縛っていた箇所にナイフを差し入れる。

タルニコ「切るよー?」
カフィン「おー」
  
   タルニコ、ナイフを引き抜く。

○野原

   丸くたわめられていた木が、パァァァン! と開く。
   一瞬中身(幹にしがみついている三人)が見えて、ふつうの木に戻る。

○木の下

   カフィン、盾を背負い、剣を腰に帯びる。
   タルニコ、(カフィンの分も?)大荷物を背負おうとするのを、ロクパンクが半分手伝う。
   タルニコ、ロクパンクを見上げてニッコリする。

カフィン「じゃ、出発!」
タルニコ「ちゃんと覚えてる?」
カフィン「ダイベイの町。一晩寝たから覚えた」

○荒野

   行く手前方の右半分、空間にうねうねとした禍々しいオーラ。
   《侵された地》のテロップ。
   N『モンスターの死骸をちゃんと処理せず、疫病が流行り、人々は全滅し、怨念が漂う。』
   禍々しいオーラの中に、小さく村が見える。

カフィン「まただよ。直線距離だとそうでもないのに、迂回がキツイんだな。何事につけてもさ」
タルニコ「こんなに、埋めないものなんだね……」
カフィン「(《侵された地》を指さして)ロクパンクなら入れるんじゃないの?」
ロクパンク「入ってどうする」
カフィン「(悪者顔で、内緒話をするふうに)なんかお宝アイテムがあるかもしれないし」

   ロクパンク、顔を険しくして、叱りそうなところを、

タルニコ「あったまいい(拍手)」
カフィン「おっ、そうかい?(ふんぞり返って照れるポーズ)」
ロクパンク「(ため息して)それじゃ、ちょっと見に行って来るから」

○《侵された地》

   ゆがんだ家並み。
   ロクパンクが歩いて来る。
   ひゅうううと風が吹く。
   ロクパンク、引き締まった顔で堂々と進むが、たらりと冷や汗をかいている。
   ロクパンクの背後、物陰から、謎のシルエット。続々と。
   ロクパンク、立ち止まり、おそるおそる振り返る。

ロクパンク「!!!!(恐怖の顔のアップ)」

○荒野

   ロクパンク、膝に手をつき、ぜえぜえ息をつきながら、うつむいたままなにかを差し出す。
   カフィンとタルニコ、顔を見合わせ、

カフィン「なにそれ?」
ロクパンク「……戦利品。これ以上は、無理だった」
カフィン「ねえねえ、なにがいた? 戦った?」
ロクパンク「(青い顔を上げてうなずき)戦ったとも。ゾンビらとな。これが手ごわいの手ごわくないの――なにより見た目の恐ろしさよ。二度と御免こうむる」

   戦利品を調べていたタルニコ、

タルニコ「吹き矢かな?」
ロクパンク「(だいぶ落ち着いたふうで)お前さんにいいと思ってな」
タルニコ「あたしに?」
ロクパンク「(うなずいて)左様。お前さんの武器は一見、爪だがな。わしがコーチするならば、その圧倒的な肺活量にこそ着目するところだ」

   カフィン、タルニコの手に持っている吹き矢(かなり大きい)を、軽く触ってみつつ、

カフィン「なるほどね。タルニコならこの極太吹き矢も使えるか」

   行く手に小型のモンスター。
   こちらを威嚇している。
   カフィン、親指で示す。
   タルニコ、一度ロクパンクを見上げ、うなずいて、少々大き過ぎる吹き矢をくわえると、胸を大きく膨らませて息を吸い込む。
   ポシュッッ!!……次の瞬間、モンスターが粉々に弾け飛ぶ。

○ダイベイの町・外観

   フィレンツェ風の大きな町。

○町中・道

   行き交う人々。ホリウドの村の人々よりも、洗練された服装。

○役場の前

   感心して建物を見上げているタルニコ。
   カフィン、通行人たちを見回したあと、ロクパンクを見て、

カフィン「みんなロクパンクのこと見えてないね」
ロクパンク「(重々しくうなずき)まあレベルの目安だわな。わしが見える人が出て来たら、まず気をつけろということだ」
カフィン「わかりやすくていいな」

○役場の中

   少し混んでいる。
   窓口に行くと、番号札を渡され、「あちらでお待ちください」。
   三人並んで椅子に座る。
   タルニコに反応する人もとくにない。
   異種族はほかにもいる。
   やがて、優しそうなお兄さんに「どうぞ」と呼ばれる。

役人「お待たせいたしました。どういったご用件でしょうか」
カフィン「冒険者の登録をお願いしたくて」
役人「少々お待ちください――ェえ、まずはあなたの現状と申しますか、どこに該当されるかを」

   役人が書類を出す。
   カフィン、覗き込んで読む。
   役人、あれこれと指さしながら、なにやら説明。
   タルニコも首を伸ばして読む。
   カフィンとタルニコの目がぐるぐるになり、頭上に「?」マークが浮かんでいる。
   ようやくカフィンが手を挙げて、「これですこれです」と、ある箇所を指さす。
   役人、指さされた箇所を見て、うなずくと、

役人「それでは、こちらにサインと血判をお願いします」

   カフィン、サインして、血判を押す。
   役人、なにやらカードを持って来る。

役人「ではこちら、なくさないようにしてくださいね。もう『最高ランク』なので、どこでも行けますよ」
カフィン「(無感動に)はあ。――……なくしたらどうなりますか」
役人「再発行するために、またお越しいただくことになります」

   カフィン、タルニコとロクパンクを見、一瞬、手持ち無沙汰な感じ。
   ふたたび役人に向き直り、

カフィン「あのう、なにか、講習とかは――」
役人「(肩をすくめて)最高ランクですからねェ」
カフィン「はあ……」

   振り返れば、ロクパンクも肩をすくめている。

ロクパンク(心の声)「これだから《こっち》は……」
役人「まあ、助言と申しますか、冒険者さまたちにおかれましては、たいがいパーティーを組まれるのが、主流ですね。そうして、大きな戦闘になっても被害の少なそうな所に、なるたけいらっしゃっていただければ。ダイベイのように《結界》が発達していない町や村には長居しないこと。そして先々で出会ったモンスターは、倒しっぱなしにしないこと。死骸をしっかり処理していただければ、非常に助かりますね」
カフィン「――死骸の処理って、みんなシッカリやってますか?」

   役人、苦笑いする。

カフィン「まあ、おかげで食ってける人もいるんだけどさ」
役人「(先ほどのサインを見、ホリウドという字を認めて)まったく、申し開きのしようもないところです」
カフィン「(意に介さず)ところで、ほぼ文無しなんです。こないだ倒したデカブツ――わかりますかね」
役人「(なんぞ資料を見て)あァ、はいはい。――ははァ。あれはあなたでしたか」
カフィン「ええ、それで、その分の懸賞金をですね、全部とは言いませんので、今からでもこう、さかのぼって、せめて何パーセントかだけでも、もらえませんか」
役人「(ひたすら申しわけなさそうに)むずかしいですね。残念ですが」
カフィン「でも、この剣で倒したんです。倒した剣がここにあって、倒したのはこのボクなんですけど……」

   役人、「うーん」とうなり、目だけで周りをきょろきょろすると、自分の財布から幾らか紙幣を出して、封筒につつむ。

役人「(封筒をカフィンに渡し、こしょこしょ声で)これで当面、凌ぎなさい。宿をとるなら、《カワセミ亭》が良心的でオススメだよ」

   カフィンとタルニコ、深々と頭を下げる。

○《カワセミ亭》の前

   三人、看板を見上げて立ち止まる。

カフィン「――いい人、いたね」

   タルニコ、ロクパンク、しみじみとうなずく。
   三人、《カワセミ亭》へ入って行く。  


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