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第七話 仲間探し
しおりを挟む○《カワセミ亭》の中・寝室(朝)
『風上新聞』を読んでいるカフィン。
横から覗き込んでいるタルニコ。
ロクパンクは鏡を見ながら髭を剃っている。
ロクパンク「――ええい、気のものだと思うんだがなァ」
タルニコ「(新聞から顔を上げて)なにが?」
ロクパンク「髭だ、髭。自分はもう死んでるんだということを、心身くまなく納得すれば、もはや髭なんぞ伸びんと思うわけだが――そうなったらなったで、成仏してしまいそうだものな」
カフィン「(新聞を読み続けながら)なにも言わずに成仏だけはダメだよ。したのかどうかわかんないから」
ロクパンク「誰がしてなるものか。仇討ちを成し遂げるまでは――……ところでマグカフとペルトボルはどうだね?」
カフィン「……(読みふける)」
タルニコ「(カフィンが聞こえていないので、代わりに)えっとね、オルコルっていう、魔法使いのお姉さんが仲間入りしたでしょ」
ロクパンク「ああ、写真も載っとったな。べっぴんで羨ましい限り」
新聞記事。勇者一行の写真。
マグカフ、不死鳥の兜をかぶり、悪党づら。
ペルトボル、大砲をかつぎ、荒くれ者丸出し。
オルコル、ドクロのついた杖を持った、冷酷そうな女。
タルニコ「(若干フキゲン気味に)そのオルコルさんが、行き倒れ寸前の魔女から、最強の魔法を授かったんだって」
ロクパンク「(髭を剃りながら)ほほお――?」
タルニコ(心の声)「生返事!……」
タルニコ「あァあ、うちの行き倒れも、最強の魔法とか授けてくれてたらよかったのに、羨ましい限り」
ロクパンク「(なおも剃りながら)懸賞金クラスを一撃で倒す剣で、十分だろうに」
タルニコ「あ、そうか。そうだね」
ロクパンク「もはや未練はないが、それは相当の剣なんだぞ。それこそ勇者一行が持っていて然るべきくらいの」
タルニコ「ごめんってば」
○レストラン
カフィンとタルニコの前に、料理が運ばれて来る。
さっさと食べ始めるカフィンの隣で、タルニコがロクパンクを手招きする。
ロクパンクはタルニコの前に、恭しくひざまずく。
タルニコが目を閉じて手を合わせる。
と、ロクパンク、膨れた腹をなでて、満腹した様子。
ロクパンクに供え終わり、ようやく自分も食べ始めたタルニコを、カフィン、横目で見つつパクつきながら、
カフィン「じっさい、この上パーティーとか組む必要あんのかな。オレとタルニコとロクパンクで、もう敵なしなんだけど」
ロクパンク「(爪楊枝を使いつつ)微妙な問題だな。タルニコはまだ公的な冒険者ではない。そしてわしも、どういう扱いになるのか不明だ。まあ、せめてあと一人か二人、形だけでも加えておけば、変に目立たなくっていいんじゃないか」
カフィン「無難が一番?」
ロクパンク「無難が一番」
○道
カフィンとタルニコ、通行人をじっと見ている。
《有能な人材、見定め中》のテロップ。
ふと、よさそうなのが歩いて来るから、タルニコがロクパンクを見上げ、ターゲットを指さす。
けれども、ロクパンクはかぶりを振る。
タルニコは諦めるけれど、カフィンが一応、
カフィン「えー、お兄さん。ちょっとお時間いいですか」
鬱陶しそうに振り払う仕草をされるばかり。
その後もうまくいかない。
無視される、嘲笑を買う、イカツイのに威嚇されてカフィンとタルニコ委縮する、等々。
ロクパンク「少なくとも、誰もわしのことは見えておらなんだ。小物ばっかりよ」
そこへ、一人の冒険者らしき若者が、向こうから声をかけて来る。
スパリグ「おい、お前ら」
カフィン「(ぴっと振り向いて)うん? スカウトですか?」
スパリグ「いいや。見てて恥ずかしいから、よしなって、ご忠告だ」
カフィン「あー……どうぞお構いなく」
相手にしていない感じ。
スパリグもまた、激高するわけではなく、ただ「やれやれ」というふうで、
スパリグ「お前、生まれは?」
カフィン「ホリウドの村」
スパリグ「どこの?」
カフィン・タルニコ「?」
スパリグ「(大仰にため息をつき)ホリウドの村なんて、あちこちにあるよ。それだけで伝わると思うな、馬鹿にされるから。ご忠告まで」
カフィン「(腕を組み、ちょっと沈黙したあと)……それで、あんたはどこの出身なんだい」
スパリグ「オレサマか? ヤキウドの村さ」
カフィン「どこの?」
スパリグ、キラリと目を光らせる。
カフィン、鞘を少し傾ける。
タルニコとロクパンクがとりなそうとしかけるが、スパリグのほうが早々に殺気を静め、
スパリグ「つまらないことで揉めんな。田舎の村と違って、しょっぴかれたら面倒なんだぞ。なにより金がかかる」
カフィン「逃げんのかい?」
スパリグ「ああ、それでいいよ。なんとでも思いな。無駄にぶち込まれて、無駄に金払うよりマシだ」
カフィン、ちょっとスパリグを見つめて、
カフィン「ご忠告ありがとよ」
カフィン、タルニコ、ロクパンク、去る。
スパリグ、とりわけロクパンクの後ろ姿を見つめ、ちょっとそのまま見送るが、やがてきびすを返す。
○《カワセミ亭》・寝室(朝)
『風上新聞』を読んでいるカフィン。
洗濯物をたたんでいるタルニコ。
髭を剃っているロクパンク。
○レストラン
カフィンとタルニコ二人だけで、食事している。
ロクパンクがやって来て、空いている席に座る。
カフィン「どこ行ってたの」
ロクパンク「朗報だ」
タルニコ「おなかすいてない? 食べかけでよければ、お供えしようか」
ロクパンク「(タルニコにニコリとほほ笑んで)いや、今は結構。昨日のがまだ消化しきっとらんでな」
カフィン「朗報って?」
ロクパンク「(うなずいて)手っ取り早くいこうと思ってな。パブだの賭場だの、うろついて来た」
カフィン「?」
○役場の前(回想)
ロクパンク「まあレベルの目安だわな。わしが見える人が出て来たら、まず気をつけろということだ」
○レストラン(現在)
カフィン「――ああ、なるほどね。それで、誰かいた?」
ロクパンク「一人、おったのよ。なかなか優秀なのが」
○路地
カフィンたち一行と対峙する若い冒険者。
端正な顔立ち、お手本のような装備。
サトバク「――本当に、魔王軍のスパイではないんだな?」
カフィン「違うってば。いい大モグラと、いい幽霊なんだよ」
タルニコとロクパンク、胸元に手を組み、コクコクうなずく。
うるんだ瞳で訴えかける。
サトバク、まだ疑わしげな顔。
○パブ(夜)
酔っぱらっているサトバク。
サトバク「もう、このご時世、いわゆる《こっち》にゃ、叩き上げの、成り上がりの、野蛮人しかいないんだよ。冒険者はね。――てやんでえ。冒険者っつったら、もっと崇高なものだったはずだろう?」
カフィンたち、とりあえずうなずく。
サトバク、ビールをぐいっと飲む。
サトバク「だけどね、結局、このご時世なんだよ……。そうすっと、僕みたいな正統の騎士は、肩身が狭いんだ。おかしいだろ。ェえ? うちは由緒正しい《表》のルーツなんだよ。ェえ? そもそも《こっち》を開拓した人々の末裔、やんごとなき血筋なんだぞ、僕ァ」
カフィン「まったく、おっしゃる通り」
サトバク「そうさ。ヒック――バカにしやがってアホンダラァ。《こっち》の冒険者どもと来たらよォ、誰も彼も、確かな動機もなければ、目標もない。いわんや、使命感・正義感においてをや。《表》をお払い箱になった、無秩序なモンスターどもを相手に、惰性でよ。何人かに聞いたよ。『どうして冒険者になったんだ』ってね。答えは似たり寄ったりさ。『なれたから』。『気づいたらなってた』。――それで、誰も僕とは組まないってんだからな……こっちから願い下げだってんだよ、アホンダラァ…………」
カフィン「(ロクパンクを見て)ほんとに優秀?」
ロクパンク「才能で言えばダントツ」
サトバク、酔いつぶれる。
カフィン「……」
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