Untold Quest

尼子猩庵

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第十六話 さすらいの女戦士

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○荒野

   歩いてゆく一行。
   行く手に大型モンスターが立ちはだかる。
   ふたたび姿の濃くなったロクパンクが《遠当て》における正拳突きの構え。
   体毛のずいぶん伸びたタルニコが極太吹き矢をくわえる。
   ところが、大型モンスター、こちらを見下ろしたまま、呆気にとられたような顔。
   そのまま後ろ向きに倒れる。
   倒れたモンスターの腹の上に飛び乗る影。
   鎧兜をセクシーに着こなした女戦士に後光がさす。

パチミト「あんたたち、危なかったわね!(と満面の笑みで)」

   そこへ、大型モンスターの死骸を食らいに中型モンスターたちが群がって来る。

パチミト「(一瞬ぎょっとして)さすがは辺境、容赦ないわ」

   それから細身の剣をシャランと抜くと、迫り来るモンスターたちを斬り捨ててゆく。
   慌てて駆け寄るカフィンたち一行。

タルニコ「ちょっと待って、待って!」
カフィン「そいつらはいい、倒さなくていい!」

   女戦士、怪訝そうに振り返る。
   中型モンスターすでに全滅。

パチミト「(ハアハア言いながらやって来たカフィンたちに、ニカッと笑いかけ)もう大丈夫よ」

   そこへ、大型・中型モンスターの死骸を食らいに小型モンスターたちが群がって来る。

パチミト「(やれやれというふうに)まだまだ終わらないってわけね!」

   また剣を構える女戦士の腕を、カフィン渋い顔で、そっとつかみ、すうっと下ろす。
   眉をひそめる女戦士、はてなを浮かべつつ、されるに任せる。
   (引き)タルニコが女戦士になにか話す。
   女戦士、納得いかない様子。
   カフィン、手招き。一同、その場を離れる。
   遠くから見ていると、モンスターたちはこちらには目もくれず、死骸をむさぼり食い始める。

パチミト「あ、ほんとだ……」
カフィン「(肩をすくめて)でもあいつらじゃ食いきれないから、だいぶ掘らなきゃダメだな」
パチミト「掘るって?」

   タルニコ、かくかくしかじか。

パチミト「(ばつが悪そうに頭を掻き)なんか、悪いことしたね」
カフィン「いいよいいよ。助けてくれるつもりだったわけだし」

   カフィンが大型モンスターの死骸を切り分けているあいだ、タルニコがドバーッと掘る。
   サトバクがカフィンと交代して切り分ける。
   休憩するタルニコ。
   男たちが肉片を運ぶ。
   タルニコふたたびドバーッと掘る。
   女戦士、頭を掻き掻き見ている。

○川のほとり

   焚火に串刺し肉を並べるタルニコとサトバク。
   向こうのほうでは残骸にまだ小型モンスターたちが群がり、むしゃむしゃ食っている。
   体育座りしていた女戦士、立ち上がり、えへんと咳払いして、

パチミト「私はパチミト。騎士。広義では、戦士。私の地方では剣士。あるいはウォリアー。あるいは武士。《表》から武者修行に来ました。よろしく!」
カフィン「(くるっと振り向いて)よろしく」

   タルニコ、にっこり笑って握手し、作業に戻る。
   サトバク・ロクパンクも「よろしく」「よろしく」。
   パチミト、物足りなさそうに、たたずむ。

パチミト「――なんか、手伝おうか?」
カフィン「いや、いいよ。休んでて」

   やがて、手を合わせて「いただきます」を言い、食べ始めた一同。
   (例のごとく、ロクパンクはタルニコに供えてもらって)
   パチミト、一人立ったまま見ている。
   タルニコがパチミトを見上げ、自分の隣の地面をぽんぽん。
   パチミト、歩いて行って、しゃがむ。

カフィン「(串を一本差し出して)ほれ」
パチミト「……だけど、モンスターの肉だろう? 頭が狂うんだぞ。それか、夜中に寄生虫が腹を突き破って出て来るんだ」
カフィン「厳選した可食部だから」
パチミト「マズ過ぎて死んだって話も」
タルニコ「食わず嫌い食わず嫌い」

   パチミト、受け取って、一同を見回す。
   みんな平然と食べている。

パチミト「ええい、(おそるおそるかぶりつき、しばらく上方を見ながらもぐもぐしたのち)――……うまい!」
カフィン「でしょ?」
パチミト「(がぶがぶ食べながら)うん! 初めての味!」
ロクパンク「わしも最初は驚いたわ」
サトバク「高たんぱくで、低カロリーで、ビタミン・ミネラル豊富で、整腸作用まである」
タルニコ「精つくよー」
カフィン「うんこはくっさいけどね。信じられないぐらい」

   パチミト、のけぞって、ハハハハと笑う。

○同じ場所

   焚火の跡。
   コーヒーを淹れるタルニコ。
   爪楊枝を使うサトバク。
   パイプをくゆらすカフィンとロクパンク。

カフィン「武者修行ねえ」
パチミト「(あぐらをかいて大きなガムをくちゃくちゃ噛み、時々ぶじゅっと糸を引く唾を吐きつつ)だって反則だよ《こっち》って。運さえよけりゃ、無条件にラスボス級のモンスターと出会えるんだもん」
サトバク「しかしおかげで僕たちは、段階を踏んで強くなるってことができないんだけどね。運不運に支配されるばかりさ」
パチミト「あー、確かに最初っから《こっち》だとね。そりゃ、ある程度になる前にたいがいやられるか」
サトバク「本当ならどれほどの勇者が生まれていたはずだったか。逆もまた然り」
タルニコ「勇者といえば――」
カフィン「(がぜん前のめりになって)パチミト、もしかして《表》の勇者一行と知り合いだったりして?」
パチミト「どの勇者一行?」

   カフィンとタルニコ、見つめ合って、

カフィン「どのって……」
タルニコ「マグカフとペルトボルとオルコルの」

   パチミト、前にかがんでぶじゅっと唾を吐く。
   もう池みたいになっている。

パチミト「偏ってんね。確かに、マグカフのパーティーは強いよ。だけどもっとマシなのが頑張ってるんだぜ? マシってのは、人間的にね」
ロクパンク「お前さんは、どこかのパーティーに所属してはおらんのか?」
パチミト「(ロクパンクをじっと見て)――なんか、見たことあるね。昔それなりだったでしょ」
ロクパンク「(肩をすくめ)よき巡り合わせに、巡り合われなんだというところだろうさ」
パチミト「私もそうだよ」
ロクパンク「お前さんはまだ若かろうに」
パチミト「これでも遅いの。そういう世界なの。運よく《こっち》でバチクソに鍛えれたら戻る。でも今の時代に間に合わなかったら、次の世代に裏方でバリバリ活躍する無敵の年増になるよ」
カフィン「(しみじみとして)なるほどね。結局、真面目なんだな。――真面目って、いいな……」
パチミト「それで、しばらく私も、同行していいのかな?」

   カフィンたち四人、見つめ合う。
   全員コクコクうなずいて、指でまるを作る。

パチミト「――ユッルいなァ……」

○道

   茂みから何食わぬ顔で出て来たパチミトに、ちょうど通りかかったカフィン、ふと鼻をくんくんして、

カフィン「な?」
パチミト「(赤面して)うっさい!」

   そう言って、マントで以てばたばたとあたり一帯を扇ぐ。


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