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第十七話 あるいは望み得たこと
しおりを挟む○木々の点在する草原(朝)
寝床の木の下にいる一行。
たわめられていた枝がパァァァン! と戻り、タルニコが降りて来る。
○サトバクの実家
大広間でごちそうになりながら、サトバクの父親と意気投合するパチミト。
○情報屋の住処
情報屋の少年とチェスを指すロクパンク。
○街角
小さな運河のほとりのベンチ。
伝書鳩から手紙を受け取り、頭を寄せ合って読むカフィンとタルニコ。
写真。ホリウドの村の人々。
服装などは洗練されて、以前のような悪趣味ではなくなっている。
タルニコ「コーチャだ! ようやく見れた」
コーチャ、にこりと笑っている。
清楚な感じで、美しくなっている。
カフィン「ほんとに、死んだのかと思ってたよマジで」
タルニコ「まだ独り者っぽいよね?」
カフィン「どうして」
タルニコ「さすがに、パートナーがいたら、この一大イベント(写真撮影)の時には隣に並ぶでしょ」
カフィン「そうかな」
タルニコ「(カフィンを横目で見て)安心した?」
カフィン「生きてたことにな」
タルニコ、なにか言いかけるのを、さえぎって、
カフィン「それ以上言ったら怒るから」
タルニコ、ふふ、と笑ったあと、静かな面持ちで写真を見つめる。
○荒野
歩いて行く一行。
タルニコの体毛は完全に戻っている。
○森の中
ふと前方に、さっと隠れる人影。
顔を見合わす一行。
ロクパンク「世を厭うて、ひっそり暮らしている人かもしれんな」
タルニコ「じゃあ、追いかけ回したりしたら可哀相だね」
一同、目と目を見交わす。
次の瞬間、「待てぇぇい!」全員走り出す。
がさがさと茂みをかき分けて逃げる人影。
息を切らしながら追いかけ続けるカフィンたち。
リグロープ「(急に立ち止まり、両手を上げて)わかりました!」
全員急ブレーキ。
目を血走らせ、息を整えるカフィンたち。
リグロープ「追いはぎなら、なにもありません。人さらいなら、どうぞ、さらうがよろしい。人殺しなら、さあ、一思いにやってください」
よく見ると、ずいぶん若く、そして非常に、きれいな顔立ちをした青年。
タルニコとパチミト、ささっと身だしなみを整える。
そんな女性たちをジト目で見やるカフィンとロクパンクとサトバク。
パチミト「私たちは、そんなものではありません。なにか、困ってることがおありでしたら、助けて差し上げられないかしらと」
リグロープ「それで、あんなに追い回したのですか」
ロクパンクが「申しわけない」と言うと、みんなで頭を下げる。
リグロープ「まあ、悪い人たちでないなら、よかった」
カフィン「それで――もう、帰ってほしい感じ? オレたちこう見えて、だいぶ疲れててね。休める所、教えてくれたら嬉しいんだけど」
リグロープ「(一同を見渡して)なんなら、ボクの家に来るかい」
タルニコとパチミト「(うきうきしたふうで)いいの!?」
リグロープ「いいよ。ボクはリグロープ。(それから、なんだかタルニコを見て)君たちなら歓迎だ」
タルニコ「……?」
○緑の洞窟
(引き)懸賞金クラスのモンスターの古い糞が、あたり一帯に散在し、そこに根を張って育った樹木がこんもりと密度の高い森林を呈している。
N『デカブツの糞で育った樹木の放散する匂いにより、モンスターが近寄らない』
頭上から無数に垂れ下がったつる草や、岩や幹に生えたコケでいちめん緑色。
ちょうちょ。トカゲ。小動物。
洞窟の中から、人間と同じくらいの大きさのモンスターがひょこっと出て来る。
カフィンたち、すでに訳知り顔で、「やあ」と手を上げたり、「こんにちは」と言ったり。
モンスター、びっくりして引っ込み、また覗く。
リグロープ「(モンスターに向かって)お客さんたち。いい人たち。ちょっとだけ休ませてあげようね」
モンスター、おそるおそる出て来て、鼻を上向け、においを嗅ぐ。
リグロープのアイコンタクトで、カフィンたちが、ぱちぱちと手をたたくと、モンスター、ケタケタケタと笑う。
安心して出て来て、リグロープの傍で、ごろりと寝転がる。
口を開ける。歯があるべき所に、ことごとく穴があいている。
○道中(回想)
緑色が濃くなってゆく森の中を歩きつつ、
リグロープ「――けっして、差別的なアレはないんだ。ただ、やっぱり少しだけ似てるところはあるかなって……君ならわかってもらえるかなって……」
タルニコ「いいのいいの。ほんとにあたしだって、半分モンスターみたいなもんだから。ね(とカフィンを見る)」
カフィン「一緒にされちゃ、困るけどな。(タルニコにぶたれる)それに、モンスターとの共生とか、そういう話じゃ、もっと触れられたくないこともあったけど。(またぶたれる)――だけどその子、自分で全部引っこ抜いたんだな。凄いな」
リグロープ「うん。凄い。だけど、傷口から黴菌が回って、バカになってしまうんだから、ほんと、バカな奴……」
○緑の洞窟(現在)
リグロープに、モンスター、じゃれつく。
うっとりとした目で見つめつつ。
サトバク「――それで、これからもずっと一緒に暮らすのかい」
リグロープ「ああ。そのつもりだよ」
サトバク「この結界が人にバレて、開発される日は必ず来る」
リグロープ「(静かにうなずいて)その時までに、死んでいられたら、それがボクたちの幸せさ」
カフィンたち、泉の水を汲んで料理の支度やら、なにやら。
サトバクが一人、リグロープとモンスターの、寄り添って座っている姿を見つめている。
○緑の洞窟(夜)
緑のベッド(ただの地面)の上で雑魚寝するカフィンたち。
○緑の洞窟(朝)
新聞を読んだり、パイプをくゆらしたり、正座して衣服をたたんだりしている一行。
サトバクがまた、独り離れて、人間とモンスターの仲睦まじい平和な暮らしを見つめている。
サトバクの隣にタルニコが立つ。
サトバク、はっとして見やる。
タルニコ「(サトバクの腕に自分の腕を軽く絡めて)…………ごめんね」
サトバク「(リグロープたちに視線を戻し)もうとっくに、諦めたよ」
しばし二人で、リグロープたちを見つめる。
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