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第十八話 最強の冒険者
しおりを挟む○荒野
見果てない荒野をゆく一行。
中型・大型モンスターの糞から生えた樹木や毒々しい花が、遠く近く。
通り雨が来て、なにかの巨大な骨の下で雨宿り。
晴れると、ふたたび歩き出す。
ふと、はるか彼方に、懸賞金クラスのモンスターの姿。
こちらには気づかずに、歩き去ってしまいそう。
カフィンたち、ちょっと見るけれど、そのまま行き過ぎようとする。
パチミト「(おずおずと手を挙げ)……あのう、私あのデカブツ倒して、強くなって来たいんだけど、いいかな?」
一同、無感動にパチミトを見つめる。
カフィン「そりゃいいけど。でも一人じゃ、万が一が危ないしな」
そう言って、見回す。
サトバクが挙手して、
サトバク「パチミトの志は立派だ」
カフィン「うむ、サトバク君が一緒なら安心だ。気を付けて行って来たまえ」
パチミトとサトバク、敬礼して、デカブツ目がけて駆け去る。
カフィンとタルニコとロクパンク、少し見送ったあと、またぶらぶらと歩き出す。
○草原
見果てない草原をゆく一行。
ふと彼方の山々の、ある山腹に、キラリと光るもの。
カフィンたち、「おっ、なんかあるぞ」「伝説の武具かもね」
などと言い合うものの、そのまま行き過ぎようとする。
パチミト「あのう……私、取りに行きたいんだけど」
カフィン、サトバクを見る。
サトバク、うなずく。
カフィン「無事を祈る!」
パチミトとサトバク「はっ!」
○木々の点在する草原(夜)
丸くたわめられた木の下、焚火の傍。
パチミトとサトバク、持ち帰ったアイテムをみんなに見せている。
《絶対防御のティアラ》のテロップ。
パチミト「これ、黄金時代のものだよ。今の《表》の魔王なんか、一週間攻撃されたって平気なんじゃないかな」
カフィン「よかったじゃん」
パチミト「ほんとだよ。この武者修行ヤバいよ」
○木々の点在する草原(朝)
まだパァァァン! の前の、寝床の木の下。
新聞屋の伝書鳩(大型)にコインを支払うカフィン。
頭を寄せ合って『風上新聞』を読むカフィンとタルニコ。
カフィン「……結局、あの魔術師が一番強かったんじゃないか? あそこ越えてからは、ずっと楽勝だもんな」
タルニコ「マグカフたち、いよいよ魔王に挑むんだね」
カフィン「――オレたちの時代の伝説が、終わり間近だな……」
○川辺
焚火。食後のだらだら。
パチミト、絶対防御のティアラを取り出し、ほれぼれと見つめている。
カフィン「――パチミト、それ持って《表》に帰ったら、今からでも勇者一行のパーティーに参加できるんじゃないの? ぶっちゃけ、もうお前が一番強いだろ」
パチミト「あんたたちこそ、もう最強のモンスター、倒せるんじゃないの」
カフィン「(寝転んで)さあなァ。どこにいるのかわかんないし。それに、最強のモンスターには懸賞金かかってないんだ」
パチミト「そうなの?」
最強の冒険者「そうとも」
いきなり現れたその男に、一同、一瞬で構えるも、男の静かな笑顔を見て、全員武器をおさめ、両手を上げる。
カフィン「参りました」
最強の冒険者「うむ。十分、調子に乗っていいレベルだ」
ロクパンク「貴殿は、最強の冒険者ですな」
最強の冒険者「いかにも」
パチミト「若っかいんだァ……」
最強の冒険者、端正な顔立ち、すらりとした肢体。
若々しい顔に、髪の毛だけは真っ白、目に笑いを含み、どこか気だるそうな姿勢。
最強の冒険者「単刀直入に言うけど、忠告に来た。最強のモンスターには手を出すな」
一同、うなずく。
最強の冒険者「(満足げに)物分かりがよくって――というか、そもそも無関心かな? どちらにせよ大いによろしい。だが、人の心はどう変わるやら知れない。だから俺はここに釘を刺しておく。いいな? いつも見ているからね。そして、いつでもこうして、始末しに来れるからね」
カフィン「肝に銘じました」
タルニコ「――だけど、あなたはまるで、最強のモンスターを守っていらっしゃるかのようなんですね」
最強の冒険者「(タルニコを見やり、ほほ笑んで)まさにそうだ。それがなによりなのさ。奴さんの長い長い眠り。こいつを邪魔立てする勇者の類を、まだ新芽のうちから潰しておくことが現状、一番の平和というわけだ」
サトバク「(恭しくお辞儀して)おおそれながら、僕はサトバクと申します。ずっとあなたに憧れてまいりました。叶いますれば、あなたのご尊名をお伺い申し上げたく存じます」
最強の冒険者「悪いけど、『最強の冒険者』で。そのほうが、世界に一人しかいないしね。――……ほんと言うと、本名はダサくてキライなんだ」
○川辺(夜)
キャンプファイアを囲み、みんなで酒盛り。
最強の冒険者、非常に楽しそうに手をたたくやら、口に手を当てて、はやし立てるやら。
最強の冒険者「――愉快だなァ。こんなのは久しぶりだ」
タルニコ「(隣に腰を下ろして)お仲間さまは?」
サトバク「さぞや圧倒的な冒険の日々だったんでしょうね?」
最強の冒険者「(サトバクを見て)君の一族のことは知ってるよ。最初の開拓者たちの末裔であらせられるんだから、あるいは俺のほうが頭が高いね。なにとぞご勘弁、ご海容のほど」
パチミト「もしかして、物凄いお爺ちゃんなんじゃ……?」
最強の冒険者「(ぷっと吹き出して)若い若い。ピークを過ぎたってだけさ。――お仲間さまはね、少数精鋭だったからね。もう一人、魔法使いがいただけだよ」
ロクパンク「その御仁は、今は?(と聞きつつ、求められたパイプを差し出す)」
最強の冒険者「(ロクパンクからパイプを受け取り、焚火を見ながら煙を吐いて)一切を滅ぼし得る魔法を完成させたんだが、呆気なく病気で死んじゃった」
一同、黙り込んでいると、最強の冒険者、ごそごそとポケットをまさぐり、
最強の冒険者「俺との子どもだけ残してね。これが写真。子どものね」
と言って一枚の写真を取り出す。
タルニコとパチミトが男連中を押しのけて見入り、「わあ、かわいい」とはしゃぐ。
最強の冒険者、写真をそのまま差し出す。
タルニコとパチミト受け取って、二人頭を寄せ合って眺める。
カフィン「お子さん、今はお留守番してるの?」
最強の冒険者「今は、俺の剣の師匠が、ベビーシッターしてくれてる。ぶつくさ文句は言ってるが、甘やかし過ぎるんで困るよ」
サトバク「もう冒険はしないのですか」
最強の冒険者「ああ。仲間になりたいって申し出て来るのは、たまにいるけどね。もういらないかな。弟子も当分、取る気はないよ」
○川辺(朝)
最強の冒険者と握手を交わして別れ、見果てない草原をゆく一行。
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