Untold Quest

尼子猩庵

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第十九話 ここで会ったが百年目

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○ガリテンの町・外観

○情報屋の住処

   薄暗い半地下の部屋。
   物に埋もれた机越しに情報屋の少年、丸眼鏡を光らせ、

情報屋の少年「ああ、待ってたんだ。ロクパンクさんの仇、見つけたよ」
ロクパンク「なんと!」

   情報屋の少年、なにやら手を出し、手のひらを上向けて、指をにぎにぎ。
   ロクパンク、にがにがしい渋面で、懐から高価そうなライターを手渡す。
   (賭けをしていた様子)

情報屋の少年「(嬉しそうに受け取り、引き出しにしまって)パニアングの町にいる。そんで、そこの占い師のおばばに匿われてるから、まずおばばのとこに直行して、いきなり退路を断つのがおすすめ」
ロクパンク「かたじけない」
カフィン「そう言えば、仇の名前って思い出したの?」
ロクパンク「(こくりとうなずき)ジョーキイだ」

○荒野

   懸賞金クラスのモンスターが襲い来る。
   気合いの入っているロクパンクが《遠当て》だけでへろへろにし、カフィンがスパァァァン。

○砂漠

   懸賞金クラスのモンスターが襲い来て、ロクパンクの《遠当て》だけでへろへろ、サトバクが切り刻む。

○山岳地帯

   懸賞金クラスのモンスターが襲って来、

ロクパンク「ええい、こんな時に限って次から次から!」

   《遠当て》で見るも無残にボコボコ。
   パチミトが真っ二つに斬り捨てる。

○パニアングの町・外観

   サン・ジミニャーノ風の大きな町。

○占い師の館

   《占い師の館》のテロップ。
   雑然と建物の並ぶ薄暗い路地。
   カフィンとタルニコだけ、中に入る。
   フードで顔の見えない老婆(?)が奥で分厚い図鑑のようなものを読んでいる。
   爪の長い節くれだった指を文字に這わせながら。

カフィン「あのう、これ、ガリテンの町の情報屋さんからあずかって来た手土産でござんす、ハイ」

   そう言って袋を近くのテーブルに置く。
   占い師、こちらを振り向く。
   (相変わらず顔は見えない)
   立ち上がり、あんがい早い動きでテーブルに歩み寄ると、袋の中身を確かめる。
   やがて小刻みに体を揺すったと思うと、……ンカッ……ンカッ……ンカッ。

カフィン「(タルニコに小声で)笑ってんだろうか」
タルニコ「(カフィンの足をこつんと蹴る)」
占い師「つまり、もうお見通しだと?」
カフィン「ええ、ついては、隠し立てご無用に願いまして、ジョーキイという男の居場所を教えていただきたいんでござんす、ハイ」
占い師「そうか……。けっこう気が合うていたんだがな。可哀相な奴よ」

   占い師、ささっと地図を描き、ぴらっと差し出す。
   カフィンが受け取ろうとすると、「あ、あ、あ、」ぴらっとよけて、

占い師「この報酬は、あの手土産とは別ではないかえ?」
カフィン「ええと――……そう思います?」
占い師「(ちょっと沈黙したあと、地図を渡して)冗談じゃ」

○ぼろいアパート

   階段を上ってゆく一行。
   ある扉の前で、ロクパンク、ふうと息を吐く。
   キッと顔を引き締めると、軽い《遠当て》で扉を蹴破る。

ロクパンク「ジョーキイ、覚悟!」

   ベッドに寝転がっていた男、ビックリして飛び上がる。
   そのまま浮いていて、降りて来ない。

ロクパンク「――なんじゃ、貴様も死んだのか」
ジョーキイ「ロクパンク……とうとう見つかっちまったなァ」

   ジョーキイ、へへへと笑って、

ジョーキイ「久しぶり。懐かしいぜ」
ロクパンク「悪いが、なにをしゃべる気もないんでな」

   そう言うや、いきなり《遠当て》を連打する。
   ところが、背後の壁や窓がパパパァン!……と砕けるばかりで、ジョーキイには当たらない。

ロクパンク「……どういうことだ?」

   ジョーキイ、相変わらずヘラヘラしている。
   その体が、だんだん輝きを放つ。

ロクパンク「まさか貴様、成仏を……!?」
ジョーキイ「ご名答。お前に突き止められて、こっから先は地獄だと思うとな、もう未練がなくなったぜ。嗚呼……いーい気持ちだ」

   ロクパンク、握りこぶしをブルブルと震わせ、「畜生!……」。
   カフィン、パチミト、試しに斬ってみるけれど、ジョーキイには効かない。

ジョーキイ「しかしおれも、鬼じゃないからな、」
ロクパンク「よく言うわ」
ジョーキイ「ほんとさ。心ォ入れ替えたんだ。だからこうして浮かばれ得たんだろうよ。――でな、話を聞いてくれよ。時間がねんだよ」
ロクパンク「(なにもかも諦めたというふうに)なんでも話せ」
ジョーキイ「おれの荷物、全部やるよ。(床のカバンを指さして)そん中に、とくにいいものがあるからよ。お楽しみに。それじゃ、アバヨッ!」

   一同、誰も動かない。ジョーキイ「……」。

ジョーキイ「――まだかな? 間が持たないぜ」
カフィン「いいものって、なに?」
ジョーキイ「(カフィンを見て)うむ。じゃあ、冥途の土産に教えてやろうか。――冥途の土産っつったら、逆か! アッハハハ」

   ロクパンク、不意打ちに《遠当て》をやるも、

ロクパンク「ダメか……」
タルニコ「アパートが壊れちゃうから(と言ってロクパンクの腕を下げる)」

   廊下からは、何人かの小汚い人々が覗いている。
   ロクパンクが振り向くと、さっと引っ込む。

ジョーキイ「まあ、ナンだ。あのあとすぐ、おれも死んじまってさ。バチが当たったんだね。つまらない食中毒だよ」
ロクパンク「ざまあみろだ」
ジョーキイ「静粛に願いまして。それで、大金持ちになったとたん死んじまったおれは、あのデカブツの懸賞金をはたいて、世界中を探して回ったと思いねえ」
ロクパンク「なにを」
ジョーキイ「そりゃお前、こんな体になっちまって欲しいものは、復活の方法だけよ。不老不死じゃもう遅いからな」
ロクパンク「それで、見つかったのか」
ジョーキイ「見つかってたらこんなとこで成仏なんかしてるかよ。でも一つだけ、だいぶ近づいたのがあるんだ。そん中に入ってる。《聖水》。どうだ? せ・い・す・い。効能、ゾンビを治す。――まあ、生き返るにゃァ最低限、肉体が必要だったわけさ。たとえ腐っててもね」
カフィン・サトバク・パチミト「ゾンビを!?(タルニコを見る)」
ロクパンク「(喜ぶ一同を手で制して)どうしてそれを、わしが欲しがっていると知っていた?」
ジョーキイ「罪の意識。良心の呵責。占い師のばあさんに、時々見せてもらってたんだ。お前の様子。水晶玉でな。だから……こうなることも、まるきり予測できなかったわけじゃァないんだぜ?……逃げなかっただけ、ちょっとぐらいはホメてくれたって、バチは当たらねえと思うんだがなァ……どうだい相棒…………」

   ジョーキイ、消える。


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