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第二十話 ゾンビ生き返らせ作戦
しおりを挟む○《カササギ亭》と看板のかかった宿屋(夜)
一階の食堂。暖炉の前。
ほかの泊まり客ちらほら。
カフィンたち向かい合ってテーブルに着き、小さな瓶を見つめている。
カフィン「《聖水》――……問題は量だよ。明らか足りないよな」
サトバク「ほんの一滴がどこかにかすっただけで治るとか、噴霧でいいとか、大地に撒いたらもう、雲が晴れて、たちまち一帯が浄化されるとか」
パチミト「たぶん、甘い考えね」
ロクパンク「こういう類の霊薬は、びしょびしょになるまでぶっかけなくともよいとは思うが」
カフィン「現実的な話、これ一瓶で何人分だと思う?」
ロクパンク「そうさなァ。せいぜい三人か、四人か――多くても十人……」
タルニコ「……」
カフィンとロクパンク、タルニコを一瞬見て、お互い見つめ合い、
カフィン「集落に、大モグラたち、だいたいどれくらいいた?」
ロクパンク「正確にはわからんが、少なくとも数十は」
みんな沈黙。
カフィン「(ウイスキーをぐいっとあおって、コン! と置き)わかんないまま話しててもダメだ! まず、詳しい効き目を調べるとこから! 明日から! 今日は各自大人しく寝ること!」
○パニアングの町(朝)
にぎやかな街路。
○占い師の館
占い師「――まあ、物を増やす術ってのは、安くはないよね。それも《聖水》ほどの逸品を、ってんならなおのことね」
カフィン「あの手土産じゃあ、もう足りないと?」
占い師、黙り込み、相変わらず顔の見えないフードの下から、「ちっ」と舌打ちする。
占い師「そんなに早くはできないよ。物が物だからね」
タルニコ、カフィンに耳打ちして、
タルニコ「あの手土産って、なんだったの?」
カフィン「さあ……」
占い師「わしゃァ、仕事を急かされるのもキライだ。待ってるあいだにほかの用事を済ましときな」
○街路
カフィン「じゃあ――今の間に、パチミトの分の三種の神器(粉・ガスマスク・噛み煙草)でも借りに行くか」
パチミト「(うんざりしたように)いいけどさァ、ずっと徒歩なわけ? 馬車とかないの?」
サトバク「(うなずいて)なぜか《こっち》じゃ、馬もロバもラクダも、すぐ死ぬんだよ」
ロクパンク「それに、縁起も悪い。じっさい、馬車移動を強行すれば、懸賞金クラスが大量に来たりするのだ。さすがに大勢で一気に来られたら、ひとたまりもないからな」
パチミト「なんじゃ、それェ……」
○木々の点在する草原(夜)
樹上の寝床。
狭い中、向かい合って相談する一同。
カフィン「《聖水》ぶっかけて、どれくらいで戻るかわかんないけど、なるべく《侵された地》の端のほうに誘導しときたいな」
パチミト「元に戻る前に外の空気に当たったら、破裂して終わりだってさ」
タルニコ「どうか、くれぐれも、気をつけてください」
一同「了解」
重なり合って眠るカフィンとタルニコ。
その正面、もたれ合って眠るサトバクとパチミト。
木の下で立っているロクパンク。(矢印「見張り・交代制」)
○木々の点在する草原(朝)
焚火を囲んで朝飯を食べつつ、
カフィン「傷を負わせてもあとで丸ごと治る可能性もあるけど、やっぱりいちおう攻撃はナシの方向で」
タルニコ「それから、地面に注意ね。いつどこから飛び出して来るかわかんないから」
一同「了解」
○奇妙な荒野
荒れ果てた大地に点在する巨大な古い糞から大樹のような花や塔のように固まった森。
窓や煙突のついた、脳ミソに似た巨大ブロッコリー。
○ブロッコリーの中
意外に若々しいご隠居、呆れ果てたというように、
ご隠居「どうして一人も魔法使いがいないんだ。ほんとに、よくそれで生き延びて来られたな」
カフィン「出会いがなくってさ」
それから少し考えて、
カフィン「……そうだ、スパリグの奴、手伝ってくんないかな」
その時、伝書鳩が窓をコツコツ。
ご隠居が招じ入れてなにやら受け取り、コインを支払う。
カフィン、その明らかに特注の、鋭利でシャープな伝書鳩を見つめ、
カフィン「ご隠居、その鳩借りられない?」
ご隠居「そりゃ、べつに構わんが」
カフィン、「やった」と言うと、なにか書き殴って、伝書鳩に託す。
カフィン「――だけどこの鳩、スパリグとかって急に頼んで、居場所わかるかなァ」
ご隠居「(鋭利な鳩をなでながら)こいつをナメてもらっちゃァ困るよ」
カフィン「(満足そうにうなずき)そしたら、もしかしたら仲間が増えるかもしんないから、三種の神器、できればさらにあと四つほど――」
ご隠居「ええい、十ばかり持っていけ。今度のことは、我ら世捨て人一同、これでも応援しとるんだから」
一同、あらたまって、真剣な顔で、深々と頭を下げる。
○パニアングの町・外観
○《カササギ亭》の前
薄汚れて帰って来たカフィンたち一行。
宿屋の前に、スパリグのパーティー(全部で四人)が、だるそうに待っている。
カフィン「スパリグ! 早いな、近くにいたのか?」
スパリグ「(ほとほと呆れたというふうに)《空間移動》ぐらい、使えろよ。マジで好い加減だな」
カフィン「(痛いところを突かれたという表情ののち)だけどそっちはそっちで、全員魔法使いか。お互いアンバランスだな」
スパリグ「ほっとけ」
○《カササギ亭》(夜)
一階の食堂。
暖炉の前のテーブル、二つくっつけて、カフィンのパーティー、スパリグのパーティー全員の相談。
カフィン「まずは、ご協力に感謝する(と頭を下げる)」
スパリグ以下、三人の魔法使いたち、(みんなスパリグ同様、一見しては武闘派のゴロツキに見える)とくに反応を示さない。
スパリグ「まあ、オレサマたちも、売名のためだからな。『《こっち》の勇者』になるための踏み台さ。気にすんな」
カフィン「恩に着る。では、ざっくばらんに、そちらさんの実力を教えてくれ。どんな魔法が使えて、どの程度役に立つのか」
スパリグ「口の利き方――」
それから、使えそうな魔法が数え上げられていく。
敵の動きをしばらく止める。(二、三人まで)
敵の動きを遅くする。(五、六人まで)
味方の動きを速くする。(三人まで)
数秒先の攻撃予測。
敵のダメージ倍増、味方のダメージ半減。(物理攻撃のみ)
遠隔で敵を縛る。くっつける。眠らせる。(一人ずつなら、何人でも)
敵に幻覚を見せる。(数秒)
敵の目を完全に見えなくする。(数秒)
――……云々、云々云々。
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