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第二十一話 圧倒的に有益な情報
しおりを挟む○パニアングの町・街路(夜明け前)
○スパリグの部屋
こんこんとノック。
パーティーの中の一人の女性と寝ていたスパリグ、目を覚まして、
スパリグ「誰だァ?」
カフィン「オレ。ちょっといいか?」
○火の消えた暖炉の前
カフィン「《空間移動》、お前も使えるのか」
スパリグ「(あくびしながら)ああ」
カフィン「(暖炉に薪をくべて、しかし火をつけるでもなく)――オレさ、今度の作戦、絶対に成功させたいんだ。そのために、前以て準備できること、全部やっときたいんだよ。それで、ちょっと、二つ三つ行きたい所があるんだけど、手伝ってくんねえかな」
スパリグ「いいよ」
カフィン、スパリグの即答に少々拍子抜けしつつ、ニヤリと笑って頭を下げる。
○ガリテンの町・外観(早朝)
○情報屋の住処
情報屋の少年、眠そうに目をこすり、丸眼鏡をかける。
カフィン「占い師のばあさんのこと、ありがとね。スゲー助かった」
情報屋の少年「いいよ。こんなに朝早くなければ、もっといいんだけど」
カフィン「それで――だいたい事情知ってるかな?」
情報屋の少年「ああ。だけど、うちから出せるものはないね。君たちの作戦は、現状MAXだ。それ以上望めるものはないと思う」
カフィン「そうか。ありがとう」
表に出て、カフィン、スパリグに、
カフィン「次、いいか」
スパリグ「いちいち聞くな。――言っとくけど、今回のことは、どえらい貸しなんだからな。ちまちま遠慮したぐらいじゃなにも変わらねえほど、絶望的にでかい貸しなんだから。――だから、いっそもう堂々としてろ。そのほうが気持ちいいよ」
カフィン「それでも、オレは恩に着る」
カフィン、スパリグにつかまる。
二人の姿が光って、忽然と消える。
○森の中・滝壺の傍
洞窟の中。茣蓙に座る隠者。
スパリグを見上げて、満足げにうなずき、
隠者「魔法使いを入れたんだな。よろしいよろしい。こんなに朝早くに来なければ、もっとよろしいんだがな」
カフィン、隠者の前に金貨の山を置き、
カフィン「どんな些細なことでもいいから、知恵を貸してくっさい」
隠者「(金貨をちょっと見たあと)それで、あのモンスターはどうした?」
カフィン「――……もしかして、スウブルのこと?」
隠者、うなずく。
カフィン「気付いてたの」
隠者、うなずく。
カフィン「……やっぱり、人間とモンスターじゃ、合わなかったよ」
隠者「(満足そうにうなずいて)よろしい。なんでも聞きんさい」
カフィン「ゾンビを治す方法」
隠者「ほう?」
カフィン、かくかくしかじか。
隠者、黙って聞いている。
やがてキセルをくわえ、深々と吸い込み、長々と煙を吐いて、
隠者「その作戦だと消耗するばっかりだ。少なからぬ犠牲が出るし、あのお嬢ちゃんの両親だって、助かるかわからん」
カフィン「(嬉しそうに)大モグラはセーフなんだね。おっさん的に」
隠者「おっさん言うな。それに、大モグラは本来、アウトじゃ。あのお嬢ちゃんがセーフなだけよ。どこまでいっても、個人的な、ケッタクソの問題なんでな」
カフィン「もうオレ、こんな気持ち」
カフィン、シッカリと土下座する。
隠者、わざと見ないふりして、
隠者「ともあれ、ワシの存在を思い出したのは幸いだったよ。前回はほぼ役に立たんかったが、人には専門ちうものがあるんでな」
カフィンとスパリグ、隠者の前にあぐらをかいて、聞く姿勢。
隠者「(長々と煙を吐いて)ゾンビどもはな、ぱあになった頭のずうっと奥深くで、みんな、元に戻りたいんだ。魂は泣いとる。戻れるのなら、なんでもする。その方法は、みんな生得的に知悉しとる。普通の状態じゃァ、なんにも覚えちゃおらんが、目の前にそれが具体的に差し出されりゃ、自分からすんなりと戻りおるわ」
カフィン「……簡潔にお願いしたいな」
隠者「目の前に差し出すべきアイテムは三つ。どれか一つで結構。入手難易度の簡単なほうから、《薬草》、《薬蛇》、《聖水》だ。効き目は、後ろになるほど高いが――」
スパリグ「《聖水》を今、占い師のばあさんが大量に用意してるところだ」
隠者「(目を丸くして)どれぐらい?」
カフィン「(首を傾げて)湯水のごとく?」
隠者「(キセルを思いっきり吸い、鼻から大量の煙を吐いて)なら、もうカンタンだよ。《侵された地》の、端っこのほうに、大さかずきに並々と注いで、置いとけ。風上がいいな。天下の《聖水》に、なお余りがあれば、少量を沸かして横に置いとけ。そうすればより早く気付くだろうて」
カフィンとスパリグ、立ち上がり、
カフィン「ありがとう。おっさんがモノホンでよかった」
隠者「当り前じゃ。それでこれはもらっといていいのか?」
と、金貨の山を指さす。
カフィン、うなずいて、スパリグと消える。
隠者、やれやれとかぶりを振って、キセルを吸う。
○占い師の館
扉に貼り紙がしてあり、「今しばらく」と書いてある。
カフィンとスパリグ、歩いて《カササギ亭》に戻り、じゃあなと別れる。
○カフィンの寝室
カフィン、ベッドの上で、壁にもたれて、座っている。
こんこんとノック。
タルニコが顔を覗かせる。
カフィン、手招きする。
ロクパンク「(タルニコの後ろから顔を出して)わしも構わんかな」
カフィン「もちのろんのさ。――こうなりゃ、サトバクは?」
タルニコ「サトバクは、ちょっと野暮用」
カフィン「ふうん? 出かけてんの?」
タルニコ「(首を振り)部屋にいるよ」
カフィン「そう。――パチミトは?」
タルニコ「パチミトも野暮用」
カフィン「(タルニコを見上げて少し考え)ああそう。いいよいいよ」
ロクパンク「――……やはり、わしは遠慮しようかね」
カフィンとタルニコ、見つめ合う。
タルニコ、ベッドの上に乗り、カフィンの足のあいだに入って、くるりと背を向け、もたれかかる。
目を閉じて、満足な様子。
カフィン「(ロクパンクに)どうぞ、そのまま。――しかし懐かしいね。最初はこの三人だったな」
タルニコ「ほんとだねェ」
ロクパンク、片隅にあった椅子を持って来て、どっかりと座るも、少し浮いている。
タルニコ「思い返せば、あたしけっこう楽しかったな。なんだかんだ。……このままいつまでも、みんなで旅していくのアリだなァ」
そう言って、正面のロクパンクを見つめる。
ロクパンク、パイプに葉を詰めながら、ほほ笑んでうなずく。
タルニコ、くるりと頭を回してカフィンを振り返る。
カフィン、「ん?」という顔。
タルニコ「カフィンは?」
カフィン「そりゃ、そもそもまだ帰れないんだし。モンスターを吸い寄せちまうからな」
タルニコ「そうだね。まずは、それをどうにかしないとか」
カフィン「そうそう。なんだかんだ、一生かかるかもしんないしさ」
カフィン、タルニコの頭にあごを乗せる。
タルニコ、ふたたび目を閉じる。
ロクパンク、うまそうに煙を吐いて、暖炉の火を見つめる。
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