DTガール!

Kasyta

文字の大きさ
135 / 453
がっこうにいこう!

106話「腕輪の最期」

しおりを挟む
 夏休みも終了目前。
 俺は迷宮から帰ったその翌日に、自警団本部の執務室を訪れていた。

「胸が小さくなる腕輪・・・・・・ですか。」

 訝しげな顔の中ボスが、向かいのソファで唸る。

「そ、娼婦たちの仕事に使えないかと思って。」

 迷宮の街で手に入れた件の腕輪を手の上で弄び、真ん中のテーブルに置いた。
 中ボスの後ろに控えているソフィアも興味深げに覗き込んでくる。

「問題ないとは思いますが・・・・・・。」
「何か気になることでも?」

「いえ、その・・・・・・胸を小さくする、という事に何か意味があるのでしょうか?」
「まぁ・・・・・・そっちの方が良いという人もいるだろうしね。」

 隣に座っているミアが、絡めていた俺の腕をギュッと抱き締めるように力を込める。
 何事かと視線を向けると、彼女の顔には今にも泣き出しそうな表情が浮かんでいた。

「ど、どうしたの・・・・・・ミア?」
「旦那さまは・・・・・・胸が小さい方が・・・・・・好き、なの?」

「そ、そういう訳じゃないけど・・・・・・いつもと違う感じのミアが見られる機会があるなら嬉しい・・・・・・かな。」
「いつもはダメなの・・・・・・?」

「い、いや、そうじゃなくてね!? た、例えばさ! もうちょっと成長した私が見られるとしたらどうかな!?」
「成長した・・・・・・旦那さま?」

 じっとミアが俺の顔を見つめる。
 すると徐々に頬が染まり、耳まで真っ赤になってから俺の胸に顔を埋めるように抱きついてきた。

「わ、分かってくれたって事でいいのかな・・・・・・?」

 抱きついたままコクコクとミアが首を縦に振る。
 どんな想像したんだ一体・・・・・・。

「それで団長。どのように運用なさるおつもりで?」

 ミアの事は気にも留めず会話を続ける中ボス。
 まぁ、いつもの事だしな・・・・・・。

「まずはお試し期間を設けて銅貨五枚で貸し出し。以降は十枚って感じでどうかな?」
「少々高くはありませんか?」

「需要が分からないしね。でも後から値段を上げるよりかは、下げる方が楽でしょ?」
「・・・・・・確かに。では、そのように手配致します。」

 話が終わったと見るや、ミアが俺の胸に埋めていた顔を上げる。

「ねぇ、旦那さま。アタシ腕輪着けてみてもいい?」
「いいよ、試してみなよ。中ボスも効果は確認しておきたいだろうし。」

「お願いします、ミアン嬢。」
「うん! じゃあちょっと借りるね!」

 テーブルの上にある腕輪をミアがその手首へ嵌めると、服の上からでも分かっていた胸の膨らみがみるみる小さくなっていく。

「わわっ・・・・・・、ホ、ホントに小さくなっちゃった・・・・・・。」
「こ、これは驚きましたね・・・・・・。」

 絡んでいた腕を解き、ミアが少しぶかぶかになった胸元を押さえながら恥ずかしそうに正面に立つ。

「旦那さま・・・・・・ど、どうかな?」
「か、可愛いよ。たまにはこういうのも悪くない・・・・・・かもね。」

「えへへっ! ありがと、旦那さま!」

 隣に座り直したミアに再度腕を絡め取られる。
 柔らかな膨らみは感じ取れないが、その分――

「いつもより、旦那さまが近い気がする・・・・・・。」
「そう、かも・・・・・・?」

 物理的な距離は殆ど変わらないだろう。
 だが、クッションが無い分、ミアの鼓動がダイレクトに伝わってくる・・・・・・気がする。

「じゃ、じゃあ今度は腕輪を外してみようか。」
「え・・・・・・もう終わりなの?」

「ちゃんと元に戻る事も確認しておかないとね。」
「お手数をお掛けします、ミアン嬢。」

「分かったよぉ・・・・・・じゃ、外すね?」

 ミアが腕輪を外すと、小さくなっていた胸が徐々に膨らんでいく。
 いくらもしない内に彼女の胸は元の大きさを取り戻した。

「ひゃっ・・・・・・!」

 顔を赤くし、慌てて胸元を隠すミア。

「どうしたの?」

 俯いたまま、ミアが唇を俺の耳元に寄せる。

「あの・・・・・・下着が、ズレちゃって・・・・・・。」

 そりゃズレるわな。

「分かった。部屋で直しておいで。」
「でも、旦那さまと離れちゃうし・・・・・・。」

「ここで待ってるから、行っておいで。」
「ホントに、待っててくれるの・・・・・・?」

「うん、約束。」
「や、約束だからね、旦那さま! ちゃんと待っててね!」

 そう言い残し、ミアはバタバタと部屋を駆け出して行った。
 その様子を眺めていた中ボスが、ミアの足音が消えたのを確認し、口を開く。

「ミアン嬢はどうなされたので?」
「服を直すから一旦部屋に戻らせたよ。」

 それだけで合点のいった中ボスはそれ以上の追求行わない。

「なるほど・・・・・・使用の際は注意するよう徹底した方が良さそうですね。」

 外で使っちゃうと大変そうだしな。
 着替えの時に着脱するのが無難だろう。

「あ、あのっ・・・・・・ご主人様!」

 今度は中ボスの後ろに控えていたソフィアが声を上げる。

「わ、私も試してみて構わないでしょうか!?」
「あ・・・・・・あぁ、いいよ。はい。」

 テーブルに戻されていた腕輪をソフィアに手渡す。
 彼女は手に取った腕輪を眺めて一呼吸し、腕輪を嵌めた。
 部屋に居る全員の視線が、ソフィアの大きな胸に注がれる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」
「何も・・・・・・起きませんね。」

 彼女の胸は大きいままで、何も変化は訪れない。

「あ、あの・・・・・・私が何かいけない事を・・・・・・。」
「いや、そんな事は無いと思うんだけど・・・・・・。」

 ピシッ――
 何か嫌な音が部屋の中に響く。

 ――パキンッ。
 腕輪が真っ二つに砕け、ソフィアの腕から床へと落ちた。

「「「あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」」

 嘘だろ・・・・・・、まさか割れちまうとは。
 曲がりなりにも神様が作ったアイテムだぞ?
 多分、大きさが原因なんだろうが・・・・・・。これが神殺しの乳か。
 カランカランと床で音を立てる割れた腕輪を見て、ソフィアの表情が真っ青に染まっていく。

「も、申し訳ございません、ご主人様!」

 床に額を擦りつけながら謝罪の言葉を述べる。

「い、いや、大丈夫だから・・・・・・ね?」
「ですが・・・・・・ですが、私の、所為で・・・・・・。」

 無理矢理顔を上げさせ、抱き締めながら頭を撫でた。

「まぁまぁ、あんなの誰も分からないんだから、仕方ないよ。それより、ソフィアのおでこが擦りむいちゃってるね。」

 そのままの状態でソフィアの額に治癒魔法をかけていると、ガチャリ、と部屋の扉が開かれた。

「旦那さ・・・・・・ま・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

 扉を開いたままの姿勢で固まるミア。

「それでは団長。私は仕事が残っていますので、これで。ミアン嬢、ソフィア嬢、お先に失礼致します。」
「あ、ちょっ・・・・・・!」

 そそくさとミアの脇をすり抜け、退室していく中ボス。
 逃げやがった!

「え、えーとね・・・・・・い、色々・・・・・・あってね?」

 結局、この日は一日かけて二人の機嫌を取る羽目になったのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...