DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

107話「新校舎」

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 散々ミアとソフィアの機嫌を取りまくったその翌日。
 今日は自警団本部にある、リタが教師を勤める教室に訪れている。
 俺はその一角に土を運び込み、一枚の扉を作り上げた。
 何処にも繋がらず、隔てる訳でもない、ただそこに在るだけの扉。
 ピンク色に塗ればどこでも行けてしまいそうだが。

「よし・・・・・・とりあえず、こんなもんかな。」

 出来上がった扉を見上げ、一息つく。

「ひめきしさまー、どうしてこんなとこに扉なんてつくったの?」
「この扉を開けるとね、ある場所に行けるようになるんだよ。」

 それを聞いたリコが扉を開くと、向こうの壁が見えるのみ。
 彼女は難しい顔のまま首を傾げる。

「・・・・・・? なんにもないよ?」
「まだ完成じゃないからね。」

 扉に興味津々の妹を引き剥がそうと、リタがリコの肩に触れた。
 リコはそれに素直に従って大人しくなる。
 普通の子ならもう少し元気に振る舞いそうなものだが、松葉杖をついている姉に負担を掛けないよう、無意識に気遣っているのだろう。

「こ、こらリコ! 姫騎士様の邪魔をしてはいけません!」
「大丈夫だよ。その扉、建付けが悪かったりしないかな、リコ?」

「うん! リコでもちゃんと開けられるよ、ひめきしさま!」
「それなら良かった。」

 机の上に置いていた土のプレートを手に取り、扉の側面に作っておいたスリットに挿し込んだ。
 大きさはきちんと合わせて作っていたので、つっかえたりすることもない。

「よし、ピッタリだね。これで完成。」
「いまの板なぁに?」

「あの中に、迷宮で手に入れた物を仕込んであるんだよ。」
「・・・・・・ふぅん?」

 プレートの中に仕込んだのは、”学校の権利書”という一枚の紙状のアイテム。
 扉に貼り付けると、パーティの皆を散々怖がらせた、あの学校へと繋がるようになる。
 紙のままだと頼りないので、土で覆ってプレート状に加工したのだ。
 自分で使っても良かったのだが、折角だし本当に学校として使おうという訳である。

「じゃ、もう一度開けてみて、リコ。」
「う、うん・・・・・・!」

 リコがゴクリと喉を鳴らし、取っ手を回して扉を引き開けた。
 扉の向こうからは先ほどと違った景色が広がり、向こう側の明るい空から光が差し込んでくる。

「わぁ・・・・・・すごい!」

 瞳を輝かせたリコが扉の向こう側へと駆け出して行く。

「リ、リコ!?」

 リタが慌てて声を掛けるが、興奮しているリコの耳には届いていないようだ。

「も、申し訳ありません、姫騎士様。妹がはしゃいでしまって・・・・・・。」
「構わないよ。それより、リタも一緒に行こう。」

「良いのですか?」
「勿論。これからはリタに使ってもらう事になるしね。」

「私が・・・・・・使う?」
「まぁ、見てもらった方が早いかな。おいで。」

「は、はい!」

 リタを後ろに連れて開きっ放しの扉をくぐると、青空の下に晒された真っ白な校舎が目に飛び込んできた。
 眼前に聳える校門は堅く閉じられており、リコがその隙間から覗き込んで校舎の方を窺っている。
 辺りの様子は迷宮で来た頃と変わっていないようだ。

「あの、此処は・・・・・・? お城・・・・・・でしょうか?」

 惚けた顔で校舎を見つめるリタに答える。

「学校だよ。次からリタには此処で授業してもらうから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、えぇっ!?」

 素っ頓狂な声をあげたリタが、目を白黒させながら言葉を続ける。

「わ、私がこんな所を使わせて頂くなんて、ダ、ダメです!」
「私が良いって言ってるんだからダメじゃないよ。それより、中の方も見ておこうか。」

 戸惑うリタの手を引き、リコが引っ付いている閉まったままの校門の前に立つ。

「・・・・・・中から入って開けるしかないかな。」

 どこから侵入しようかと物色していると、”ポン”という効果音とともに突然目の前に女の子が現れた。

「やーっと来たでし! 遅いでし!」

 ぷんぷんと頬を膨らませながらコスプレ衣装の様な着物を靡かせているこの少女は――

「えーっと、つくね神・・・・・・ちゃん?」
「つく”も”神でし!」

 素晴らしいツッコミをありがとう。
 そう、現れたのは迷宮で出会ったつくも神ちゃんだ。

「あれ・・・・・・成仏したはずじゃ?」
「そ、それはそのー・・・・・・・・・・・・やめたでし!!」

「やめ・・・・・・はぁっ!?」

 そもそも取り止めできるものなのか、それ・・・・・・?

「ど、どうして止めちゃったの? 何かあったの?」
「う~・・・・・・それは・・・・・・でしね・・・・・・。」

 つくねちゃんが言い淀んでいると、今度は空から声が聞こえてくる。

「それは私が説明するわ! ・・・・・・きゃっ!」

 「空から女の子が!」と叫ぶ間もなく別の女の子が降ってきた。

「イタタ・・・・・・。やっぱり慣れないわね、この身体。」

 薄く透き通る自らの身体をマジマジと眺めながら首を傾げている少女にも見覚えがある。

「えーっと、君は確か、新聞部の・・・・・・。」
「そうよ、約束通り密着取材させてもらうわ!」

 してないぞ、そんな約束・・・・・・。

「そ・・・・・・それより、どうしてまだ此処にいるのか教えてくれる? てっきり成仏出来たものだと思ってたんだけど・・・・・・。」
「成仏するかそのまま此処で過ごすか選ぶように言われて、断ったの。」

「こ、断ったって・・・・・・どうしてまた?」
「だって、成仏したら消えちゃうのよ? それ・・・・・・もう一度死んじゃうって事でしょ?」

「・・・・・・言われてみれば、そうだね。」
「だったら、こんな身体でも、って・・・・・・ね。 本当に生きてるって言えるのかは分からないけど。」

 自分の身体を太陽に透かしながら自嘲気味に小さく笑みを作る。

「転生・・・・・・みたいな事はして貰えなかったの?」
「転生して”コレ”なの。ゴーストタイプのモンスター? みたいな感じだって最初にバイトする時に言われたわ。」

「つまり、魔物に転生させられた・・・・・・と。」
「そういう事ね。」

「ま、魔物・・・・・・!?」

 話を聞いていたリタが、リコを背に庇い後ずさる。

「別に、あなた達をどうこうするつもりは無いわよ・・・・・・。」
「ま、まぁ、こっちの世界は魔物に殺されるとか日常茶飯事だから、気を悪くしないであげてね。」

 少女がジトリとこちらを窺う。

「じぃ~・・・・・・。」
「な、何・・・・・・かな?」

「”こっちの世界”?」

 ぁ・・・・・・。

「”中身”も気になってたけど、あなた随分理解が早い・・・・・・というより事情が分かっているみたいだし、もしかして・・・・・・。」

 まぁ、バレるわな。
 別に同じ境遇の相手に隠し立てするような事じゃないから良いんだけど。
 それより二人の居る前で”中身”の事を追求される方が何かと問題がありそうだ。
 そんな訳でさっさと白状してしまう事にし、少女に耳打ちする。

『そうだよ。私、いや・・・・・・俺もこっちの世界に転生してきた”地球人”だよ。君とは違う理由だけどね。中身と見た目が違うのはその所為。』
『やっぱり! ということは・・・・・・あなたを取材しても意味無いわね。そっちの子達にしようかしら。』

『お、お手柔らかにね・・・・・・。』

 コソコソと日本語で会話していると、リコが袖を引く。

「ひめきしさま、ないしょばなししてるの?」
「あぁ、えっと・・・・・・この子が二人を取材したいって。」

「あの、”取材”・・・・・・とは何でしょう、姫騎士さま?」
「ん~、この子の質問に答える・・・・・・みたいな?」

「質問に答える? ・・・・・・授業をすれば良いのでしょうか?」
「ああ、いいねそれ。そうしようか。」

 生徒がチンピラ崩れのおっさんだらけじゃ、華なんてないからな。
 勝手に進む話に、新聞部の少女が慌てて割り込んでくる。

「ちょ、ちょっと! 何勝手に・・・・・・!」
「取材するなら、少しでも交友を深めておいた方がいいんじゃない?」

「むぅ・・・・・・それもそうだけど。」
「リタも構わないかな?」

「・・・・・・はい、姫騎士様がそう仰られるなら。」

 大人しくしていたつくもちゃんが怒った顔で俺に詰め寄ってくる。

「ズルいでし! あたしもやりたいでし!」
「ダメなんて言ってないよ。人数は多い方がいいだろうしね。」

「だったら、みんなも一緒にやるでし!」
「みんなって・・・・・・?」

「さっきからそこの草葉の陰から見守ってるわよ、ほら。」
「草葉の陰って・・・・・・いやまぁ、ある意味正しいけど・・・・・・。」

 新聞部の子が指した植え込みの陰から、こちらを伺っている女の子達と目が合う。

「あの子達ってもしかして・・・・・・。」
「そうよ、皆こっちを選んだってワケ。皆も早く出てくれば良かったのに。」

「だ、だってそっちの子達が怖がってたみたいだし・・・・・・。」

 ブルマを履いた子が、両手で頭を支えながら答えた。
 いきなり首が転げたらリタが気絶しかねないしな・・・・・・。
 後で治癒できるか試しておこう。

「ん~・・・・・・暖かい・・・・・・。」

 髪の長いスク水少女が背後から這いより、巻き付くように負ぶさってきた。
 重さなどは殆ど感じないが、こういうのを”取り憑かれる”・・・・・・とでも、言うのだろうか。

「あ、あのっ・・・・・・。」

 申し訳なさそうに顔を伏せながら、開かずの教室で飛び降りを繰り返していた子が俺の前に立つ。

「助けてもらったのに、お礼も言わず・・・・・・すみませんでした。」
「気にしないで。元気そうで良かった。」

「それから・・・・・・あ、ありがとうございました!」

 あの時は始終泣きじゃくっていたからな。
 状況を鑑みれば仕方ないと思うのだが、随分と律儀な子だ。
 きっと正義感が強くて真面目な子なのだろう。

「んふふ~、おじさん優しいんだぁ~♪」

 その間に割り込み、ギャルっぽい子が前から抱き着ついて耳元で囁いてきた。
 この子は壁に埋まっていた子だ。

「ちょ、ちょっと・・・・・・!」
「大丈夫、こっちの世界の子たちには黙っててあげる♪」

「た、頼んます・・・・・・。」
「それよりぃ~、助けてくれたお礼・・・・・・ナニして欲しい?」

「お、お礼なんていいから。」
「え~っ、つまんな~い。」

 ともかく、これで六人か。
 えっと、あと一人は・・・・・・。

「あぁそうだ、図書館の子は?」
「まだそっちに隠れてるわ。」

 新聞部の子に言われて視線を植え込みの方へ戻すと、そこから顔だけ覗かせてこちらを窺う子がいた。
 図書館で本を探していた女の子だ。

「君もこっちで少しお話しない?」
「あっ、待って、その子は――」

 新聞部の子が止める間もなく、図書館の子が観念した様子で植え込みの陰から姿を現した。
 首に繋がれた鎖を地面に擦って歩を進める。
 両手で胸と大事なところを隠しながら。

「・・・・・・って、何で裸!?」
「おじさんのえっちぃ~♪」

 ニヤニヤと吐息を吹きかけるようにしてからかう少女の口を新聞部の子が塞ぐ。

「あなたはちょっと黙ってて。」
「むぐ・・・・・・ふぁ~い。」

「私達は、その・・・・・・死んだ時の格好のままだから・・・・・・。」
「えっと、自分の姿を操作出来たりはしないの?」

「簡単に出来たら苦労してないわ。」
「ぷはっ・・・・・・出来たらおじさんにアタシのハダカ見せてあげられたのにね♪」

「あーもう、あなたは少し黙ってて!」
「また怒られちゃった♪」

「とにかく、だから早く制服を決めて欲しいの!」
「制服を決める・・・・・・? ごめん、話がよく見えないんだけど・・・・・・。」

「そうね・・・・・・モノを見て説明した方が分かると思うし、まずは付いて来て貰える?」

 彼女の後に続き、校門を乗り越えて敷地内へと足を踏み入れる。
 校門には南京錠が掛けられていたが、触手で解錠し、閂も外して開門しておく。
 もう閉める必要もないだろう。

「ほら、リタとリコも付いておいで。」
「あ、ありがとうございます、姫騎士様。」

 こうして俺たちは校内へ歩を進めるのだった。
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