138 / 453
がっこうにいこう!
109話「技術の果てに」
しおりを挟む
夏休みも終わり、授業が始まって数日経ったある日の放課後。
レンシアに呼び出された俺は、学長室の扉を叩く。
待機していたニセ学園長と挨拶を交わし、勝手知ったるで部屋の奥にある扉を押し開いた。
部屋に入った時点で来訪は知られているので、わざわざノックをする必要はない。
『おう、これで揃ったな。』
中にはおざなりに出迎えてくれたレンシアと図書館の司書ちゃん。
『やっほー、久しぶり。最近本読みに来ないじゃん。』
『あらかた調べたしね。必要になればまた行くよ。』
魔法を使えない件についての調査であったが、結局はレンシアに丸投げすることになってしまっている。
そのレンシアも神さまとやらに丸投げしているのだが。
レンシアの方に目線をやるが、お手上げのポーズ。
『まだ返答は来てないな。気長に待つしかないぜ?』
『そっか・・・・・・まぁ、別に困ってる訳じゃないし。ただ理由が知りたいだけだからな。』
もし魔力操作と併用可能であるなら儲けもの程度だ。
どちらか選べと言われたら現状維持を選ぶだろう。
そして部屋には魔女がもう一人。
『ピッコロ先生も久しぶり。』
『あぁ、あの子はその後どう?』
『元気だよ。お陰さまでね。』
本名は知らないが、あだ名の由来は”欠損部位の再生治療を研究しているから”だそうだ。
フィーが大怪我を負った時に治療してくれた医者であり、彼女がいなければフィーは五体満足どころか命さえ危うかっただろう。
そういう意味では足を向けて寝られない相手でもある。
『なら良かった。あんまり危ない事はしないようにね?』
『俺なりには気を付けてるつもりだよ。けど、魔物との殺った殺られたは避けて通れないし。』
『とは言っても、まだ子供なんだし。』
『そうなんだけど・・・・・・俺よりも他の子の方が乗り気だったりするんだよね・・・・・・。ウチのお姉様含めて。』
ヒノカを筆頭にフィー、ニーナ、サーニャ、以外にもリーフまで。
誰かを守る為にも自分を守る為にも、結局は強くなければならない、という結論に至ったらしい。
それに触発されてか、フラムもよく頑張っている。
一番肝が据わってないのは俺じゃなかろうか。
それに、早々冒険者になった俺がとやかく言える立場でもない。
『・・・・・・異世界(こっち)の子は逞しいな。そういや、会ったついでに頼みたい事があるんだけど。』
『ん、何?』
『ちょっと待てお前ら。』
いきなりレンシアが会話に割り込んでくる。
『どうしたんだよ。』
『話なら飯を食いながらでもできるだろ、ピッコロ先生?』
『それは構わないけど・・・・・・その為に自分たちを集めたの?』
『そ。新製品の試食会ってところだよ。』
そう言ってレンシアは蓋をされた少し大きめのコップくらいの筒を取り出し、机の上に並べた。
『そ、それは・・・・・・まさか・・・・・・!?』
手に持ってみると、大きさに比べて随分と軽い。
振ると中からカサカサと音が返ってくる。
『開けて・・・・・・いいのか?』
『あぁ、開けてみな。』
ぺリぺリと紙の蓋を剥がす。
パサパサに乾燥したネギにコロコロと転がる小さな肉の塊。
きつい匂いを放つ粉末がブロックのように固まった麺の間に流れ落ちていく。
『カップラーメンじゃねーか!!』
見紛うことなきカップ麺だ。
『魔法技術の粋を集めて作り上げた逸品だぜ。』
『なんつーもんを作ってんだよ・・・・・・。』
『いや、飯は大事なんだぞ?』
『そりゃ分かるけどさ。』
食わなきゃ死ぬんだし。
『分かってねえな。これで転生者の鬱や自殺が防げるかもしれないんだぜ?』
『・・・・・・なんで自殺とか物騒な話になるんだよ。』
『異世界転生って言っても、みんながみんな上手く立ち回れる訳じゃないしな。でも美味い飯が食えれば何とか頑張れるもんなんだよ。』
『そんなもんかねぇ・・・・・・。』
『一番顕著だったのはやっぱり米かな。転生しても結局みんな日本人だったって訳だ。』
『確かに・・・・・・こっちで最初に米を食った時はなんか感動したわ。』
『だろ? 昔は何十年間も食えなかったやつも居たんだよ。まぁ、平気なやつは平気なんだけど。』
それはちょっと・・・・・・想像できないな。
こっちで米を食べるまでは平気だったが、今となっては元の世界に居た時より好んで米を食ってる気がする。
懐郷の念、と言うやつだろうか。
レンシアが言葉を続ける。
『そういや、昔は【千の迷宮】に”飯ツアー”に行った数人が戻って来ないなんて事もあったな。』
『あぁ、行ったねぇ~・・・・・・全裸で。あの頃は若かった。』
司書ちゃんがウンウンと頷く。
あの街の子供たちが裸で迷宮に突入してるのって、お前らの所為じゃ・・・・・・。
まぁ確かに・・・・・・あそこなら色々食えるし、ツアーで行くというのも分からない話ではない。
ただ、面倒くさいが。
金も掛かるしな。
『で、辛気臭い話は置いといて、だ。・・・・・・食うだろ、お前ら?』
*****
ズルズルと部屋の中に麺をすする音が響く。
鶏ガラと醤油の風味が口から身体にめぐる。
『やべぇ・・・・・・身体に悪い味だ、コレ。ズルズル。』
『ジャンクだねぇ~・・・・・・。ズズズ・・・・・・。』
『買い溜めて研究室に置いておきたいな。ズルルッ。』
『引き篭もる気満々じゃねえか。ちゅるんっ。』
皆が黙々と湯気に向かい合う中、ピッコロ先生が一人顔を上げる。
『それで、さっきの話なんだけど。』
『頼みたい事・・・・・・だっけ?』
『あぁ、リタって子を知ってる?』
『俺が杖をあげた子なら知ってるけど・・・・・・どうしてピッコロ先生が?』
『自分が検診したからね。』
検診・・・・・・そういや中ボスがそんなことを言ってたような。
騎士団と提携することになった関係で、団員全員が検診されることになっていた筈だ。
それを受け持ってくれたのだろう。
『なるほどね。それで、リタがどうしたの?』
『あの子に研究に協力するよう頼んで欲しいんだ。』
確かに、ピッコロ先生にとってリタはちょうど良い研究対象だろう。
『検診の時に頼まなかったの?』
『姫騎士さまのお許しがないとダメだって言われてね。』
リタの性格なら勝手に引き受けたりはしないか。
『その研究って危険なの?』
『危険なことをさせるつもりはないけど、臨床試験とかもお願いしたいし・・・・・・保障はできないかな。勿論、最善を尽くすのが前提での話ね。』
『ふむ・・・・・・期間はどれくらい?』
『治療できるまで。週一の通いとかで、必要な時に数日泊まってくれれば有難いんだけど。』
『分かった。話はしておくけど、後はリタの意思に任せる、で良い?』
『それで構わないよ。無理強いしても仕方ないし。』
リタの足が治る治らないは別として、定期的に診てもらえるならこちらとしても有難い。
最初に会った時に比べれば随分元気になったが、やはり身体の方は心配なのだ。
『でも、ピッコロ先生くらいの腕があれば患者なんて選り取り見取りじゃないの?』
『いや・・・・・・この姿だとあまり信用してもらえなくてね。』
『・・・・・・まぁ、良くてお医者さんごっこか。』
『そういうこと。その点、あの団の人らはきちんと信用してくれたよ。・・・・・・畏れられていた、と言った方が正しいかもだけど。』
『ハハハ・・・・・・い、色々あったからね。』
団員たちは街を歩いている幼女とすれ違う時なんかもペコペコして妙に低姿勢だ。
小さく悲鳴を上げる者もいる始末。
幼女恐怖症と言っても過言ではないだろう。
誰の所為とは言わないが。
俺とピッコロ先生の会話が終わったのを見計らい、レンシアが口を開く。
『そういえばアリス、今八歳だったよな?』
『あぁ、四年に上がる頃には九歳かな。・・・・・・身体の方はね。』
『なら、次の入学式後・・・・・・見学会の辺りが丁度良さそうだな。それまでに決めておけよ?』
『魔女化・・・・・・ね、今のところはなるつもりだよ。』
『そうか・・・・・・それなら、今の内に髪をもう少し伸ばしておくといい。』
『何か関係あるのか?』
頭の中で話が結びつかず、首を傾げて問う。
『大した話じゃない、色んなヘアスタイルを楽しみたいなら伸ばしとけって事だ。』
『関係なくない?』
『簡単に言うと、魔女化した時点の長さまでしか伸びなくなる。爪とかもな。』
魔女化を施すにも色々と制約があるようだ。
不老の力を得る訳だし、当然といえば当然な気もするが。
『ふーん、そういう事か。なら・・・・・・もう少し伸ばしとこうかな。』
今でも髪をほどけば背中の半分くらいまであるが、そういう話なら伸ばしておいても損はないだろう。
しばらくは邪魔になるかもしれないが、魔女になったら切ってしまえば良いだけの話だ。
『あぁ、そうすると良い。こっちも春を目途に準備を進めておく。そっちも体調を整えておくようにな。』
『分かったよ。肝に銘じておく。』
『――そう言う事なら、こちらにも良い話があるよ。』
得意気に口の端を上げるピッコロ先生に聞き返す。
『良い話って・・・・・・何?』
『もし、手っ取り早く髪を伸ばしたいなら、毛先をほんの少し切って其処に・・・・・・コイツを塗ると良い。』
その言葉と共に、ピッコロ先生から瓶に入った液状の薬を手渡された。
『これは何の薬?』
『”再生薬”・・・・・・って言っても簡単な傷くらいしか治せないから、良く効く傷薬ってとこだね。それを切った毛先に浸けると、そこから切った以上に伸びるって訳。』
『そんな物まで作ってるのか。』
『自分の髪程度なら、いくらでも研究材料に使えるからね。まぁ、副産物みたいなものだよ。・・・・・・ちなみに、伸ばすだけで生やせないから。』
ハゲの頭に塗って試してやろうかと思ったが、始まる前に夢は砕かれたようだ。
*****
色々と話しながら食べている内に、カップラーメンの容器はすっかり空っぽになってしまった。
他の者たちも同様に食べ終えている。
『ふぅ~、美味かった~。ごちそうさま!』
スープまで飲み干した司書ちゃんが、カップを逆さにしてテーブルに伏せる。
『美味しかったよ、ご馳走様。』
続いてピッコロ先生が。
『結構な御手前で。』
俺も残っていたスープを一気に飲み干し、それに倣った。
『お前ら伏せ丼やめーや!』
レンシアに呼び出された俺は、学長室の扉を叩く。
待機していたニセ学園長と挨拶を交わし、勝手知ったるで部屋の奥にある扉を押し開いた。
部屋に入った時点で来訪は知られているので、わざわざノックをする必要はない。
『おう、これで揃ったな。』
中にはおざなりに出迎えてくれたレンシアと図書館の司書ちゃん。
『やっほー、久しぶり。最近本読みに来ないじゃん。』
『あらかた調べたしね。必要になればまた行くよ。』
魔法を使えない件についての調査であったが、結局はレンシアに丸投げすることになってしまっている。
そのレンシアも神さまとやらに丸投げしているのだが。
レンシアの方に目線をやるが、お手上げのポーズ。
『まだ返答は来てないな。気長に待つしかないぜ?』
『そっか・・・・・・まぁ、別に困ってる訳じゃないし。ただ理由が知りたいだけだからな。』
もし魔力操作と併用可能であるなら儲けもの程度だ。
どちらか選べと言われたら現状維持を選ぶだろう。
そして部屋には魔女がもう一人。
『ピッコロ先生も久しぶり。』
『あぁ、あの子はその後どう?』
『元気だよ。お陰さまでね。』
本名は知らないが、あだ名の由来は”欠損部位の再生治療を研究しているから”だそうだ。
フィーが大怪我を負った時に治療してくれた医者であり、彼女がいなければフィーは五体満足どころか命さえ危うかっただろう。
そういう意味では足を向けて寝られない相手でもある。
『なら良かった。あんまり危ない事はしないようにね?』
『俺なりには気を付けてるつもりだよ。けど、魔物との殺った殺られたは避けて通れないし。』
『とは言っても、まだ子供なんだし。』
『そうなんだけど・・・・・・俺よりも他の子の方が乗り気だったりするんだよね・・・・・・。ウチのお姉様含めて。』
ヒノカを筆頭にフィー、ニーナ、サーニャ、以外にもリーフまで。
誰かを守る為にも自分を守る為にも、結局は強くなければならない、という結論に至ったらしい。
それに触発されてか、フラムもよく頑張っている。
一番肝が据わってないのは俺じゃなかろうか。
それに、早々冒険者になった俺がとやかく言える立場でもない。
『・・・・・・異世界(こっち)の子は逞しいな。そういや、会ったついでに頼みたい事があるんだけど。』
『ん、何?』
『ちょっと待てお前ら。』
いきなりレンシアが会話に割り込んでくる。
『どうしたんだよ。』
『話なら飯を食いながらでもできるだろ、ピッコロ先生?』
『それは構わないけど・・・・・・その為に自分たちを集めたの?』
『そ。新製品の試食会ってところだよ。』
そう言ってレンシアは蓋をされた少し大きめのコップくらいの筒を取り出し、机の上に並べた。
『そ、それは・・・・・・まさか・・・・・・!?』
手に持ってみると、大きさに比べて随分と軽い。
振ると中からカサカサと音が返ってくる。
『開けて・・・・・・いいのか?』
『あぁ、開けてみな。』
ぺリぺリと紙の蓋を剥がす。
パサパサに乾燥したネギにコロコロと転がる小さな肉の塊。
きつい匂いを放つ粉末がブロックのように固まった麺の間に流れ落ちていく。
『カップラーメンじゃねーか!!』
見紛うことなきカップ麺だ。
『魔法技術の粋を集めて作り上げた逸品だぜ。』
『なんつーもんを作ってんだよ・・・・・・。』
『いや、飯は大事なんだぞ?』
『そりゃ分かるけどさ。』
食わなきゃ死ぬんだし。
『分かってねえな。これで転生者の鬱や自殺が防げるかもしれないんだぜ?』
『・・・・・・なんで自殺とか物騒な話になるんだよ。』
『異世界転生って言っても、みんながみんな上手く立ち回れる訳じゃないしな。でも美味い飯が食えれば何とか頑張れるもんなんだよ。』
『そんなもんかねぇ・・・・・・。』
『一番顕著だったのはやっぱり米かな。転生しても結局みんな日本人だったって訳だ。』
『確かに・・・・・・こっちで最初に米を食った時はなんか感動したわ。』
『だろ? 昔は何十年間も食えなかったやつも居たんだよ。まぁ、平気なやつは平気なんだけど。』
それはちょっと・・・・・・想像できないな。
こっちで米を食べるまでは平気だったが、今となっては元の世界に居た時より好んで米を食ってる気がする。
懐郷の念、と言うやつだろうか。
レンシアが言葉を続ける。
『そういや、昔は【千の迷宮】に”飯ツアー”に行った数人が戻って来ないなんて事もあったな。』
『あぁ、行ったねぇ~・・・・・・全裸で。あの頃は若かった。』
司書ちゃんがウンウンと頷く。
あの街の子供たちが裸で迷宮に突入してるのって、お前らの所為じゃ・・・・・・。
まぁ確かに・・・・・・あそこなら色々食えるし、ツアーで行くというのも分からない話ではない。
ただ、面倒くさいが。
金も掛かるしな。
『で、辛気臭い話は置いといて、だ。・・・・・・食うだろ、お前ら?』
*****
ズルズルと部屋の中に麺をすする音が響く。
鶏ガラと醤油の風味が口から身体にめぐる。
『やべぇ・・・・・・身体に悪い味だ、コレ。ズルズル。』
『ジャンクだねぇ~・・・・・・。ズズズ・・・・・・。』
『買い溜めて研究室に置いておきたいな。ズルルッ。』
『引き篭もる気満々じゃねえか。ちゅるんっ。』
皆が黙々と湯気に向かい合う中、ピッコロ先生が一人顔を上げる。
『それで、さっきの話なんだけど。』
『頼みたい事・・・・・・だっけ?』
『あぁ、リタって子を知ってる?』
『俺が杖をあげた子なら知ってるけど・・・・・・どうしてピッコロ先生が?』
『自分が検診したからね。』
検診・・・・・・そういや中ボスがそんなことを言ってたような。
騎士団と提携することになった関係で、団員全員が検診されることになっていた筈だ。
それを受け持ってくれたのだろう。
『なるほどね。それで、リタがどうしたの?』
『あの子に研究に協力するよう頼んで欲しいんだ。』
確かに、ピッコロ先生にとってリタはちょうど良い研究対象だろう。
『検診の時に頼まなかったの?』
『姫騎士さまのお許しがないとダメだって言われてね。』
リタの性格なら勝手に引き受けたりはしないか。
『その研究って危険なの?』
『危険なことをさせるつもりはないけど、臨床試験とかもお願いしたいし・・・・・・保障はできないかな。勿論、最善を尽くすのが前提での話ね。』
『ふむ・・・・・・期間はどれくらい?』
『治療できるまで。週一の通いとかで、必要な時に数日泊まってくれれば有難いんだけど。』
『分かった。話はしておくけど、後はリタの意思に任せる、で良い?』
『それで構わないよ。無理強いしても仕方ないし。』
リタの足が治る治らないは別として、定期的に診てもらえるならこちらとしても有難い。
最初に会った時に比べれば随分元気になったが、やはり身体の方は心配なのだ。
『でも、ピッコロ先生くらいの腕があれば患者なんて選り取り見取りじゃないの?』
『いや・・・・・・この姿だとあまり信用してもらえなくてね。』
『・・・・・・まぁ、良くてお医者さんごっこか。』
『そういうこと。その点、あの団の人らはきちんと信用してくれたよ。・・・・・・畏れられていた、と言った方が正しいかもだけど。』
『ハハハ・・・・・・い、色々あったからね。』
団員たちは街を歩いている幼女とすれ違う時なんかもペコペコして妙に低姿勢だ。
小さく悲鳴を上げる者もいる始末。
幼女恐怖症と言っても過言ではないだろう。
誰の所為とは言わないが。
俺とピッコロ先生の会話が終わったのを見計らい、レンシアが口を開く。
『そういえばアリス、今八歳だったよな?』
『あぁ、四年に上がる頃には九歳かな。・・・・・・身体の方はね。』
『なら、次の入学式後・・・・・・見学会の辺りが丁度良さそうだな。それまでに決めておけよ?』
『魔女化・・・・・・ね、今のところはなるつもりだよ。』
『そうか・・・・・・それなら、今の内に髪をもう少し伸ばしておくといい。』
『何か関係あるのか?』
頭の中で話が結びつかず、首を傾げて問う。
『大した話じゃない、色んなヘアスタイルを楽しみたいなら伸ばしとけって事だ。』
『関係なくない?』
『簡単に言うと、魔女化した時点の長さまでしか伸びなくなる。爪とかもな。』
魔女化を施すにも色々と制約があるようだ。
不老の力を得る訳だし、当然といえば当然な気もするが。
『ふーん、そういう事か。なら・・・・・・もう少し伸ばしとこうかな。』
今でも髪をほどけば背中の半分くらいまであるが、そういう話なら伸ばしておいても損はないだろう。
しばらくは邪魔になるかもしれないが、魔女になったら切ってしまえば良いだけの話だ。
『あぁ、そうすると良い。こっちも春を目途に準備を進めておく。そっちも体調を整えておくようにな。』
『分かったよ。肝に銘じておく。』
『――そう言う事なら、こちらにも良い話があるよ。』
得意気に口の端を上げるピッコロ先生に聞き返す。
『良い話って・・・・・・何?』
『もし、手っ取り早く髪を伸ばしたいなら、毛先をほんの少し切って其処に・・・・・・コイツを塗ると良い。』
その言葉と共に、ピッコロ先生から瓶に入った液状の薬を手渡された。
『これは何の薬?』
『”再生薬”・・・・・・って言っても簡単な傷くらいしか治せないから、良く効く傷薬ってとこだね。それを切った毛先に浸けると、そこから切った以上に伸びるって訳。』
『そんな物まで作ってるのか。』
『自分の髪程度なら、いくらでも研究材料に使えるからね。まぁ、副産物みたいなものだよ。・・・・・・ちなみに、伸ばすだけで生やせないから。』
ハゲの頭に塗って試してやろうかと思ったが、始まる前に夢は砕かれたようだ。
*****
色々と話しながら食べている内に、カップラーメンの容器はすっかり空っぽになってしまった。
他の者たちも同様に食べ終えている。
『ふぅ~、美味かった~。ごちそうさま!』
スープまで飲み干した司書ちゃんが、カップを逆さにしてテーブルに伏せる。
『美味しかったよ、ご馳走様。』
続いてピッコロ先生が。
『結構な御手前で。』
俺も残っていたスープを一気に飲み干し、それに倣った。
『お前ら伏せ丼やめーや!』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる