DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

143話「合法じゃない誘拐」

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 本部に到着すると、門番をしている団員が騎士様式の敬礼をピシリと行った。
 ただ、ならず者みたいな格好なのであまり様になっていない。
 せっかく騎士団と連携をとる事になったのだし、制服くらいはポケットマネーで揃えてやってもいいかもしれない。
 経費で落とそうにも、残念ながら無い袖は振れないのが実情なのである。

「お疲れ様っす、団長!」
「中ボスは居る?」

「部屋の方にいらっしゃるかと!」
「ん、分かった。」

 門番に軽く手を挙げて門を通ると、ちょうど屋敷の扉が開いて中ボスとハゲが姿を見せた。
 部屋の窓から俺が来るのを確認して出てきたのだろう。

「待ってましたぜ、団長!」
「お呼び立てして申し訳ありません。」

 若干緊張した面持ちの二人。
 事情を理解していないらしい他の団員達も、二人の様子に当てられピリピリとした雰囲気が流れている。

「それで・・・・・・何があったの?」
「一先ずは中へ。」

 中ボスに促され、屋敷の中へと足を踏み入れた。
 俺とミア、そして中ボスとハゲが一歩進むたびにギシギシと軋む床板の音がやけに大きく響く。
 古い屋敷なので当然といえば当然なのだが、いつも賑やかで気にも留めていない音が胸の奥をザワザワと擦り立ててくるようだ。
 結局誰も口を開くことはなく、執務室へ辿り着いた。

 執務室の扉が閉まると、時間がピタリと止まったかの様に静けさが耳の奥を撫でていく。
 俺の肩に置かれているミアの手にギュッと力が入ったのを感じて彼女の方へ目をやると、ミアの視線は机の上にある木箱に縫い止められていた。
 ボーリングの球がピッタリと収まりそうな木箱の傍には、封の切られた便箋も添えられている。

「その箱は何?」

 中ボスが咳払いして重い口を開く。

「先程届けられました。中には・・・・・・その、首が収められております。」
「は? 首ぃ!?」

 思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

「えーっと、生首・・・・・・ってこと?」
「はい、そうです。」

 恐る恐る箱に近づき、載せられていただけの蓋をそっと退けてみる。

「うわ~・・・・・・マジだ。」

 怒りとも恐怖とも呼べる形相で固まった男の顔が塩漬けにされて、コチラを睨めつけるように収まっている。
 三国志か何かのつもりか?
 まぁ・・・・・・とりあえず確認は済んだので閉めておこう。南無。

「そもそも、何でこんな物が送られてきたの? 何か恨みでも・・・・・・・・・・・・あるんだろうけど。」
「そちらの手紙も一緒に送られてきました。」

 箱の傍らに置かれていた便箋を拾い上げ、中身に目を通した。
 要約するとこうだ。
 サラサの父親であるシタウン・ラムス氏が亡くなったので、組を継がせるためにサラサを返して頂きたい。
 といった内容が、ご丁寧なスラングで書かれている。

「なるほどね・・・・・・どっかで見た顔だと思ったら、サラの・・・・・・。」
「はい。私の見立てでは・・・・・・御本人、かと。」

「それで、サラは?」
「ソフィア嬢と街に出ておられましたので、手空きの者に確認に向かわせました。」

「とりあえずはその報告待ちか・・・・・・。それにしても、何でこんな事を?」
「恐らく、組を乗っ取られたのでしょう。以前に・・・・・・その・・・・・・随分と失態を晒してしまいましたので。」

 中ボスがチラリと俺の方を見る。
 あ~・・・・・・、そういえば色々やった気がする。
 幼女にフルボッコにされたとなれば面子なんて無くなったも同然か・・・・・・。
 その辺りの責任を上手く誘導して下剋上したってところだろう。
 少し考えが足りなかったな。

「でも、それなら別にサラは必要ないだろう?」
「ラムス組と言えば小さくはありません。ですが、サラサ嬢を取り戻して婚儀を結んだ、ともなれば旧体制派も引き下がるしかないでしょうから。」

「つまり・・・・・・政治ごっこのためにサラを狙ってるって事?」
「身も蓋もない言い方ですが、相違無いかと。」

 はぁ、と溜息を吐く。
 どうしてこう次から次へと問題が起きるんだ・・・・・・。
 頭を抱えていると、息を切らせたヒョロ長の団員が部屋の中へ飛び込んできた。
 その様子から、あまり喜ばしくない報せのようだ。

「ちゅ、中ボスさん! サラサ嬢とソフィア嬢が・・・・・・つ、連れて行かれちまいました!」
「そうか・・・・・・詳しく話してくれ。」

 団員の話によると、買い物中だった二人が十人近い男に囲まれ、暫く言い争った後に渋々といった様子で男達に付いて行ったらしい。
 まぁ、どのみち腕力じゃ適わないのだから仕方が無い。

「てめぇっ! それを黙って見てやがったのか!?」
「ヒィッ! す、すいやせん!」

「よせ、ハゲ。私がそう命じたんだ。」
「なんだとっ!? どうしてんな事を・・・・・・!」

「助けに出たところで多勢に無勢だろう。結果は変わらない。それより報せが遅れる方が問題だ。」
「ぐっ・・・・・・そ、それは・・・・・・。」

「良くやってくれたな。下がって休んでてくれ。」
「へ、へい! 失礼しやす!」

 部下を下がらせた中ボスが再び口を開く。

「団長、如何致しましょう?」
「決まってんじゃねぇか! ヤツらンとこ殴り込むんだよ! ね、団長!?」

 俺の代わりに鼻息を荒くして答えるハゲ。

「私一人で行くから、みんなはお留守番ね。」
「よぉし! そうと決まりゃ早速準備・・・・・・・・・・・・って、そりゃないですぜ団長!? 確かに団長の足下にも及びませんが、露払いくらいならオレだって出来まさぁ!」

「いや、そうじゃなくて・・・・・・。」

 やれやれと額を押さえながら、中ボスが俺の言葉を引き継ぐ。

「いいか、ハゲ。いま私達が奴らと派手に事を構えてしまっては、街の人からの心象が悪くなってしまうだろう。」
「それがどうしたってんだ!」

「私達は騎士団の傘下に入ったんだ。無闇矢鱈と暴れて泥を付ける訳にはいかないと、いつも言っている筈だ。」
「そ、そりゃあそうだが・・・・・・。ンな事言ってたら何も出来ねぇだろうが!」

 ハゲの言葉にも一理あるが、街の人からの信頼を得るには致し方ない。
 最低でももっとマシな格好をして、きちんとした言葉遣いが出来るようにならないとな。・・・・・・なるのか?
 今みたいな状態で他所の組とドンパチしてしまえば、「結局コイツらは何も変わっていない」と見られかねないのだ。

「だったら、お嬢さん達はどうすんですかい? まさか、見捨てるってんじゃ・・・・・・!」
「いや、だからさっき言ったでしょ。」

 詰め寄って来たむさ苦しい禿頭をグイッと押し退けて言葉を続ける。

「あちらにお邪魔してる私の奴隷を、私が迎えに行くってさ。」
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