灰の瞳のレラ

チゲン

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第13幕

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 美味しいご飯と甘いお菓子があれば、デイジアは満足だった。
 男は、自分に飯をおごってくれる便利な道具だ。体を許すだけでご馳走にありつけるのだから、こんなに効率のいいものはない。
 だがいまだに、あのカボチャのタルトを超える味には出会えていなかった。
「結局、レラの作ったやつが一番近いんだよなぁ」
 だからつい定期的に所望しょもうしてしまう。姉が、あのタルトを毛嫌いしていることを知っていても。
「お姉ちゃんも、もうちょっと大人になればいいのに。利用できるものは利用してさ」
 男と同じように、と小声で続ける。
 確かに十年前の経緯いきさつを考えれば、レラにつらく当たるシンシアの心情は、理解できなくもない。ただ、あそこまでヒステリーを起こさなくても、とは思う。
「あたしもあんまり覚えてないから、なのかなあ」
 すると、横で眠っていた男が目を覚ましたらしく、裸身のデイジアに抱きついてきた。
「もう、またあ?」
 昼からお盛んなことだ。デイジアは他人事のように思って、苦笑いした。
「それより、運動したらお腹空いたんだけど」
 さあ、この男はどんなご馳走を振る舞ってくれるだろう。
 あたしを、カボチャのタルトのように甘やかしてくれるかしら。
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