12 / 88
第二章 匂いだけでいかせてあげる
(11)匂いだけでいかせてあげる その1
しおりを挟む
爽やかな風が吹く気持ちのいい朝だった。
暖かな布団に包まれて微睡むふたり。
枕元にあった克也と愛子のスマホが何度も唸りをあげていたが、ふたりはまったく気づかずに幸せな夢を見ていた。穏やかに時間が刻々と過ぎてゆく。
ピンポーン……、ピンポンピンポンピンポン
「うわぁああああっ!」
何事かと、さすがに克也は飛び起きる。玄関からドンドンドン! と、けたたましい音もする。
「なんだなんだ!?」
周りの状況がまだよく分からない克也。愛子もさすがに起きる。
「んん、すごい音だけど、どうしたのぉ……」
眼を擦りながら克也に問いかける愛子。
「んー、なんだろうねぇ……」
まだ寝ぼけてる克也。
外から何やら声まで聞こえる。
「こらー! ふたりともーー! 早く起きろーー!」
「この声は……、優菜さん?」
とりあえず克也はドアを開けに玄関へ出ると……、紺色のOLスーツを身にまとった優菜が腕を組み、仁王立ちして待ち構えていた。
「か・つ・や・くん? ようやくお目覚め?」
優菜は引きつった笑顔で、背後に紅く燃える炎のオーラを放っていた。
「ん……、ん……、あぁ……、あぁ!?」
克也はようやく現実に戻ってきた。そして下半身に違和感を感じて下を見ると、何も身に着けていないことにびっくりする。慌てて克也は股間を押さえ、情けない姿のまま、上目遣いで優菜を見上げる。
「あの……、確認していいですか?」
克也はおそるおそる優菜に問う。
「どうぞ。何なりと」
優菜の冷たい声が一層恐怖心を煽る。
「あの……、今日って何曜日でしたっけ?」
その恐ろしい答えを聞く前に、後ろから妻の悲鳴があがる。
「えええぇーーーっ! もうこんな時間なの? 克也さん! 大変よ!」
愛子がバタバタしながら寝間着のままで玄関に来る。
「あ……、優菜、おはよう」
「お・は・よ・う、愛子。でもね、愛子、その挨拶間違ってるの、気がついてるよね?」
「あ……、あはは……」
炎のオーラをまとっている優菜を目にして、愛子は苦笑いしかできない。
「克也くん、さっき、いい質問してたわね。耳の穴をかっぽじってよーく聞きなさい。今日は、げ・つ・よ・う・び。そして、今は、もうお昼過ぎよ」
克也はその場で崩れ落ちて灰になっていく。
「あは……、あはは……」
「克也さん、ごめんね。起こしてあげられなかった……」
「いいんだよ。僕が悪いんだ……」
「克也さん……」
ふたりが泣きそうになりながら落ち込んでいるのを見かねた優菜は、ため息を、ふぅーっ、とついてから話を切り出す。
「まぁ、こうなることはある程度予想ついてたから、会社の方にはうまく言ってあるわ。出勤できる時間になったら私に連絡ちょうだい。いい? 今日のことは貸しよ」
「ゆうなぁぁーーー、ありがとぉーーー!」
「優菜姐さんっ、ほんっっっとうに恩に切ります。このご恩は一生忘れません!」
ふたりは優菜にすがりつきながら、何度も頭を下げる。
「もうっ。ちょっと心配したんだからね。何度ふたりにコールしても出ないしさ。部長に営業回りしてくるって言って、お昼も抜いてここまで来たんだからっ。予想通りのことで逆にほっとしたよ。それより、早く支度しなさい」
「分かりましたっ!」
それから二時間後、「家庭の急用で遅刻」という体で克也は無事に出勤する。
その夜に早速優菜への借りを返すために克也が夕食を奢り、翌朝はホテルからの出勤が確定になったことは言うまでもなく、愛子も泣く泣く飲まなければならないことは重々承知だった、筈なのだが……。
克也と優菜が泊まるホテルには、なぜか愛子も呼び出されていた。
暖かな布団に包まれて微睡むふたり。
枕元にあった克也と愛子のスマホが何度も唸りをあげていたが、ふたりはまったく気づかずに幸せな夢を見ていた。穏やかに時間が刻々と過ぎてゆく。
ピンポーン……、ピンポンピンポンピンポン
「うわぁああああっ!」
何事かと、さすがに克也は飛び起きる。玄関からドンドンドン! と、けたたましい音もする。
「なんだなんだ!?」
周りの状況がまだよく分からない克也。愛子もさすがに起きる。
「んん、すごい音だけど、どうしたのぉ……」
眼を擦りながら克也に問いかける愛子。
「んー、なんだろうねぇ……」
まだ寝ぼけてる克也。
外から何やら声まで聞こえる。
「こらー! ふたりともーー! 早く起きろーー!」
「この声は……、優菜さん?」
とりあえず克也はドアを開けに玄関へ出ると……、紺色のOLスーツを身にまとった優菜が腕を組み、仁王立ちして待ち構えていた。
「か・つ・や・くん? ようやくお目覚め?」
優菜は引きつった笑顔で、背後に紅く燃える炎のオーラを放っていた。
「ん……、ん……、あぁ……、あぁ!?」
克也はようやく現実に戻ってきた。そして下半身に違和感を感じて下を見ると、何も身に着けていないことにびっくりする。慌てて克也は股間を押さえ、情けない姿のまま、上目遣いで優菜を見上げる。
「あの……、確認していいですか?」
克也はおそるおそる優菜に問う。
「どうぞ。何なりと」
優菜の冷たい声が一層恐怖心を煽る。
「あの……、今日って何曜日でしたっけ?」
その恐ろしい答えを聞く前に、後ろから妻の悲鳴があがる。
「えええぇーーーっ! もうこんな時間なの? 克也さん! 大変よ!」
愛子がバタバタしながら寝間着のままで玄関に来る。
「あ……、優菜、おはよう」
「お・は・よ・う、愛子。でもね、愛子、その挨拶間違ってるの、気がついてるよね?」
「あ……、あはは……」
炎のオーラをまとっている優菜を目にして、愛子は苦笑いしかできない。
「克也くん、さっき、いい質問してたわね。耳の穴をかっぽじってよーく聞きなさい。今日は、げ・つ・よ・う・び。そして、今は、もうお昼過ぎよ」
克也はその場で崩れ落ちて灰になっていく。
「あは……、あはは……」
「克也さん、ごめんね。起こしてあげられなかった……」
「いいんだよ。僕が悪いんだ……」
「克也さん……」
ふたりが泣きそうになりながら落ち込んでいるのを見かねた優菜は、ため息を、ふぅーっ、とついてから話を切り出す。
「まぁ、こうなることはある程度予想ついてたから、会社の方にはうまく言ってあるわ。出勤できる時間になったら私に連絡ちょうだい。いい? 今日のことは貸しよ」
「ゆうなぁぁーーー、ありがとぉーーー!」
「優菜姐さんっ、ほんっっっとうに恩に切ります。このご恩は一生忘れません!」
ふたりは優菜にすがりつきながら、何度も頭を下げる。
「もうっ。ちょっと心配したんだからね。何度ふたりにコールしても出ないしさ。部長に営業回りしてくるって言って、お昼も抜いてここまで来たんだからっ。予想通りのことで逆にほっとしたよ。それより、早く支度しなさい」
「分かりましたっ!」
それから二時間後、「家庭の急用で遅刻」という体で克也は無事に出勤する。
その夜に早速優菜への借りを返すために克也が夕食を奢り、翌朝はホテルからの出勤が確定になったことは言うまでもなく、愛子も泣く泣く飲まなければならないことは重々承知だった、筈なのだが……。
克也と優菜が泊まるホテルには、なぜか愛子も呼び出されていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる