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第四章 花のお姉さん
(33)花のお姉さん その2-3
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「――と、いうことで、やって参りました」
綾女は雄哉の座っていたソファー席に座り、雄哉が横にずれる形になると、克也と過ごしていた時間のことを、ここに来た理由と共に話していた。
「ってことって、あなた、克也くん誘惑してどうするつもりだったのよ!」
いつの間にか優菜と席を交代していた真奈美が、一番遠くから声を張り上げる。
「むー、真奈美がいつもやってることやろうとしただけですぅー。真奈美こそなんであのタイミングで克也くんといること知ってたのよっ」
綾女が負けじと真奈美に向かって牙をむく。
「克也くんと愛子ちゃんのことは私の方がよーく知ってるのっ。悪い虫がつきそうな予感が、ピピっ、としたのよっ」
「ひっどいっ! たまたま駅で会ってお茶しようと思っただけだったのに」
真奈美と綾女が、大声で張り合うのに驚きながら、克也と愛子が止めに入る。
「いやいや、おふたり、ここは落ち着いて……。問題が解決したところなので」
「そうそう、克也さん魅力的なのは、仕方ないことだから……ね」
克也も愛子もふたりをなだめようと必死だ。そんな健気なふたりを真奈美と綾女は見て、落ち着きを取り戻す。
「やっぱり、ふたりは天使よねー」
真奈美はため息をつきながら二人を見る。
「わかるわかる。うちにも可愛い天使が一人いるから」
綾女が頷きながら真奈美に続く。
「え、可愛い天使って、お子さんですか?」
事情をあまり知らない雄哉が綾女に聞く。
「え? ちがうよぉ。まぁ、子供いたら、そう言うとは思うけど」
綾女が手を振りながら雄哉の言を否定する。
「今日はタクミくん、どうしてるんですか?」
愛子が、綾女に天使と呼んだ子のことを聞く。
「今日は、おとなしく帰ったなぁ。珍しいって思ったんだけど。あの子も、色々鋭いからねー」
「機会あったらタクミくんも連れてきてください。ぜひ」
「うん。愛子ちゃんがそう言ってたって、伝えておくよ」
愛子と綾女が会話しているのを、隣でじっと見ていた和歌子がここで切り出す。
「えっと……、もしかするとなんですが、アヤメさんって『シェリーフルール』にいたことが……?」
「え? 私のこと知ってるんだ。しかもあの店の……」
「綾女さん、『わかちゃん』のこと、覚えてないですか?」
愛子が綾女に記憶の助け舟を出す。
「ん、『わかちゃん』……、あ、ほっぺにいつも小麦粉つけて来てた子だ!」
「あはは……、たしかにあの頃、実家を手伝ってすぐにお姉さまに会いに行ってましたから……」
「ん、思い出したよ。愛子ちゃんにいつもついて遊んでた子だ。そうかぁ。あの、わかちゃんかぁ」
「と、いうことは、私は『女神さま』にも会えてしまったのですね……」
和歌子が目を輝かせながら綾女を見つめる。
「え? め、女神……さま?」
綾女は突拍子もない単語に、目が点になる。そして真奈美が思わず、ぷっ、と吹き出す。
「ちょっとっ、真奈美、失礼よ」
「で、その『女神さま』っていうのは……」
危険を察知して、雄哉がすかさず和歌子の説明を求めにいく。和歌子は一同を見渡してから、コホンと咳をして落ち着き、記憶を辿って説明を始める。
「えっとですね……、シェリーフルールには、お客さんの間で語り継がれてきた、幾つかの伝説があるんですよ。その中でも不思議とされていた伝説が女神様なんです。きれいなお姉さんがたまに店にいるね。って話から始まって、見たことあるって子があまりいなくて、見たことある子が口を揃えて『きれいなお姉さん』って言うことからですね……、噂が広まって……。って感じです。はい」
「あー、お店にあまり出てなかった話の裏は簡単だけど、わかちゃんの夢壊しちゃうからやめておくよ」
「わたしも知ってますけど、それは言わないほうが、わかちゃんのためですね」
綾女と愛子は口を揃えて苦笑いする。
「でも、すごい出会いだねー。わかちゃんまで会えるなんて、どんな偶然重なってもないよね」
「最近こんなことばっかり続くんで、私、幸せすぎてもう、おなかいっぱいなんですー」
愛子が頬に両手を当てながら笑顔を振りまく。
「そんな愛子から、みんなは幸せを分けてもらってる、って思ってるんだよ」
優菜が愛子の顔を見ながら微笑む。
「だから愛子のためならなんでもしたいって人がどんどん集まるんだね」
克也も続けて言葉を紡ぐ。
「まぁ、ふたりは不幸な過去があるからね。もっと幸せになって欲しいよ。うん」
「でも、おもちゃにはさせてもらうけどねー」
「じゃ、わたしも混ざっていいよねー」
「だめー。まだ克也くんたちは渡せないー」
「えええー? なんでよぅー!」
楽しい大人たちの会話は、深夜になっても続くのだった。
綾女は雄哉の座っていたソファー席に座り、雄哉が横にずれる形になると、克也と過ごしていた時間のことを、ここに来た理由と共に話していた。
「ってことって、あなた、克也くん誘惑してどうするつもりだったのよ!」
いつの間にか優菜と席を交代していた真奈美が、一番遠くから声を張り上げる。
「むー、真奈美がいつもやってることやろうとしただけですぅー。真奈美こそなんであのタイミングで克也くんといること知ってたのよっ」
綾女が負けじと真奈美に向かって牙をむく。
「克也くんと愛子ちゃんのことは私の方がよーく知ってるのっ。悪い虫がつきそうな予感が、ピピっ、としたのよっ」
「ひっどいっ! たまたま駅で会ってお茶しようと思っただけだったのに」
真奈美と綾女が、大声で張り合うのに驚きながら、克也と愛子が止めに入る。
「いやいや、おふたり、ここは落ち着いて……。問題が解決したところなので」
「そうそう、克也さん魅力的なのは、仕方ないことだから……ね」
克也も愛子もふたりをなだめようと必死だ。そんな健気なふたりを真奈美と綾女は見て、落ち着きを取り戻す。
「やっぱり、ふたりは天使よねー」
真奈美はため息をつきながら二人を見る。
「わかるわかる。うちにも可愛い天使が一人いるから」
綾女が頷きながら真奈美に続く。
「え、可愛い天使って、お子さんですか?」
事情をあまり知らない雄哉が綾女に聞く。
「え? ちがうよぉ。まぁ、子供いたら、そう言うとは思うけど」
綾女が手を振りながら雄哉の言を否定する。
「今日はタクミくん、どうしてるんですか?」
愛子が、綾女に天使と呼んだ子のことを聞く。
「今日は、おとなしく帰ったなぁ。珍しいって思ったんだけど。あの子も、色々鋭いからねー」
「機会あったらタクミくんも連れてきてください。ぜひ」
「うん。愛子ちゃんがそう言ってたって、伝えておくよ」
愛子と綾女が会話しているのを、隣でじっと見ていた和歌子がここで切り出す。
「えっと……、もしかするとなんですが、アヤメさんって『シェリーフルール』にいたことが……?」
「え? 私のこと知ってるんだ。しかもあの店の……」
「綾女さん、『わかちゃん』のこと、覚えてないですか?」
愛子が綾女に記憶の助け舟を出す。
「ん、『わかちゃん』……、あ、ほっぺにいつも小麦粉つけて来てた子だ!」
「あはは……、たしかにあの頃、実家を手伝ってすぐにお姉さまに会いに行ってましたから……」
「ん、思い出したよ。愛子ちゃんにいつもついて遊んでた子だ。そうかぁ。あの、わかちゃんかぁ」
「と、いうことは、私は『女神さま』にも会えてしまったのですね……」
和歌子が目を輝かせながら綾女を見つめる。
「え? め、女神……さま?」
綾女は突拍子もない単語に、目が点になる。そして真奈美が思わず、ぷっ、と吹き出す。
「ちょっとっ、真奈美、失礼よ」
「で、その『女神さま』っていうのは……」
危険を察知して、雄哉がすかさず和歌子の説明を求めにいく。和歌子は一同を見渡してから、コホンと咳をして落ち着き、記憶を辿って説明を始める。
「えっとですね……、シェリーフルールには、お客さんの間で語り継がれてきた、幾つかの伝説があるんですよ。その中でも不思議とされていた伝説が女神様なんです。きれいなお姉さんがたまに店にいるね。って話から始まって、見たことあるって子があまりいなくて、見たことある子が口を揃えて『きれいなお姉さん』って言うことからですね……、噂が広まって……。って感じです。はい」
「あー、お店にあまり出てなかった話の裏は簡単だけど、わかちゃんの夢壊しちゃうからやめておくよ」
「わたしも知ってますけど、それは言わないほうが、わかちゃんのためですね」
綾女と愛子は口を揃えて苦笑いする。
「でも、すごい出会いだねー。わかちゃんまで会えるなんて、どんな偶然重なってもないよね」
「最近こんなことばっかり続くんで、私、幸せすぎてもう、おなかいっぱいなんですー」
愛子が頬に両手を当てながら笑顔を振りまく。
「そんな愛子から、みんなは幸せを分けてもらってる、って思ってるんだよ」
優菜が愛子の顔を見ながら微笑む。
「だから愛子のためならなんでもしたいって人がどんどん集まるんだね」
克也も続けて言葉を紡ぐ。
「まぁ、ふたりは不幸な過去があるからね。もっと幸せになって欲しいよ。うん」
「でも、おもちゃにはさせてもらうけどねー」
「じゃ、わたしも混ざっていいよねー」
「だめー。まだ克也くんたちは渡せないー」
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