【最弱】の召喚術師【最強】の軍勢につき

雪雪ノ雪

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第一部 王国編 第一章 迷宮都市インゼル

乗り換え

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 ニーナに、この馬車がいかにカッコイイのかを解いた後の、1週間はとても楽しかった。

 特にシーナさんとの会話が、弾むようになった。

 俺はこの乗っている馬車について、ニーナは料理について話すようになり、最初のような無口のシーナさんはどこかへと行ってしまった。

 この1週間で、友人ぐらいにはなれたと思う。シーナさんも、俺たちの呼び方がグレイ様、ニーナ様からグレイさん、ニーナちゃんに変わってたし。

 それでも、お互いの顔のことについて触れなかったのは、俺も、彼女も、知られたくないと思っていたからだろう。

 タブーには触れない、ちゃんと空気の読める人だったから尚更、俺もニーナもシーナさんを気に入ったのかもしれない。

 しかし、楽しい旅も終わりを迎える。

 元々、任務で来ているのだ。しょうがない。

 シーンズ川の第3橋に俺達は、到着した。

 シーンズ川は、魔王国と王国を分ける境界線のような役割を持っている。

 王国側は知らないが、少なくとも魔王国ではそういう認識だ。

 それは、王国の3分の1を占領していても変わらない。王国を倒していないのだから。

 シーンズ川に掛かっている橋を渡ると、そこには、もうひとつの馬車が止まっていた。

 俺たちが乗ってきた、ロマンの馬車ではなく、生きた馬が引いている人間国家で使われる一般的な馬車だ。

 引馬の面倒を見ていた男性が、こちらに気づき、近づいてくる。

「所属と名前を」

 シーナさんが警戒した声を上げる。

 魔族だと分かっているはずだが、何らかの方法で誤魔化している可能性も無くはない。

 警戒するのは、当たり前だった。

「第7軍所属、ラオルフと申します。天は魔を穿ち、魔は地を穿つ」

 自己紹介の後に言ったのは、おそらく合言葉だ。

 俺達には伝えられてないので、それがあっているかどうかは分からない。

 シーナさんを見ると、警戒は解いているので、間違いなく味方なのだろう。

「私はシーナです。宰相から話は聞いていますね?」

「はい。グレイ様とニーナ様を、迷宮都市インゼルにお連れすることだと聞いております」

「グレイさん、ニーナちゃん、私の仕事はここまでです。魔王国に戻ったら、またお話しましょう」

 馬車から降り、俺たちに向き合うシーナさんに俺達は笑顔で

「「もちろん」」

 と、応える。

「任務が終わったら、屋敷に招くよ。その時ゆっくり話そう」

「シーナさんもお仕事頑張ってください」

「はい!!お二人共、お元気で!!」

 そう言って別れようとするが、俺はひとつ忘れていたことがあった。

「あ、魔王陛下に連絡しなきゃ」

 危ない危ない。すっかり忘れていた。このまま連絡しないと、流石に怒られてしまう。.......主に宰相からだが。

「流石マスターです。すっかり忘れてました」

 ニーナも忘れてたんかい!!たまに抜けてるところがあるのは、ニーナの可愛いところだ。

 俺は、マジックバックから宝珠を取り出すと、魔力を込める。

「あーあー、ステステ。聞こえてますかー」

 俺は、宝珠に向かって話しかける。宝珠は魔王陛下の部屋に置かれているので、出てくるとしたら魔王陛下か、その付き人だと思うが......

『おぉ!!グレイかのぉ?その声は。さっさとニーナに代わって欲しいのぉ』

 宝珠から帰ってきた言葉に、思わずイラッとしたが、こんな事でキレていれば話が進まない。

 俺は大人なのだ。落ち着け落ち着け。

「ニーナは、お前が嫌いだから出たくないんだと。分かったらその口閉じて報告だけ聞いてろ」

 あ、しまった。ついつい口から出てしまった。

 とんでもなく不敬な発言だろう。

 シーナさんやラオルフさんが聞いているが、まぁ非公式の場だし、宰相いないしいいだろう。

 今は宝珠を見てて顔が見えないが(1人はフード被ってるし)、間違いなく驚いているだろう。

 魔王陛下に、こんな口の利き方する奴を俺以外に見たことないしな。

『ニーナは妾の事を好いておるわ、たわけ。分かったらさっさと代われ』

「あーそうか、悪いな言い方を変えよう。俺より嫌われているの方か良かったか?」

『そんなこと言ったら、この世界の誰一人として、お主より嫌われている事になるがのぉ......』

「マスター、話が進まないので代わってください下らねぇ言い争いしてんじゃねぇよこの馬鹿共

「『..........』」

 ニーナに怒られ、黙りこくる俺と魔王陛下。

 こういう時のニーナに逆らって、いい事などひとつも無い。

 俺は大人しくニーナに宝珠を渡す。

「お姉ちゃん代わったよ」

『お、おう........』

 余りにもドスの聞いた声で、魔王陛下に話しかけたものだから、魔王陛下がドン引きしている。

 それだけ、言い争いが不毛だったのだろう。

『そ、それで?乗り換えの場所には、ちゃんと着いたかのぉ?その為の報告じゃろ?』

「そうだよお姉ちゃん。今からは、連絡とる手段が手紙になるからね」

『分かっておる。幽霊鳥ゴーストバードで送るようにするからのぉ。そちらから何がある場合は、グレイの召喚獣て送るのじゃ』

 幽霊鳥ゴーストバードはその名の通り、幽霊の鳥だ。種類は様々だが、疲労を一切感じず夜間も飛ぶことが出来るため、伝書鳥としてはかなり優秀なのだ。

 俺の場合は、幽霊鳥ゴーストバードでは無いが、一応空を飛ぶ魔物を召喚できる。.......弱いが。

 こうして報告と確認をしっかりと済ませた俺達は、今度はラオルフさんの御者する馬車に乗り込み、迷宮都市インゼルを目指すのだった。
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