16 / 41
第一部 王国編 第一章 迷宮都市インゼル
乗り換え
しおりを挟む
ニーナに、この馬車がいかにカッコイイのかを解いた後の、1週間はとても楽しかった。
特にシーナさんとの会話が、弾むようになった。
俺はこの乗っている馬車について、ニーナは料理について話すようになり、最初のような無口のシーナさんはどこかへと行ってしまった。
この1週間で、友人ぐらいにはなれたと思う。シーナさんも、俺たちの呼び方がグレイ様、ニーナ様からグレイさん、ニーナちゃんに変わってたし。
それでも、お互いの顔のことについて触れなかったのは、俺も、彼女も、知られたくないと思っていたからだろう。
タブーには触れない、ちゃんと空気の読める人だったから尚更、俺もニーナもシーナさんを気に入ったのかもしれない。
しかし、楽しい旅も終わりを迎える。
元々、任務で来ているのだ。しょうがない。
シーンズ川の第3橋に俺達は、到着した。
シーンズ川は、魔王国と王国を分ける境界線のような役割を持っている。
王国側は知らないが、少なくとも魔王国ではそういう認識だ。
それは、王国の3分の1を占領していても変わらない。王国を倒していないのだから。
シーンズ川に掛かっている橋を渡ると、そこには、もうひとつの馬車が止まっていた。
俺たちが乗ってきた、ロマンの馬車ではなく、生きた馬が引いている人間国家で使われる一般的な馬車だ。
引馬の面倒を見ていた男性が、こちらに気づき、近づいてくる。
「所属と名前を」
シーナさんが警戒した声を上げる。
魔族だと分かっているはずだが、何らかの方法で誤魔化している可能性も無くはない。
警戒するのは、当たり前だった。
「第7軍所属、ラオルフと申します。天は魔を穿ち、魔は地を穿つ」
自己紹介の後に言ったのは、おそらく合言葉だ。
俺達には伝えられてないので、それがあっているかどうかは分からない。
シーナさんを見ると、警戒は解いているので、間違いなく味方なのだろう。
「私はシーナです。宰相から話は聞いていますね?」
「はい。グレイ様とニーナ様を、迷宮都市インゼルにお連れすることだと聞いております」
「グレイさん、ニーナちゃん、私の仕事はここまでです。魔王国に戻ったら、またお話しましょう」
馬車から降り、俺たちに向き合うシーナさんに俺達は笑顔で
「「もちろん」」
と、応える。
「任務が終わったら、屋敷に招くよ。その時ゆっくり話そう」
「シーナさんもお仕事頑張ってください」
「はい!!お二人共、お元気で!!」
そう言って別れようとするが、俺はひとつ忘れていたことがあった。
「あ、魔王陛下に連絡しなきゃ」
危ない危ない。すっかり忘れていた。このまま連絡しないと、流石に怒られてしまう。.......主に宰相からだが。
「流石マスターです。すっかり忘れてました」
ニーナも忘れてたんかい!!たまに抜けてるところがあるのは、ニーナの可愛いところだ。
俺は、マジックバックから宝珠を取り出すと、魔力を込める。
「あーあー、ステステ。聞こえてますかー」
俺は、宝珠に向かって話しかける。宝珠は魔王陛下の部屋に置かれているので、出てくるとしたら魔王陛下か、その付き人だと思うが......
『おぉ!!グレイかのぉ?その声は。さっさとニーナに代わって欲しいのぉ』
宝珠から帰ってきた言葉に、思わずイラッとしたが、こんな事でキレていれば話が進まない。
俺は大人なのだ。落ち着け落ち着け。
「ニーナは、お前が嫌いだから出たくないんだと。分かったらその口閉じて報告だけ聞いてろ」
あ、しまった。ついつい口から出てしまった。
とんでもなく不敬な発言だろう。
シーナさんやラオルフさんが聞いているが、まぁ非公式の場だし、宰相いないしいいだろう。
今は宝珠を見てて顔が見えないが(1人はフード被ってるし)、間違いなく驚いているだろう。
魔王陛下に、こんな口の利き方する奴を俺以外に見たことないしな。
『ニーナは妾の事を好いておるわ、たわけ。分かったらさっさと代われ』
「あーそうか、悪いな言い方を変えよう。俺より嫌われているの方か良かったか?」
『そんなこと言ったら、この世界の誰一人として、お主より嫌われている事になるがのぉ......』
「マスター、話が進まないので代わってください」
「『..........』」
ニーナに怒られ、黙りこくる俺と魔王陛下。
こういう時のニーナに逆らって、いい事などひとつも無い。
俺は大人しくニーナに宝珠を渡す。
「お姉ちゃん代わったよ」
『お、おう........』
余りにもドスの聞いた声で、魔王陛下に話しかけたものだから、魔王陛下がドン引きしている。
それだけ、言い争いが不毛だったのだろう。
『そ、それで?乗り換えの場所には、ちゃんと着いたかのぉ?その為の報告じゃろ?』
「そうだよお姉ちゃん。今からは、連絡とる手段が手紙になるからね」
『分かっておる。幽霊鳥で送るようにするからのぉ。そちらから何がある場合は、グレイの召喚獣て送るのじゃ』
幽霊鳥はその名の通り、幽霊の鳥だ。種類は様々だが、疲労を一切感じず夜間も飛ぶことが出来るため、伝書鳥としてはかなり優秀なのだ。
俺の場合は、幽霊鳥では無いが、一応空を飛ぶ魔物を召喚できる。.......弱いが。
こうして報告と確認をしっかりと済ませた俺達は、今度はラオルフさんの御者する馬車に乗り込み、迷宮都市インゼルを目指すのだった。
特にシーナさんとの会話が、弾むようになった。
俺はこの乗っている馬車について、ニーナは料理について話すようになり、最初のような無口のシーナさんはどこかへと行ってしまった。
この1週間で、友人ぐらいにはなれたと思う。シーナさんも、俺たちの呼び方がグレイ様、ニーナ様からグレイさん、ニーナちゃんに変わってたし。
それでも、お互いの顔のことについて触れなかったのは、俺も、彼女も、知られたくないと思っていたからだろう。
タブーには触れない、ちゃんと空気の読める人だったから尚更、俺もニーナもシーナさんを気に入ったのかもしれない。
しかし、楽しい旅も終わりを迎える。
元々、任務で来ているのだ。しょうがない。
シーンズ川の第3橋に俺達は、到着した。
シーンズ川は、魔王国と王国を分ける境界線のような役割を持っている。
王国側は知らないが、少なくとも魔王国ではそういう認識だ。
それは、王国の3分の1を占領していても変わらない。王国を倒していないのだから。
シーンズ川に掛かっている橋を渡ると、そこには、もうひとつの馬車が止まっていた。
俺たちが乗ってきた、ロマンの馬車ではなく、生きた馬が引いている人間国家で使われる一般的な馬車だ。
引馬の面倒を見ていた男性が、こちらに気づき、近づいてくる。
「所属と名前を」
シーナさんが警戒した声を上げる。
魔族だと分かっているはずだが、何らかの方法で誤魔化している可能性も無くはない。
警戒するのは、当たり前だった。
「第7軍所属、ラオルフと申します。天は魔を穿ち、魔は地を穿つ」
自己紹介の後に言ったのは、おそらく合言葉だ。
俺達には伝えられてないので、それがあっているかどうかは分からない。
シーナさんを見ると、警戒は解いているので、間違いなく味方なのだろう。
「私はシーナです。宰相から話は聞いていますね?」
「はい。グレイ様とニーナ様を、迷宮都市インゼルにお連れすることだと聞いております」
「グレイさん、ニーナちゃん、私の仕事はここまでです。魔王国に戻ったら、またお話しましょう」
馬車から降り、俺たちに向き合うシーナさんに俺達は笑顔で
「「もちろん」」
と、応える。
「任務が終わったら、屋敷に招くよ。その時ゆっくり話そう」
「シーナさんもお仕事頑張ってください」
「はい!!お二人共、お元気で!!」
そう言って別れようとするが、俺はひとつ忘れていたことがあった。
「あ、魔王陛下に連絡しなきゃ」
危ない危ない。すっかり忘れていた。このまま連絡しないと、流石に怒られてしまう。.......主に宰相からだが。
「流石マスターです。すっかり忘れてました」
ニーナも忘れてたんかい!!たまに抜けてるところがあるのは、ニーナの可愛いところだ。
俺は、マジックバックから宝珠を取り出すと、魔力を込める。
「あーあー、ステステ。聞こえてますかー」
俺は、宝珠に向かって話しかける。宝珠は魔王陛下の部屋に置かれているので、出てくるとしたら魔王陛下か、その付き人だと思うが......
『おぉ!!グレイかのぉ?その声は。さっさとニーナに代わって欲しいのぉ』
宝珠から帰ってきた言葉に、思わずイラッとしたが、こんな事でキレていれば話が進まない。
俺は大人なのだ。落ち着け落ち着け。
「ニーナは、お前が嫌いだから出たくないんだと。分かったらその口閉じて報告だけ聞いてろ」
あ、しまった。ついつい口から出てしまった。
とんでもなく不敬な発言だろう。
シーナさんやラオルフさんが聞いているが、まぁ非公式の場だし、宰相いないしいいだろう。
今は宝珠を見てて顔が見えないが(1人はフード被ってるし)、間違いなく驚いているだろう。
魔王陛下に、こんな口の利き方する奴を俺以外に見たことないしな。
『ニーナは妾の事を好いておるわ、たわけ。分かったらさっさと代われ』
「あーそうか、悪いな言い方を変えよう。俺より嫌われているの方か良かったか?」
『そんなこと言ったら、この世界の誰一人として、お主より嫌われている事になるがのぉ......』
「マスター、話が進まないので代わってください」
「『..........』」
ニーナに怒られ、黙りこくる俺と魔王陛下。
こういう時のニーナに逆らって、いい事などひとつも無い。
俺は大人しくニーナに宝珠を渡す。
「お姉ちゃん代わったよ」
『お、おう........』
余りにもドスの聞いた声で、魔王陛下に話しかけたものだから、魔王陛下がドン引きしている。
それだけ、言い争いが不毛だったのだろう。
『そ、それで?乗り換えの場所には、ちゃんと着いたかのぉ?その為の報告じゃろ?』
「そうだよお姉ちゃん。今からは、連絡とる手段が手紙になるからね」
『分かっておる。幽霊鳥で送るようにするからのぉ。そちらから何がある場合は、グレイの召喚獣て送るのじゃ』
幽霊鳥はその名の通り、幽霊の鳥だ。種類は様々だが、疲労を一切感じず夜間も飛ぶことが出来るため、伝書鳥としてはかなり優秀なのだ。
俺の場合は、幽霊鳥では無いが、一応空を飛ぶ魔物を召喚できる。.......弱いが。
こうして報告と確認をしっかりと済ませた俺達は、今度はラオルフさんの御者する馬車に乗り込み、迷宮都市インゼルを目指すのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる