「桜の下の禁じられたメロディ」

あらやん

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第5章: 卒業への軌跡 - それぞれの道へ

話19:消えた・・・

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3日が経過し、奏の意識が戻ったという連絡が一向に来ない。椎名は心配になり、再び病院を訪れることに決めた。しかし、病室に到着すると、そこにはもぬけの殻が広がっていた。ベッドには奏の姿はなく、部屋には椎名が見覚えのある医療器具と医師の影響が残っているだけだった。

椎名は不安と混乱の中、看護師に奏の行方を尋ねた。「奏さんはもう退院されましたよ。親御さんが来てお迎えになりました」と看護師は答えた。

椎名は戸惑いながらも、どうして奏が突然退院したのか理解できない。彼女の親はなぜ連絡をくれないのか、椎名は電話をかけてみたが、何度か呼んでも出ないし、メッセージも既読にもならない。

心配と不安が募る中、椎名は奏の行方を知るべく、あらゆる手段を試みることを決意する。

椎名は一人暮らしをしている部屋に行き、預かっていた合鍵で中に入るが、部屋には誰もいなかった。再び奏に電話をかけるが、変わらず誰も出ない。どこに行ってしまったのか、椎名は理解できないまま、不安に打ちひしがれる。

泣き崩れる椎名の前に、突然、声をかける人が現れた。「椎名さん?」それは奏のアート教室の先生だった。見知った顔に、椎名は混乱した表情を浮かべながらも、先生に奏の行方を尋ねる。「先生、奏はどこにいるんですか?なぜ突然退院したのか、なんで連絡をくれないんです」と椎名は不安げに尋ねた。

先生は椎名の様子を見て、やや心配そうな表情を浮かべながらも、静かに話し始めた。

アート教室の先生も奏を探していたことを椎名は告げられ、椎名は心配と不安が入り混じった心境だった。先生も同じように奏の突然の消息に戸惑っているようであった。

椎名はアート教室の先生に、奏が最後にどんな状態であったかを詳しく説明した。「事故から回復し、意識も戻っていたはずなのに、突然退院して連絡もなく姿を消したんです。どうしてこんなことになったのか、全く理解できません」と椎名は心配そうに語った。

先生は椎名の話を静かに聞きながら、深く考え込んでいた。その表情からは、何かを思案していることがうかがえた。

先生は「奏が一人暮らしをしている理由って聞いた?」と問いかけた。その問いかけに椎名は戸惑いながらも、先生の言葉を聞き入れた。椎名は深く考えた後、「いえ、詳しいことは聞いていません。奏が一人暮らしをしている理由について、彼女自身からはあまり話を聞いたことがないんです」と答えた。

先生は椎名の言葉を聞いてうなずき、考え込むように立ちつくしていた。何かを思いめぐらせている様子だった。

奏の部屋の前で、アート教室の先生は椎名に言葉を投げかけた。「最近、勉強に力を入れなきゃいけないってことで、教室に来る機会が減っていたんだけど、たまに来るとき何か不安な顔をしていたのよね」。椎名はその言葉に驚いた表情を見せたが、先生は続けた。

「奏は普段は強気で自立心が強い子だから、なにか悩みがあっても自分で解決しようとするタイプなのよ。でも最近、その強がりがちょっと崩れているように感じていたの。」

椎名は深く考え込んだ。確かに最近の奏の様子は変わっていた。彼女はいつもよりも沈んでいるように見え、何かを抱えているような様子だった。しかし、奏が自分に何かを話してくれなかったことが不安だった。

「奏が何か心配事を抱えているのなら、私にも話してくれれば良かったのに」と椎名は心の中でつぶやいた。

先生は心配そうに椎名に微笑みながら言った。「もしかしたら学校に連絡が来るかもしれないから、明日もう一回聞いてみてね。」

椎名は先生の言葉を受け入れ、少し安心した表情を見せた。彼女は先生に感謝の意を述べ、「了解しました。明日学校で教師に聞いてみます」と答えた。

先生は優しく頷き、椎名を励ましの言葉で送り出した。椎名はその場を後にし、奏の行方についての不安を抱えながら帰宅することにした。明日、学校で奏に関する情報を得られることを願って、彼女は希望を胸に秘めて眠りについた。
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