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第1章 夏の始まりと塀の向こうの少年
第4-2話 ホームランバーと祭りの予感
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「はいよ、アイスね」
冷凍ショーケースの中にミルク味のホームランバーを見付けた綾香は取り出して「これを二本下さい」
祖母から預かった百円玉を渡して八十円のお釣りをもらって店を後にした。
学校の校庭を見ると、龍児は鉄棒に右手のし指一本だけでぶら下がっていて、その後はその指だけで大車輪をし出した。
綾香は目をまん丸くして近付くと龍児は回るのをやめて、ポンと目の前に飛んできた。
「龍児は本当に運動神経抜群なんだね?」
「まぁな」とそう言って得意げな顔をした龍児。
「暑いから食べようよ」と龍児に渡すと、彼はその銀紙の包みを器用に開けて、「食べ終わったら棒に当たりがあるんだよな」と言った。
「食べた事が無いのに知っているの?」と綾香。
「うん。知っているよ。何度も人間で生まれて来ては死んだのを繰り返していたから」と龍児。
「何でもお見通しなんだね」と綾香。
「まぁね。俺のは、外れたけど、綾香のにはホームランの焼き印が付いているから、もう一本貰って幸子に持って行くといいよ」と龍児。
小川に足を投げ出して二人で座って、「今更だけれど、現川村には遊べる施設がないよね」と綾香が言うと龍児がアイスを口から離した。
「現川祭りっていう、俺たち妖怪を祓うお祭りがあるんだよ」
それを聞いて綾香がアイスを口から離して、「えっ、そんなのがあるんだ?」
「妖怪を信じてない人間が増えてきているらしいけど、昔から続けている現川村の最大のイベントなんだ」
答えた龍児に綾香は尋ねた。
「お祭りか、屋台とかあるのかな?」
「俺が言うのも変だけど。あるよ。村の青年団のお兄さんたちが、綿飴とか金魚すくいとかやっているから」
「花火とかもあるのかな?」
「うん。毎年あるよ」
「花火! いいなあ! 行きたいな!」
由来こそ妖怪のお祓いのようだが、内容は普通の縁日みたいなもののようだ。
「いつやるの?」
「毎年、八月の最後の土曜日だよ」
「その頃、まだ綾香はこっちにいるよね。行けばいいんじゃない?」
「うん」
食べ終ると綾香の棒にホームランの焼き印が付いていた。
「龍の言った通りだ!」
「だろ。幸子に持って行くといいよ。俺に食べさせたのは内緒にしろよな」
それにしても龍は様々な魔法をもっているようだ。今回は透視だった。こんなド田舎でも綾香にとって楽しみができた。
商店に行って、焼き印の付いた棒を渡してもう一本貰って振り返ると、いつの間にか龍児の姿は消えていた。(あれっ)と見渡してみたが、どこにもいなかった。
◇◆◇
家に戻って台所で野菜を洗っている祖母にお釣りと溶けたアイスを渡すと祖母が「何買ったの?」と訊いた。
「ホームランバーだよ」と綾香。
「確が一本十円でねがった?」と祖母。
「そうだけど、二本買って食べたからお釣りは八十円だよ」と綾香。
「お祖母ぢゃんのはえがったども」と祖母。
「折角、買って来たんだから食べてよ」と綾香と優しい目で言った。
「どうもな」と祖母はにこやかに笑った。
「商店で教わったんだけど、現川祭りに行くことにしたよ」と綾香。
流しの中にザルに入った野菜に当たって撥ね返る水がキラキラと反射していた。
「えわね。がりっと妖怪あやがしお祓いしねどね。んだ。お祖母ぢゃんも浴衣着るがら綾香も着るべよ」と言って、祖母が目を輝かせて言った。
綾香も東京では浴衣を着る事もなかったので、「うん、着たい」と言いながら、龍児に可愛い姿を見せたかったからだ。
「そういえば、以前さ綾香のためさ縫っておいだんだ。白地さ赤や黄色のハイビスカスの模様染めであるめんけ浴衣があるのよ 綾香さ絶対似合うがら」
火が点いてしまった祖母は、洗っていた野菜を放り出して、浴衣を探しに廊下に出て小走りに部屋に向かって叫んだ。
「綾香、おいで」
「はい」
「着せでけるわね」
「良ぐ似合ってらでね」
「そうかな」と言って縁側に出ると、龍児が立っていた。
「あっ、龍児、さっきはなんで急に消えたの?」
「祭の日が分かったから、神社はもう準備で始まっているのかと思って、様子を見に行っていたんだ」
綾香はここに来た日に見た森の奥の神社だ。
「誰ど話してらの?」と祖母が。
「誰とも話してないよ」と綾香。
冷凍ショーケースの中にミルク味のホームランバーを見付けた綾香は取り出して「これを二本下さい」
祖母から預かった百円玉を渡して八十円のお釣りをもらって店を後にした。
学校の校庭を見ると、龍児は鉄棒に右手のし指一本だけでぶら下がっていて、その後はその指だけで大車輪をし出した。
綾香は目をまん丸くして近付くと龍児は回るのをやめて、ポンと目の前に飛んできた。
「龍児は本当に運動神経抜群なんだね?」
「まぁな」とそう言って得意げな顔をした龍児。
「暑いから食べようよ」と龍児に渡すと、彼はその銀紙の包みを器用に開けて、「食べ終わったら棒に当たりがあるんだよな」と言った。
「食べた事が無いのに知っているの?」と綾香。
「うん。知っているよ。何度も人間で生まれて来ては死んだのを繰り返していたから」と龍児。
「何でもお見通しなんだね」と綾香。
「まぁね。俺のは、外れたけど、綾香のにはホームランの焼き印が付いているから、もう一本貰って幸子に持って行くといいよ」と龍児。
小川に足を投げ出して二人で座って、「今更だけれど、現川村には遊べる施設がないよね」と綾香が言うと龍児がアイスを口から離した。
「現川祭りっていう、俺たち妖怪を祓うお祭りがあるんだよ」
それを聞いて綾香がアイスを口から離して、「えっ、そんなのがあるんだ?」
「妖怪を信じてない人間が増えてきているらしいけど、昔から続けている現川村の最大のイベントなんだ」
答えた龍児に綾香は尋ねた。
「お祭りか、屋台とかあるのかな?」
「俺が言うのも変だけど。あるよ。村の青年団のお兄さんたちが、綿飴とか金魚すくいとかやっているから」
「花火とかもあるのかな?」
「うん。毎年あるよ」
「花火! いいなあ! 行きたいな!」
由来こそ妖怪のお祓いのようだが、内容は普通の縁日みたいなもののようだ。
「いつやるの?」
「毎年、八月の最後の土曜日だよ」
「その頃、まだ綾香はこっちにいるよね。行けばいいんじゃない?」
「うん」
食べ終ると綾香の棒にホームランの焼き印が付いていた。
「龍の言った通りだ!」
「だろ。幸子に持って行くといいよ。俺に食べさせたのは内緒にしろよな」
それにしても龍は様々な魔法をもっているようだ。今回は透視だった。こんなド田舎でも綾香にとって楽しみができた。
商店に行って、焼き印の付いた棒を渡してもう一本貰って振り返ると、いつの間にか龍児の姿は消えていた。(あれっ)と見渡してみたが、どこにもいなかった。
◇◆◇
家に戻って台所で野菜を洗っている祖母にお釣りと溶けたアイスを渡すと祖母が「何買ったの?」と訊いた。
「ホームランバーだよ」と綾香。
「確が一本十円でねがった?」と祖母。
「そうだけど、二本買って食べたからお釣りは八十円だよ」と綾香。
「お祖母ぢゃんのはえがったども」と祖母。
「折角、買って来たんだから食べてよ」と綾香と優しい目で言った。
「どうもな」と祖母はにこやかに笑った。
「商店で教わったんだけど、現川祭りに行くことにしたよ」と綾香。
流しの中にザルに入った野菜に当たって撥ね返る水がキラキラと反射していた。
「えわね。がりっと妖怪あやがしお祓いしねどね。んだ。お祖母ぢゃんも浴衣着るがら綾香も着るべよ」と言って、祖母が目を輝かせて言った。
綾香も東京では浴衣を着る事もなかったので、「うん、着たい」と言いながら、龍児に可愛い姿を見せたかったからだ。
「そういえば、以前さ綾香のためさ縫っておいだんだ。白地さ赤や黄色のハイビスカスの模様染めであるめんけ浴衣があるのよ 綾香さ絶対似合うがら」
火が点いてしまった祖母は、洗っていた野菜を放り出して、浴衣を探しに廊下に出て小走りに部屋に向かって叫んだ。
「綾香、おいで」
「はい」
「着せでけるわね」
「良ぐ似合ってらでね」
「そうかな」と言って縁側に出ると、龍児が立っていた。
「あっ、龍児、さっきはなんで急に消えたの?」
「祭の日が分かったから、神社はもう準備で始まっているのかと思って、様子を見に行っていたんだ」
綾香はここに来た日に見た森の奥の神社だ。
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「誰とも話してないよ」と綾香。
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