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第1章 夏の始まりと塀の向こうの少年
第7-2話 姉弟の記憶と寺子屋の扉
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「この前、絶対に死んでいるよと言って、切り捨ててごめんネ!」と綾香。
「うん、そんな事、気にするなよ。生まれ変わりの姉貴に逢えたんだし、溺れているのまで助けられたんだからさ」と笑顔で応えた龍児。
トウモロコシの粒が、口の周りに張り付いていたので、綾香は「子供みたい」と笑いながら取った。
「美奈ちゃんと私が東京に帰ったら龍児はどうするの?」と綾香。
「長老に許しを貰って二人の傍に行くと思うよ。ただそれが直ぐかどうかや、今のこの姿かどうかは、わからないけどね」と龍児。
龍児は答えながら、途中で言葉を切ってトウモロコシをかじった。
「人間の美奈ちゃんと妖怪の龍児が、昔々に姉弟きょうだいだったと言う事が分かっただけでも、この夏休みに私と龍が逢えた重要な意味になると思うんだけど」と綾香は嬉しそうに。
「それはそうだよな。そう言う意味では本当に綾香に感謝しているよ」と龍児。
「あっ、美奈ちゃん、おはよう!」と綾香。
「綾ちゃん、龍児、おはよう!」と美奈子が縁側に座った。
「おはよう! 姉貴」と龍児。
「美奈ちゃんもトウモロコシ食べる?」と綾香。
「うん。ありがとう」と美奈子。
◇◆◇
綾香は、祖母がボランティアで営んでいる寺子屋の本棚を思い出した。
一般人の文献なんて中々ないと思うが、もしかしたら美奈子と龍児に繋がるヒントくらいならあるかもしれないと思ったからだ。
「そうだ! お祖母ちゃんが持っている本の中に記録があるかも!」
「本?」龍児は分かってはいたが、初めて知ったような素っ頓狂な声を上げた。
綾香は勢いよく捲し立てた。
「いつもいる家の隣に寺子屋があって、その片方の部屋に、壁いっぱいの大きな本棚があるの。お祖父ちゃんが集めた本の上にさらにお祖母ちゃんが集めた、小中学生の漫画や本の他に妖怪の伝説や宗教の本が沢山入っていて、妖怪坂にまつわる本もあった。昔のことが書いてある本なら、龍児や美奈子さんのことも何か書いてあるかもしれないから!」と綾香。
「そうか、当時にこの地に居た人だとしたら、本に書いてある可能性はあるよな」と龍児が言うと美奈子も頷いた。
綾香はすぐさま、玄関の引き戸を開けた。
「お祖母ちゃーん! 寺子屋の本棚の本、見てもいいかなー!?」
大声で尋ねながら龍児と美奈子も、綾香のあとに続いた。
◇◆◇
「ほれ、けれ~!」と祖母が言ってくれたので、綾香たちは早速、寺子屋に行った。
本棚の部屋に入った。
戸を開けた途端、「うわっ、凄い本の数よね! こんなにたくさんあったら、何年かかっても読み切れないわよね」と美奈子は本棚を見上げて感嘆した。
祖母は、どれでも好きなものを読んでいいと言ってくれた。こんなに沢山あったら、どれから読もうか迷ってしまう。しばらく目線を漂わせていたが、隣にいた龍児がさっさと一冊選んでバサッと広げた。龍児の行動を皮切りに綾香と美奈子もそっと本を手にした。
綾香もボロボロの表紙の本を一冊取ってみると、中は妖怪の図鑑のようなもので、筆で描かれた妖怪が丁寧に説明されていた。パラパラと捲ってみると、お化けのページもあった。ひと口にお化けと言っても、地域差や階級があるみたいで、読んでいると興味が湧いた。祖母がお化けや妖怪にハマるのも分かる気がしていた綾香だった。
「うん、そんな事、気にするなよ。生まれ変わりの姉貴に逢えたんだし、溺れているのまで助けられたんだからさ」と笑顔で応えた龍児。
トウモロコシの粒が、口の周りに張り付いていたので、綾香は「子供みたい」と笑いながら取った。
「美奈ちゃんと私が東京に帰ったら龍児はどうするの?」と綾香。
「長老に許しを貰って二人の傍に行くと思うよ。ただそれが直ぐかどうかや、今のこの姿かどうかは、わからないけどね」と龍児。
龍児は答えながら、途中で言葉を切ってトウモロコシをかじった。
「人間の美奈ちゃんと妖怪の龍児が、昔々に姉弟きょうだいだったと言う事が分かっただけでも、この夏休みに私と龍が逢えた重要な意味になると思うんだけど」と綾香は嬉しそうに。
「それはそうだよな。そう言う意味では本当に綾香に感謝しているよ」と龍児。
「あっ、美奈ちゃん、おはよう!」と綾香。
「綾ちゃん、龍児、おはよう!」と美奈子が縁側に座った。
「おはよう! 姉貴」と龍児。
「美奈ちゃんもトウモロコシ食べる?」と綾香。
「うん。ありがとう」と美奈子。
◇◆◇
綾香は、祖母がボランティアで営んでいる寺子屋の本棚を思い出した。
一般人の文献なんて中々ないと思うが、もしかしたら美奈子と龍児に繋がるヒントくらいならあるかもしれないと思ったからだ。
「そうだ! お祖母ちゃんが持っている本の中に記録があるかも!」
「本?」龍児は分かってはいたが、初めて知ったような素っ頓狂な声を上げた。
綾香は勢いよく捲し立てた。
「いつもいる家の隣に寺子屋があって、その片方の部屋に、壁いっぱいの大きな本棚があるの。お祖父ちゃんが集めた本の上にさらにお祖母ちゃんが集めた、小中学生の漫画や本の他に妖怪の伝説や宗教の本が沢山入っていて、妖怪坂にまつわる本もあった。昔のことが書いてある本なら、龍児や美奈子さんのことも何か書いてあるかもしれないから!」と綾香。
「そうか、当時にこの地に居た人だとしたら、本に書いてある可能性はあるよな」と龍児が言うと美奈子も頷いた。
綾香はすぐさま、玄関の引き戸を開けた。
「お祖母ちゃーん! 寺子屋の本棚の本、見てもいいかなー!?」
大声で尋ねながら龍児と美奈子も、綾香のあとに続いた。
◇◆◇
「ほれ、けれ~!」と祖母が言ってくれたので、綾香たちは早速、寺子屋に行った。
本棚の部屋に入った。
戸を開けた途端、「うわっ、凄い本の数よね! こんなにたくさんあったら、何年かかっても読み切れないわよね」と美奈子は本棚を見上げて感嘆した。
祖母は、どれでも好きなものを読んでいいと言ってくれた。こんなに沢山あったら、どれから読もうか迷ってしまう。しばらく目線を漂わせていたが、隣にいた龍児がさっさと一冊選んでバサッと広げた。龍児の行動を皮切りに綾香と美奈子もそっと本を手にした。
綾香もボロボロの表紙の本を一冊取ってみると、中は妖怪の図鑑のようなもので、筆で描かれた妖怪が丁寧に説明されていた。パラパラと捲ってみると、お化けのページもあった。ひと口にお化けと言っても、地域差や階級があるみたいで、読んでいると興味が湧いた。祖母がお化けや妖怪にハマるのも分かる気がしていた綾香だった。
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