85 / 92
第2章 静かなまなざしで、未来を見守る
第44-2話:支える仕組みと広がる信頼
しおりを挟む
龍児が立ち上げた「身体障害者専門の出張サービス」は、社長に相談した時点で即座に「良いことだ。すぐに始めろ!」と背中を押された。それ以降、龍児は社長に逐一報告をしながら、事業の構築に取り組んでいった。
繁忙期には、なんと一日で五百人もの女性スタッフが出張対応するまでに成長した。報酬体系を見直し、働く女性たちに見合った収入を保証したことで、彼女たち自身が知人や友人を紹介するようになり、自然と人材が集まっていった。広告を出す必要は一切なく、紹介による採用が倍々に広がっていった。
紹介者にはその都度ボーナスを支給し、面接や研修は姉・美奈子が育てたベテランスタッフの中から責任者を選び、彼女たちに任せた。面接、健康確認、サービスの指導まで、現場の女性たちが自ら担うことで、現実に即した教育体制が整っていった。
龍児は時折その様子を見学することはあったが、基本的には姉に全てを任せていた。かつて支配人から「店の商品には手を出すな」と繰り返し言われていた言葉が、龍児の耳に残っていた。支配人自身がそのルールを破っていたことを知っていたからこそ、龍児はその教訓を忠実に守った。
その姿勢が、働く女性たちからの信頼にも繋がっていた。誰かを特別扱いすれば、すぐに噂が広がる世界。龍児は、外国人クラブのママと社長の奥様との関係を続けていたが、それ以上の関係を広げることはせず、節度を保っていた。
身体障害者へのサービスは、健常者以上に細やかな配慮が求められる。体調や動きに気を配りながらの対応は大変だったが、実際の接客は穏やかで、負担が少ないこともあり、女性たちは一日に複数回の対応が可能だった。報酬も高く、働くことに喜びを感じる人が増えていった。
「人は喜びを感じるほど、仕事に前向きになる」
龍児はそう信じていた。十六歳から働き始め、給料が増えていくことに喜びを感じていた自身の経験が、その考えの根底にあった。人は年齢に関係なく、誰かに必要とされることで輝く——それを、ママや奥様の変化を通じて実感していた。
料金設定も工夫した。身体障害者の利用者には、健常者よりも低料金でサービスを提供し、働く女性たちには会社の取り分を減らして報酬の比率を高めた。これにより、モチベーションが上がり、サービスの質も向上していった。
売上は前支配人の時代と比べて、驚くほどの伸びを見せた。一年目で二倍、二年目で三倍、三年目で五倍、四年目には十倍にまで跳ね上がった。
地元の警察署長からも「社会貢献をしている会社」として評価され、表立った感謝状こそなかったが、裏で称賛の言葉を受けた。社長はその報告に大いに喜び、龍児の給料も年々引き上げられた。初年度で二十万円、二年目で三十万円、三年目で四十万円、四年目には五十万円に達した。
龍児はその成果を素直に喜びながらも、常に現場の声に耳を傾け、働く人々の気持ちを大切にする姿勢を崩さなかった。支える仕組みが、人を育て、信頼を生む——その実感が、彼の歩みをさらに確かなものにしていた。
繁忙期には、なんと一日で五百人もの女性スタッフが出張対応するまでに成長した。報酬体系を見直し、働く女性たちに見合った収入を保証したことで、彼女たち自身が知人や友人を紹介するようになり、自然と人材が集まっていった。広告を出す必要は一切なく、紹介による採用が倍々に広がっていった。
紹介者にはその都度ボーナスを支給し、面接や研修は姉・美奈子が育てたベテランスタッフの中から責任者を選び、彼女たちに任せた。面接、健康確認、サービスの指導まで、現場の女性たちが自ら担うことで、現実に即した教育体制が整っていった。
龍児は時折その様子を見学することはあったが、基本的には姉に全てを任せていた。かつて支配人から「店の商品には手を出すな」と繰り返し言われていた言葉が、龍児の耳に残っていた。支配人自身がそのルールを破っていたことを知っていたからこそ、龍児はその教訓を忠実に守った。
その姿勢が、働く女性たちからの信頼にも繋がっていた。誰かを特別扱いすれば、すぐに噂が広がる世界。龍児は、外国人クラブのママと社長の奥様との関係を続けていたが、それ以上の関係を広げることはせず、節度を保っていた。
身体障害者へのサービスは、健常者以上に細やかな配慮が求められる。体調や動きに気を配りながらの対応は大変だったが、実際の接客は穏やかで、負担が少ないこともあり、女性たちは一日に複数回の対応が可能だった。報酬も高く、働くことに喜びを感じる人が増えていった。
「人は喜びを感じるほど、仕事に前向きになる」
龍児はそう信じていた。十六歳から働き始め、給料が増えていくことに喜びを感じていた自身の経験が、その考えの根底にあった。人は年齢に関係なく、誰かに必要とされることで輝く——それを、ママや奥様の変化を通じて実感していた。
料金設定も工夫した。身体障害者の利用者には、健常者よりも低料金でサービスを提供し、働く女性たちには会社の取り分を減らして報酬の比率を高めた。これにより、モチベーションが上がり、サービスの質も向上していった。
売上は前支配人の時代と比べて、驚くほどの伸びを見せた。一年目で二倍、二年目で三倍、三年目で五倍、四年目には十倍にまで跳ね上がった。
地元の警察署長からも「社会貢献をしている会社」として評価され、表立った感謝状こそなかったが、裏で称賛の言葉を受けた。社長はその報告に大いに喜び、龍児の給料も年々引き上げられた。初年度で二十万円、二年目で三十万円、三年目で四十万円、四年目には五十万円に達した。
龍児はその成果を素直に喜びながらも、常に現場の声に耳を傾け、働く人々の気持ちを大切にする姿勢を崩さなかった。支える仕組みが、人を育て、信頼を生む——その実感が、彼の歩みをさらに確かなものにしていた。
0
あなたにおすすめの小説
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる