現(うつつ)の夢

しらかわからし

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第2章 静かなまなざしで、未来を見守る

第47話:社長就任と信頼の再構築

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一九七九年、昭和五十四年。龍児は三十歳で会社の代表取締役社長に就任した。前社長が病に倒れたことで、会社の舵取りを任されることになったのだ。

会長職には前社長の妻である西山冴子が就き、専務には娘の美香が就任した。美香は業界経験が浅く、龍児に対して何かと口を挟むようになったが、龍児は冷静に対応し、組織の安定を優先した。

社長就任と同時に、龍児は会社の税務と法務の見直しに着手した。業界の性質上、法のグレーゾーンに触れる業務も少なくなかったが、龍児は「だからこそ、法律は守るべきだ」と考えていた。病床に伏していた会長に進言し、予防法学の観点から、公認会計士、弁護士、そして警察OBを顧問として迎え入れた。

彼らの協力のもと、過去の事業内容を徹底的に精査。前社長が作っていた裏金も発見され、すぐに排除された。税務処理は透明性を重視し、節税は行うが、納税は正しく行う方針を貫いた。結果として、国税からの査察が入ることは一度もなく、会社の信用は大きく向上した。

龍児は、顧問たちの名誉を守るためにも、不正行為は一切許さなかった。その姿勢は、社内外からの信頼を集める要因となった。

さらに、都内および関東近県の警察署に定期的に挨拶に回り、業界との健全な関係構築にも努めた。そんな中、ある組織から「借金のカタに取った店舗の営業権を買ってほしい」という依頼が増えてきた。店舗は美容室、理容室、レストラン、和食店、風俗店など多岐にわたっていた。

龍児は、サービス業に限って買い取る方針を定め、事前に組織の代表者にその条件を伝えていた。もちろん、この方針も顧問の会計士と弁護士に相談し、会長にも報告した上で進めた。龍児は「この会社は預かっているもの。自分だけの判断では動かない」と常に自制を忘れなかった。

その頃、店舗を取り上げる手口は巧妙だった。店の内情を調べて弱みを見つけ、常連として近づき、夜の付き合いの中で数百万円を貸し込む。使い切った頃に「全額返せ」と迫り、返済できなければ営業権を奪うという流れだった。

龍児はその話を聞き、「確かに借りた側にも責任はあるが、家族まで巻き込まれるのはあまりにも酷だ」と感じた。そこで、店舗と家族ごと買い取り、店名はそのままに営業を継続。店主と家族には会社から給料を支給し、ローン返済を進めてもらった。全額返済が終わった時点で、店舗をそのまま返却するという仕組みを整えた。

この取り組みにより、店舗を失った店主や家族からも感謝され、組織側からも恨まれることはなかった。誰もが納得できる形で再出発を支援する——それが龍児の信念だった。

すべての関係者が納得し、支え合える仕組みを築くこと。それが、龍児が社長として最初に取り組んだ「信頼の再構築」だった。
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