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第1章 パラサイトな二人の人生模様
第10話 二重人格の自惚れ
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悟志には、二重人格的な側面があった。
夕方には週五時間だけピアノ教室で教え、昼間は週四回、音大を目指す浪人生の家庭教師をしていた。
さらに、特別に頼まれた中学生や高校生――音楽科志望の生徒たちを個別に指導し、高額な報酬を得ていた。
それだけで、月に五十万円近い収入になっていた。
この収入こそが、彼の自惚れの源だった。
「自分はできる男だ」――そう思い込み、周囲の評価を過剰に受け止め、ナルシスト的な思考に浸っていった。
将来は小学校の音楽教諭になりたい――そんな理想を語ってはいたが、そのための努力はほとんどしていなかった。
ただ高収入を得て、生徒や保護者から『先生、先生』と呼ばれ、甘い言葉に囲まれる日々に、心地よさを感じていた。
中には、母親から身体を求められることもあり、高級ホテルでルームサービスを取りながら密会することもあった。
その世界は、彼にとって『現実』ではなく、『逃避』だった。
一方、圭子はまるで違っていた。
介護士という仕事に誇りを持ち、帰宅後も本を読み、知識を深めていた。
今の施設は学ぶことが多く、施設長も厳しい。
それでも彼女は、「だからこそ、成長できる」と言っていた。
悟志は、彼女の働く施設にピアノ演奏で訪れた。
そのとき、彼女の仕事ぶりを目にした。
清潔感に満ち、利用者にも同僚にも、優しさを惜しみなく注いでいた。
その姿は、眩しいほどに輝いていた。
その瞬間、悟志の胸に、またあの苦しみが襲ってきた。
ドキドキというより、締め付けられるような痛み。
こんな素晴らしい女性が、自分と付き合ってくれている――
そう思うだけで、胸が苦しくなった。
それは、誇らしさではなく、劣等感だった。
つづく
夕方には週五時間だけピアノ教室で教え、昼間は週四回、音大を目指す浪人生の家庭教師をしていた。
さらに、特別に頼まれた中学生や高校生――音楽科志望の生徒たちを個別に指導し、高額な報酬を得ていた。
それだけで、月に五十万円近い収入になっていた。
この収入こそが、彼の自惚れの源だった。
「自分はできる男だ」――そう思い込み、周囲の評価を過剰に受け止め、ナルシスト的な思考に浸っていった。
将来は小学校の音楽教諭になりたい――そんな理想を語ってはいたが、そのための努力はほとんどしていなかった。
ただ高収入を得て、生徒や保護者から『先生、先生』と呼ばれ、甘い言葉に囲まれる日々に、心地よさを感じていた。
中には、母親から身体を求められることもあり、高級ホテルでルームサービスを取りながら密会することもあった。
その世界は、彼にとって『現実』ではなく、『逃避』だった。
一方、圭子はまるで違っていた。
介護士という仕事に誇りを持ち、帰宅後も本を読み、知識を深めていた。
今の施設は学ぶことが多く、施設長も厳しい。
それでも彼女は、「だからこそ、成長できる」と言っていた。
悟志は、彼女の働く施設にピアノ演奏で訪れた。
そのとき、彼女の仕事ぶりを目にした。
清潔感に満ち、利用者にも同僚にも、優しさを惜しみなく注いでいた。
その姿は、眩しいほどに輝いていた。
その瞬間、悟志の胸に、またあの苦しみが襲ってきた。
ドキドキというより、締め付けられるような痛み。
こんな素晴らしい女性が、自分と付き合ってくれている――
そう思うだけで、胸が苦しくなった。
それは、誇らしさではなく、劣等感だった。
つづく
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