泡のように、生きる

しらかわからし

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第1章 パラサイトな二人の人生模様

第9話 既成事実の夜

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「私だって、あなたのこと、いいと思ってるよ。でも……会ってまだ二週間で、そういうのは……」  
圭子は、少しだけ視線を逸らしながらそう言った。

「前から見てたんだ。あのカラオケ居酒屋で、君が時々来るのも知ってた。偶然に出会えないかなって、ずっと思ってた」  
悟志の言葉には、抑えきれない想いが滲んでいた。

「付き合うまでの時間なんて関係ない。今、この瞬間の気持ちが大事だと思うんだ。好きなんだよ」  
そう言って、彼は圭子を抱きしめた。  
その腕の中には、彼女の温もりと、まだ確かではない距離があった。

本来ならば、ドライブをして、雰囲気の良いレストランで食事をし、気の利いたバーで酒を飲む――  

そんな流れが『恋のセオリー』なのかもしれない。  
だが、悟志は逆を行った。  
午後五時、圭子を車に乗せると、すぐに告白し、初めてのキスを交わした。  
緊張で心臓が高鳴り、息は浅くなっていた。

そのまま彼は、圭子を自分のアパートへと誘った。  
夕暮れの部屋で、二人は結ばれた。  

前戯もほとんどなく、ただ既成事実を先に欲しがるような、焦りに満ちた行為だった。  
それでも、ベッドの中で手を繋ぎ、キスを交わす時間は、静かで、どこか切なかった。  
時計の秒針が、カチッ、カチッと音を立てていた。

夜九時を過ぎ、二人は街へ出た。  
店に入り、グラスを傾けていると、圭子がテーブルの下からそっと手を伸ばしてきた。  
その大胆な仕草に、悟志は再び胸が高鳴った。  
多くの客がいる中で、誰にも気づかれないように、二人は手を繋ぎながら酒を飲んだ。

圭子の服装は、どこか大人びていて、洗練されていた。  
その姿に、悟志はまたひとつ、彼女への想いを深めていった。

つづく

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