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第2章 若さは武器だった。だが老いは、物語になる
第24話 女に堕ちる夜、芽生えた渇き
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──数日前に出会ったばかりの青年をアタシが貪っている。
その事実が罪であるほど、昂ぶりは強くなっていく。
雨はまだ止まない。
その夜、アタシは完全に悠人くんを受け入れ、女として堕ちていった。
雨音は小降りになっていた。
部屋の中には、まだ熱の残り香が漂っていた。
布団の上、乱れたシーツと重なり合った影が、その証だった。
アタシは荒い呼吸を整えながら、隣に横たわる悠人くんの顔を見た。
まだ少年の面影を残すのに、いまアタシを激しく貫いたのは確かに『男』だった。
その事実に、胸が甘く痺れる。
「……大丈夫ですか?」
息を弾ませた声が闇に落ちる。
アタシは小さく頷き、けれど目を逸らした。
アタシは、何をしたのだろう。
罪悪感が押し寄せるたび、胸の奥が冷たくなる。
けれど同時に、身体の芯にはまだ熱が残っていた。
今までのアタシの上に乗った男たちとの夜では決して満たされなかった部分が、今もじんじんと疼き、悠人くんの体温を求め続けている。
「圭子さん……」
呼ばれただけで、胸の奥が跳ねる。
けれど、その響きがなぜか甘くて仕方がなかった。
「……もう、帰れないわね」
そう呟くと、悠人くんは驚いたようにアタシを見つめ、やがて小さく頷いた。
外ではまだ雨が降っている。
アタシの心にも、後戻りのできない雨が静かに降り始めていた。
──罪悪感に震えながらも、アタシはもう知ってしまった。
一度触れてしまったこの熱を、二度と手放せない。
それは愛なのか、欲望なのか。
答えはまだ分からない。
けれど確かに芽生えてしまった。
『また欲しい』という、抗えない渇きがアタシの思いを動かす。
◇◆◇
あの夜から数日が経った。
雨はもう上がり、空気は初夏の匂いを帯びていた。
けれど、胸の奥にはまだあの夜の熱が残っていた。
一度だけ。
そう言い聞かせたはずだった。
なのに、悠人くんの顔を思い出すたび、身体の奥が疼く。
あの布団の上で交わった背徳の記憶は、罪悪感とともに甘く蘇るのだった。
「圭子さん」
玄関のインターフォンと同時に、低い声が響いた。
心臓が跳ね、理性は「断れ」と叫んだ。
けれど、アタシの手は自然とドアを開けていた。
そこに立っていた悠人くんは、真剣な目でアタシを見つめていた。
「……どうしても、もう一度だけ、会いたくて」
言葉は途切れ途切れだったが、彼の視線は迷っていなかった。
若さの荒々しい欲望と、アタシにすがるような熱情がそこに宿っていた。
「……いけないのに」
そう口にした瞬間、もう抗えなくなっていた。
アタシはドアを開ききり、彼を家の中へ迎え入れていた。
リビングの明かりを落とし、薄闇の中で二人は再び唇を重ねた。
「もう、やめられない……」
アタシが漏らすと、悠人くんは答えるように抱き寄せ、強く求めてきた。
衣擦れの音と荒い呼吸が重なり合う。
罪悪感も羞恥も、すべて欲望に溶けていく。
今までの男たちには決して見せなかった顔で、アタシは悠人くんを抱きしめ続けた。
──これが『背徳の始まり』。
戻れない道を選んだことを、アタシは理解していた。
それでも、悠人くんという若き男を求めずにはいられなかった。
つづく
その事実が罪であるほど、昂ぶりは強くなっていく。
雨はまだ止まない。
その夜、アタシは完全に悠人くんを受け入れ、女として堕ちていった。
雨音は小降りになっていた。
部屋の中には、まだ熱の残り香が漂っていた。
布団の上、乱れたシーツと重なり合った影が、その証だった。
アタシは荒い呼吸を整えながら、隣に横たわる悠人くんの顔を見た。
まだ少年の面影を残すのに、いまアタシを激しく貫いたのは確かに『男』だった。
その事実に、胸が甘く痺れる。
「……大丈夫ですか?」
息を弾ませた声が闇に落ちる。
アタシは小さく頷き、けれど目を逸らした。
アタシは、何をしたのだろう。
罪悪感が押し寄せるたび、胸の奥が冷たくなる。
けれど同時に、身体の芯にはまだ熱が残っていた。
今までのアタシの上に乗った男たちとの夜では決して満たされなかった部分が、今もじんじんと疼き、悠人くんの体温を求め続けている。
「圭子さん……」
呼ばれただけで、胸の奥が跳ねる。
けれど、その響きがなぜか甘くて仕方がなかった。
「……もう、帰れないわね」
そう呟くと、悠人くんは驚いたようにアタシを見つめ、やがて小さく頷いた。
外ではまだ雨が降っている。
アタシの心にも、後戻りのできない雨が静かに降り始めていた。
──罪悪感に震えながらも、アタシはもう知ってしまった。
一度触れてしまったこの熱を、二度と手放せない。
それは愛なのか、欲望なのか。
答えはまだ分からない。
けれど確かに芽生えてしまった。
『また欲しい』という、抗えない渇きがアタシの思いを動かす。
◇◆◇
あの夜から数日が経った。
雨はもう上がり、空気は初夏の匂いを帯びていた。
けれど、胸の奥にはまだあの夜の熱が残っていた。
一度だけ。
そう言い聞かせたはずだった。
なのに、悠人くんの顔を思い出すたび、身体の奥が疼く。
あの布団の上で交わった背徳の記憶は、罪悪感とともに甘く蘇るのだった。
「圭子さん」
玄関のインターフォンと同時に、低い声が響いた。
心臓が跳ね、理性は「断れ」と叫んだ。
けれど、アタシの手は自然とドアを開けていた。
そこに立っていた悠人くんは、真剣な目でアタシを見つめていた。
「……どうしても、もう一度だけ、会いたくて」
言葉は途切れ途切れだったが、彼の視線は迷っていなかった。
若さの荒々しい欲望と、アタシにすがるような熱情がそこに宿っていた。
「……いけないのに」
そう口にした瞬間、もう抗えなくなっていた。
アタシはドアを開ききり、彼を家の中へ迎え入れていた。
リビングの明かりを落とし、薄闇の中で二人は再び唇を重ねた。
「もう、やめられない……」
アタシが漏らすと、悠人くんは答えるように抱き寄せ、強く求めてきた。
衣擦れの音と荒い呼吸が重なり合う。
罪悪感も羞恥も、すべて欲望に溶けていく。
今までの男たちには決して見せなかった顔で、アタシは悠人くんを抱きしめ続けた。
──これが『背徳の始まり』。
戻れない道を選んだことを、アタシは理解していた。
それでも、悠人くんという若き男を求めずにはいられなかった。
つづく
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