泡のように、生きる

しらかわからし

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第2章 若さは武器だった。だが老いは、物語になる

最終話 ペンを置く女の物語

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 店が閉店してから、アタシは毎朝、決まった時間に起きるようになった。夜の街で生きてきたアタシにとって、朝の光はどこか異質だった。でも、今はその静けさが心地いい。

 炭酸泉にも通っている。泡に包まれながら、アタシはよく考える。あの夜、あの客、あの言葉。すべてが、アタシの人生の一部だった。

 そして、アタシは決めた。自分の人生を、小説にすることにした。タイトルはすぐに決まった。「泡のように、夜を生きる」

 誰かに読まれるかどうかは分からない。でも、書くことで、アタシは自分を肯定できる気がした。

 ノートにペンを走らせる。最初の一文は、こうだった。

「ここは関東にある人口40万人ほどの地方都市だ。バブルの残り香が、今も少しだけ漂っている――」

 書きながら、アタシは笑った。あの頃の自分が、今の自分を見たら、何て言うだろう。

「よく生きたわね」って、言ってくれるかもしれない。

 若さは武器だった。でも、老いは知恵や物語になる。夜の街で得たものは、決して安くない。

 アタシは、誰かの記憶の中で生き続ける。そして、紙の上でも生き続ける。

 この物語が、誰かの孤独を少しだけ和らげるなら、それだけで十分だ。

 賞味期限が切れても、腐らずに生きた女の記録。それが、アタシの人生。そして今、アタシは静かにペンを置く。

「完」――その一文字が、アタシの人生の最後のページを飾る。

 でも、心の中では、まだ続いている。泡のように儚く、でも確かに、誰かの胸に残る物語として。

― 了 ―

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