夢だと思ってたよ・・・・・

夢じゃないんですか？

注)後半に児童に手を出す暴力等描写あり。 勿論未遂。
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今日も変わらず溺愛してくれる家族に甘える。
掴まり立ちできるようになったし、そろそろ自分の姿見たいんだけど、まだ鏡のある部屋には行けてない。
過保護な家族は侍女に任せる事は一切なく、自分達で全て面倒を見てくれる。
ので、家族以外の人を知らないのだ。


これだけ美形揃いなら周りも皆美形ばかりの世界？
美形が普通？
始めは美オーラに恐々としていたが、最近は短時間ならば耐えられるようになってきたので、更に甘えるようになった。幸せだ。夢最高！
兄達は今日もキスの嵐を降らせている。
マウストゥマウス？日常です。
慣れって怖い。


綺麗な瞳が柔らかく微笑みを讃えこちらを見ている。
呼ぶ声はひたすらに甘い。
おかげで今日もドキドキ。
鼓動数で寿命が決まるって昔情報番組で見たけど、このままいけば明らかに短命ルートだな。
瞳に映る自分を確認してみたいけれど、じっと見つめれる程、まだ慣れてはいない。
自分の姿を確認できたら、もっと慣れると思うのになぁ。
父似か母似か、どちらだろう？
可愛いのは間違いない事はわかっている。楽しみだ。






なーんて思ってた自分が恥ずかしい！！！2度と出れない所に隠れたい！！！
父に抱かれ、新しい部屋に入った時、鏡に写った自分の姿に驚愕した。

明らかに家族と違っていた。
髪色はショコラブラウンの緩いウェーブ
瞳は琥珀色だったのだ
まぁまぁ見れる可愛い幼子のようだが、超絶美形の家族と並べば、もう、ね。
可愛いだなんておこがましい。寝言でさえ口にしちゃいけないレベル。
ごめんなさい。
本当に本当にごめんなさい。
可愛い子だろうなんて自惚れていた自分を抹殺したい。
恥ずかし過ぎてクラクラしてきた。
早く夢から覚めてくれ。頼む！何で覚めない！？いつまで爆睡してる！自分！！
もしかして昏睡状態とかか？！本当に「何かあった」のか！？
あまりのショックにギャン泣きして熱まで出た。
今までの人生でこんな大泣きしたの初めてじゃなかろうか。
家族は大慌てで医者を手配、まるでこの世の終わりのような騒動だったらしい。
どういう理由か知らないけれど、他所の、平凡な子供を育ててくれてありがとう。
ブサ可愛なのか？可愛いと毎日甘やかしてくれて面倒みてくれて、ありがとう。
感謝しきれない。
頑張って恩返ししたいと思います。夢が覚めるまでに少しでも返したい。

因みに診察に来たお医者様はイケオジだった。
見慣れてきた超絶美形の足元にギリ追いつけるかな？の美形でした。

そして家名はロンバーツでした。
義父はルーク  義母はサシャでした。





衝撃の発熱事件？から数年が経ち、自分、アーシェ・ロンバーツは6歳になりました。
本当の両親は事故で他界、親友だったルークが引き取ってくれたそうです。
本当に感謝しかありません。
可愛い天使な妹も誕生した。
妹！欲しかったんだよな。
三女のユリアは母親似、髪は父ルーク、瞳は母サシャの色だ
一つ下だが、お転婆でよく走りまわって目が離せない。
妹を構う俺に、姉兄達は時折不服そうな眼差しをしている。
ごめんなさい。
可愛い妹取る気も害を加える気もないので許して！
え？姉兄達を構えって？それでいいのか！？
天使な妹は！？  ・・・姉兄達がいない時に可愛がることにします。

あの日から分相応をわきまえ、出来る限りの恩返しをしています。いえ、いるつもりです。
掃除洗濯、料理、お使い、ユリアの面倒、でもどれも止められ上手くいかない。
侍女が泣きながら止めてくる。
ちょっとくらい手伝わせてくれてもいいと思うのだけど。
料理はギリギリやらせてもらえるようになったけれど、危ないからと必ず誰かがついていて、包丁は持たせてもらえない。
何でだ。
調理師免許も持ってるし、パティシエもしてた事あるから、ちょっとは出来るぞ。
厨房にある食材しか使えないので簡単なものしか作れないのが残念だ。
作った料理は大絶賛されべた褒めなんだけどね。
この世界の文明はそこまで進んでいないらしく、あったら便利だよね、生活豊かになるんじゃない？こんな遊戯あったらいいよね？な意見を父にバンバン出した。
夢なら何しても問題ない！
製品化されたそれらは事業を更に大きくし、ロンバーツ家は王家と並ぶほどの力を持つようになった。
皆に美味しいものを、とレシピも普及され料理革命がおきているらしい。
侍女が噂しているのを耳にした。
何それ？
他界した父は発明家だったとの事で、血は争えないねと義父ルークは嬉しそうに頭を撫でてくれた。
イケメンに褒められた！
もっと頑張るよ！
そしてビックリ。
王家があったよ。
家から出ないから知らなかったけど、この夢の世界は広いようだ。




成長したし、そろそろ外出できるんじゃないかな？
街の散策に思いを馳せていたが、願いは想像と違う形で叶えられた。
どんどん成長するロンバーツ家の秘密を知りたいと思う者がいるのは当たり前。
小さな子供が発案者とは知られていないが、可愛がる子を盾にすれば情報を手にできると思う輩がいたのだ。
で、白羽の矢が立ってしまったのが俺だった。
庭でハーブをのほほんと摘んでた俺は連れ去られた。
警備しっかりしてるって聞いてたけど、かいくぐれるって凄いよね。
でも、あの綺麗な姉兄妹が被害に遭わずに済んで良かった。
本当に夢でよかったよ。


・・・そう、夢のはずなのに、殴られた頬が痛い。
初めての街は薄暗くジメジメして異臭が漂う場所で、口を覆いたくなるほどだった。
夢ってこんなにリアル？
おかしくない？
切れた口中に広がる血の味、おかしくね？
夢  だよな？ もの凄く痛いんだけど痛覚なんて夢にあんの ？


「金と情報くるまで楽しませてもらおうか」
は？プロレスラーのような大男にナニかされたら死んじゃいますけど。
ってかこんな子供にナニするつもり？あり得ないんですけど！？マジなの！？
無精髭の男が容易く服を剥ぎ取り胸元へ舌を這わせる感触は、あまりにもリアルで吐き気を催す。
暴れても複数の男達に子供が太刀打ちできるわけがない。
掴まれた腕の痛みも、暴れるたびに殴られる衝撃も、これは夢ではないと告げてくる。



何これ？
現実だったっての？
どゆコト？
俺どうなったの？
え？



パニックを起こす向こう側、扉を蹴破り鬼の形相で入ってきたのは父ルークでも警備隊でもなく、お子様な姉フィラと兄ギルバート、ガイルだった。
10歳ちょいの子供が大柄な大人斬り伏せるとか、夢じゃないんですか？
おかしくね？
やっぱりご都合主義の夢じゃね？




ブラックアウトする向こう側で、姉兄達が自分を呼ぶ声が酷く痛々しくて、耳に残った。