忘却魔の忘れすぎな日常

はうた ゆしか

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やべっ。

歩くってどうやってやるんだっけ。

どうしたら進むんだっけ。

俺、上野真紘はすぐ忘れる。

そこらへんの人の、“あの漢字なんだっけ”とか、“あー、あれ買い忘れた”とは違う“忘れる”だ。

「上野、早く取りに来い」

今、高校で先日のテストの返却をしてる。

俺は席から立ったものの、“歩き方”をド忘れして前に進めない。

歩こうとして全身に力をいれてみた。

「上野ぉ、ふざけてないで来なさい。悪い点数だろうがもう終わったことだ、先生はつべこべ言わないぞ」

やっと、左足が一歩踏み込めた。

次は右足を左足のさらに前に踏み出せば進めるはずだ。

「おめぇなにふざけてんだよ~」

「もう上野君ったら、早くしてよ」

俺は右足をバレリーナのように高く掲げ、そっから動けないでいた。

あげた右足が、プルプルし出す。

「せんせー、俺が代わりに取りに行きまーす」

手を挙げて棒読みでそう言い、代わりに先生のところへ行ったのは幼なじみの宮田瑛太。

「はい、よろしく宮田。上野は後で職員室な」

そう、俺が忘れるのは〇〇の仕方。

少ししたら思い出すこともあれば、2、3日忘れっぱなしの時もある…。

そんな俺の忘れすぎな日常は、普通の人の倍慌ただしい。
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