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1 歩き方
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1 歩き方
「上野真紘、古典64点平均ドストラーイク!!」
宮田はそう大声で言い、俺に解答用紙を手渡す。
「はいはい大声で発表ありがとう」
「で?さっきは何忘れたん?歩き方的な?」
「正解。職員室も行くに行けないよ」
俺はため息をつく。
「いーんじゃない?その変な歩き方で行っても」
吹き出すのを堪えた宮田の顔をひっぱたきそうになるのを抑える。
「…そんな変だったさっき?」
「ひとことで言うと、90歳新人バレリーナ!」
「わかりずらいけどわかった、ありがとう」
「で?次体育じゃん?どうすんの」
「見学か…」
「んまっ、またふざけてるって思われるもんな!じゃーな後でなバレリーナ!」
ひらひらと手を振りながら宮田は去った。
「歩けないし…ここにいていいかな」
俺のこの忘却のことを知っているのは、この高校じゃ宮田だけ。
どうせ他の人に言っても、こんなの信じてもらえないし、学校に言って特別扱いされるのも俺は嫌なのだ。
だから、幼い頃から一緒で小中でも何かと助けてくれた宮田には感謝してる。
「おい上野。何してる、早く来い」
教室のドアのところにいたのは、クラスメイトの渡辺透だった。
メガネにきちっと制服を着こなすこの男は見た目通りの優等生だ。
「あーっと…今日は体育休んだ。走れなくて」
「なら歩くことはできるだろう。見学に来いと松原先生が怒っていたぞ」
「やーちょっと…歩くことだけはできなくて…ん?」
「お前今朝は歩いていただろう?」
「や…待って…歩くことだけ、できない…」
俺は渡辺との会話で閃いた。
「俺、走れんじゃん」
「は?」
俺は颯爽と体育着に着替える。
「な、なんだ行くのか」
じゃあ早く来いよ、と渡辺が出ていく。
俺はよし、と一息つくと“歩く”ことは考えずに“走る”という動作だけを考えてスタートした。
前に進めた。
教室を出て、一つ下の階の体育館へ向かう。
「渡辺、ごめん走れた。でも歩けないから先行くね」
「は??」
階段を降りていた渡辺を追い越して、体育館に着く。
「あっれ?真紘思い出した?」
バスケで敵をごぼう抜きしてた宮田がいち早く気づいて寄ってくる。
「歩けない、けど…走れたから…」
息を切らしながら宮田に言った。
「ほー…お前にしては考えたな」
「渡辺と話したら思い出して…」
「おい上野、お前体育ズル休みするつもりだったんだな?」
渡辺も体育館に戻ってきた。
「ああ、そういえば先生に言われて渡辺が呼びに行ったんだっけ」
宮田はすぐにバスケの試合に戻った。
「渡辺、ありがと」
「礼を言われる理由がわからん」
「はは、だよね。でも、ありがと」
「変なやつだ」
俺はその日、結局歩き方を思い出すことはなく、移動は常に軍隊並の駆け足でした。
「上野真紘、古典64点平均ドストラーイク!!」
宮田はそう大声で言い、俺に解答用紙を手渡す。
「はいはい大声で発表ありがとう」
「で?さっきは何忘れたん?歩き方的な?」
「正解。職員室も行くに行けないよ」
俺はため息をつく。
「いーんじゃない?その変な歩き方で行っても」
吹き出すのを堪えた宮田の顔をひっぱたきそうになるのを抑える。
「…そんな変だったさっき?」
「ひとことで言うと、90歳新人バレリーナ!」
「わかりずらいけどわかった、ありがとう」
「で?次体育じゃん?どうすんの」
「見学か…」
「んまっ、またふざけてるって思われるもんな!じゃーな後でなバレリーナ!」
ひらひらと手を振りながら宮田は去った。
「歩けないし…ここにいていいかな」
俺のこの忘却のことを知っているのは、この高校じゃ宮田だけ。
どうせ他の人に言っても、こんなの信じてもらえないし、学校に言って特別扱いされるのも俺は嫌なのだ。
だから、幼い頃から一緒で小中でも何かと助けてくれた宮田には感謝してる。
「おい上野。何してる、早く来い」
教室のドアのところにいたのは、クラスメイトの渡辺透だった。
メガネにきちっと制服を着こなすこの男は見た目通りの優等生だ。
「あーっと…今日は体育休んだ。走れなくて」
「なら歩くことはできるだろう。見学に来いと松原先生が怒っていたぞ」
「やーちょっと…歩くことだけはできなくて…ん?」
「お前今朝は歩いていただろう?」
「や…待って…歩くことだけ、できない…」
俺は渡辺との会話で閃いた。
「俺、走れんじゃん」
「は?」
俺は颯爽と体育着に着替える。
「な、なんだ行くのか」
じゃあ早く来いよ、と渡辺が出ていく。
俺はよし、と一息つくと“歩く”ことは考えずに“走る”という動作だけを考えてスタートした。
前に進めた。
教室を出て、一つ下の階の体育館へ向かう。
「渡辺、ごめん走れた。でも歩けないから先行くね」
「は??」
階段を降りていた渡辺を追い越して、体育館に着く。
「あっれ?真紘思い出した?」
バスケで敵をごぼう抜きしてた宮田がいち早く気づいて寄ってくる。
「歩けない、けど…走れたから…」
息を切らしながら宮田に言った。
「ほー…お前にしては考えたな」
「渡辺と話したら思い出して…」
「おい上野、お前体育ズル休みするつもりだったんだな?」
渡辺も体育館に戻ってきた。
「ああ、そういえば先生に言われて渡辺が呼びに行ったんだっけ」
宮田はすぐにバスケの試合に戻った。
「渡辺、ありがと」
「礼を言われる理由がわからん」
「はは、だよね。でも、ありがと」
「変なやつだ」
俺はその日、結局歩き方を思い出すことはなく、移動は常に軍隊並の駆け足でした。
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