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第5話 盗賊のアジトへ
しおりを挟むこんなところに洞窟があったか。
この辺には来たことがあったが、まったく気づかなかった。
入り口は人がひとり、ぎりぎりは入れるくらい。中は真っ暗で見えない。
その洞窟の前には、二メートルもの草が生えている。わざわざ植えたものだろう。
その草に隠れる形で、大柄な男が一人いる。
俺は象ほどの大きさのアカの背中に乗って、堂々と登場した。
男に動きがあったので、即座に「奴隷化」を発動した。
「こっちに来い」
「はい!」
奴隷となった男は、元気良く返事をしてそばにきた。
「お前ら盗賊だよな」
「はい! そうです!」
「ここはなんだ」
「この洞窟は俺たちの四つ目のアジトですね。二十人近くも殺したんで、ほとぼりが冷めるのを待ってるところです」
「中にいる連中を全員、俺の奴隷にしたい。案内してくれ」
「かしこまりました!」
これはアカから降りて、ナー・ザルを肩と頭にのせ、洞窟に入っていこうとした。
頭痛!
スライムもなかに行きたいらしい。
しょうがないな。
スライムを抱っこする形で、中に入った。
このスライム、最近絶対太ったよな。明らかに重くなってるもん。
しばらく暗い通路を歩くと、すぐ広い通路にでた。両脇にランプがあり、明るくなっている。
その通路をしばらくいくと、男二人が座っていた。
「おい、見張りはどうした。そいつらはなんだ」
「奴隷化!」
ここで三人に質問をした。
「おい、奴隷化ってわかるか」
全員がわからないと言う。
「じゃあ、奴隷状態ってのはわかるよな」
「全然わかりません」
最初の男が答えた。残りの二人も否定する。
あれ? どういうことだ?
「奴隷ってのはわかるだろう?」
見張りをしていた最初の男が答える。
「奴隷はわかりますよ」
「相手を奴隷にするスキルや、魔法については知らない?」
「はい、全く」
残りの二人も知らないらしい。
まずいな。
レアなスキルだろうなと思っていたが、世界で俺だけってことはないよな? この奴隷状態にできるのが俺だけだと、結構まずい展開になる。
「呪いや魔法による状態異常を、何とかできる人は知ってる?」
「普通は医者ですね」
もと見張りは答える。
まあ、いい。先に進もう。
奥には、直径五十メートルほどの、円形の空間があった。洞窟の天井の一部がかけており、光が差し込んでいる。
いい場所じゃないか。
秘密基地っぽくて素敵だ。
ちょっとのぞくと、十五人男たちがいた。いや、女もいる。一人の美しい女を中心に、小さな四角いテーブルで食事をしている。
人質か?
まあすぐわかる。
俺は奴隷化を使った。
見えている十六人の下に、紫色の星が現れ、光を放った。
俺はナー・ザルを肩と頭にのせ、堂々と入っていく。
腕が疲れたので、スライムは床に置いた。自分で動けるのだからいいだろう。
「おい、他にメンバーはいないか」
すると赤い髪の美しい女性が「このアジトにはこいつらだけです」と答えた。
名前:ミヤビ
HP :110/110
攻撃力 :100
守備力 :70
魔法攻撃力:110
魔法防御力:100
スキル :かぎ開けLv4 強奪Lv6
状態 :ヌカタの奴隷
おいおい、やっぱり俺のステータス、たいしたことなかったじゃん。こいつ、俺と全然変わらないもん。
「ミヤビ、お前は何者だ」
「私はこの盗賊団のリーダーです」
「まだ若いのにすごいな。いまいくつ?」
「十九。両親を殺された十歳から、盗賊団の下っ端をしています。最近、ボスが殺されたから、あとを継いだんです」
「へえ。ミヤビは強いものな。それも当然か。ミヤビに質問する。ミヤビは今奴隷だよな? 魔法によって、奴隷にされた。そうだな?」
「すみません、それはわかりません」
「自分が奴隷だってことはわかるな?」
「私、奴隷なんですか」
あれ? 自覚症状はないのか。
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