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第21話 やっぱり愛情で結ばれていた
しおりを挟む「誓ってもいい。好き放題なんてしてない」
「私に奴隷化を使わない理由は、魔法反射があるかもしれない、と思ってるからじゃないの? ないとわかれば使うでしょう」
「そんなことはしないって」
ちょっと図星。
「私は便利屋じゃない。呪いは、恨まれてるからかけられるもの。ひどいことをした相手に、仕返しで呪いをかけられた、そういう人の呪いは解かないよ」
「呪術師だろう」
「言ったでしょ? 便利屋じゃない。事情を聞き、解いてあげてもいいと判断した場合に限り、呪いを解く」
「俺は、ただ魔物の子分が欲しかっただけだよ」
「人間を奴隷化したことは一度もないの?」
「いや、あるけどさ」
「自業自得だね。なんでお姉ちゃんが協力しているのかわからないよ。あなたが怖いから、じゃないの?」
うわー。そうだったのかな。だったら結構ショックだな。いや、あり得るよな。
ナーセがきたとき、アンズが盗賊普通に食べてたもんな。
「レイアの言う通りかもしれないな」
茶髪のレイアは、意外そうな顔をした。
「俺は確かに、この奴隷化を使って、好き放題を考えたことがあったよ。でも今は違う。平穏に暮らしたいだけだ。人間には奴隷化を使わないって約束するから、助けてくれ」
「私も呪術師をやって、そこそこたつ。危ない奴の呪いもずいぶん解いてきたよ。ヌカタはそのなかでも、ナンバーワンの危なさだね」
レイアは俺をじっと見ている。
「わかった、いいよ。そのスライムと会わせて?」
「わかった」
俺はアンズを「占いをやってくれる人がいる」とだまして、レイアの部屋に連れて行った。
「占いか。どうする? 私とヌカタの相性が悪かったら」
アンズはお化け大福のように、廊下をすすすと移動している。気味が悪いなあ、相変わらず。
「やっぱり、二人の恋愛運は占いたいよね」
ふざけんなよ。お前との将来が円満、なんて結果が出たら自殺したくなるわ! 大福のくせに恋愛運なんか気にしてるんじゃねえよ!
俺と大福は、茶髪のレイアの向かいに座った。
畳に正座する俺たちを、レイアは鋭い視線でじっと見ている。鑑定グラスはかけていない。鑑定の能力を持っているのだろう。
「どうです? 私と彼の恋愛運は」
この大福、ウゼェェェェェ!
何が「彼」だよ。俺を「彼」だなんて言うな! 本当に腹立つ!
しかもこのサイコ化け物大福、ドキドキしてるっぽいじゃん。
まあ確かに、真剣な顔のレイアは、呪術師だけあって、神秘的なオーラあるものなぁ。
「二人の恋愛運は」
「はい!」
「最高です。相性ばっちりですね」
「やったぁ!」
アンズは俺に抱き着いてきた。
大福に抱き着かれてもうれしくもなんともない。というか、腹立たしい。
だが嬉しそうにしておかないと、アンズに不信感を持たれ、そこらの女性を食べてしまう可能性がある。
喜ばねば。
ああああああ! なんてこんな気づかいをしないといけないんだよ!
「うれしいな。やっぱりアンズは、俺の運命の相手だったんだね」
自分で言ってて、鳥肌立つわ! こんな大福が運命の相手とか自殺もんだよ!」
「そうだね! ヌカタ、これからもずっと好きでいてね!」
うるせェェェッ!
お前のことなんか、一ミリも好きじゃええよ! どこの世界に化け物をずっと好きでいる異常者がいるんだ!
「ありがとうございました」
俺は平常心で、微笑みを浮かべて言うと、アンズのボケを連れて部屋を出た。
部屋に戻ると、アンズが「マッサージしてあげるよ」とほざく。「うるせえんだよ! ボケが!」と蹴り飛ばしてやりたかったが、防御力は5万だ。勝てるわけない。
「いや、俺がアンズをマッサージするよ」
とかわす。
こんな奴に腰をもまれるなら、こっちがやった方がましだ。
「遠慮しないで、ささ、横になって」
えええー! いやだなあ。そのまま俺、食べられちゃうんじゃないの?
「はやくー」
声はかわいいんだよな! どうしてなんだろう。なんでこいつの声はこんなにかわいいんだよ。目をつむってれば、幸せな情景だよ。
だけど目を上げると、大福が喋ってるんだよ!
意外なことに、アンズのマッサージは超上手で、疲れがすべて吹き飛んだ。
よかったわけだが、腹が立った。
マッサージのうまい大福なんて、恐ろしくてしょうがないわ。
夕食の後、アンズは「モンスター探してくるね」と翼をはやし、飛んでいった。
マジ、バケモンだよ、あいつ。
俺が「人を食べると、アンズも俺も、討伐されるかも」と何度も言ったため、基本的には人を食べないと約束してくれた。
だが「基本的には」だ。
すぐレイアの部屋に行って、どうだったかを聞く。
畳に寝っ転がって、チーズを食べているレイアは「愛情で結ばれてる」と言った。
「はあ?」
センカもそんなことを言っていたな。
「確かにアンズはヌカタの主だし、ヌカタはアンズの奴隷だよ。でも、普通の呪いみたいに、黒い憎しみは感じない」
「どういうことだよ」
「アンズはヌカタを、心から愛している。愛情による呪い、つまり祈りだね。強い愛情で、幸せになりますようにと、魔力のあるものが願い続けると、状態の欄に『魔除け』ってものがつくことがある」
「つまりなんだよ」
「『アンズの奴隷』って状態は、祈りに近い。別に、状態の欄を真っ白にしないでもいいんじゃないの?」
「ふざけんなァァァァァ! 迷惑なんだよ、こっちは! あいつはヤンデレサイコ大福だぞ!」
「わかったわかった。じゃあ消してもいいよ。その代わり、奴隷化スキルの乱用は禁止だよ?」
「いつ消してくれる」
「条件がある。アンズに何をするか話して」
「え?」
「相手側の了承がないと、強い祈りは消せない」
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