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第二章 ライオネル
08 ライオネル
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彼とリグの関係は不思議なものだった。
ライオネルが屋敷に来た時から、意識を共有すると言われる彼のリグは、まるで影のように彼の側にいた。
ウエストリアの屋敷を出ると、彼は瞳を布で隠している為に、リグの力が必要なのかと思ったが、屋敷の中でも彼らは片時も離れる事が無い。
朝起きた時から、寝る時までずっと側にいるのだから、見慣れるまでは違和感さえ覚えた。
緋色の瞳を持った領主の息子と、生まれてすぐに親元から離された森の落とし子。
言葉を発するのも、行動を起こすのも彼なので、始めは主従の関係なのだと思っていた。
だが暫く側にいると、単に彼のリグが人と話すのを苦手としているだけだと分かる。
地の力はコントロールが難しいらしく、そちらに意識を使うため、面倒な役目を彼が担っている。
彼はリグの事をよく見ているし、リグが嫌だと感じている事はしない。
自由に、好き勝手しているように見えて、実は一番リグの事を考えているのが分かると、リグが離れない気持ちが良く分かる。
そしていつの間にか、自分も同じようになっている。
始めは腹を立て、側にいるのを諦めかけ、一緒に行動するようになってからも呆れる事が多かったのに、側を離れろと言われると寂しいとさえ感じる。
彼の側にいるのは、居心地が良かった。
今日の様に馬を駆り、始めてイリノアの街に行った時を思い出す。
図書館で、『好きに時間を使え』と言われたものの、自分はまだ彼のペースに慣れておらず、何となく居心地の悪さを感じていた時、いい紅茶の香りがした。
そのまま誘われる様に香りのする方を向くと、ハゼルと呼ばれた人が手招きしているのが見える。
「まぁ、座りんさい」
ハゼル殿がライオネルを席につかせ、手際良く紅茶を入れてくれる。
「いい香りじゃろう」
「ありがとうございます」
ウルフレッドが渡していた茶葉で入れたお茶は、とても良い香りがして、久しぶりに美味しい紅茶を飲ませて貰う。
「お前さんも好きなんじゃろ?」
お茶を味わって飲んでいると、いきなりハゼル殿に言い当てられる。
「あの、どうして?」
「いつもより茶葉が多かったからの、お前さんに飲ませてやれ、ちゅう事なんじゃろうなぁ」
ハゼル殿にそう言われ、彼が何故知っているのかと驚かされる。
確かに"風使い"は匂いに敏感な者が多いが、紅茶好きは、あくまでライオネルの好みでしかない。
騎士は、よく食べ、よく飲みと言う人が多いが、ライオネルは酒を飲むより、ゆっくり紅茶を飲む方が好きだった。
だがウエストリア家に来て、そんな事を口にした覚えは無いし、そんな様子を見せた覚えも無い。
自分が何も言えずにいると、そんなライオネルを見てバゼル殿が笑いながら教えてくれる。
「観察はアレの趣味の様なもんじゃからの、気にする事はない。それよりやっと味の分かるのが来てくれて有難いのぉ」
そう言われ、窓側で無心に本を読んでいる二人のお茶が無いのに気が付く。
「彼らのお茶は、良いのですか?」
「アイツらには、白湯でも飲ませておけばいいんじゃ」
「白湯、ですか?」
「何を飲ませても同じ反応しかせんからの、面白くも何ともない」
「彼は味に煩いと思っていましたが、、、」
屋敷の食事にも良く固いだの、辛いだの言っているのを聞いている。
「アイツはの、どうせ食べるなら旨い方が良いと思っているだけで、こだわりは無いからのぉ」
そう言われると、確かに文句は言ってもパンが固ければスープに漬けて食べるし、塩が辛い時は薄めて流し込んでいて、どちらかと言えば、他の騎士達が言い難い事を代弁している様な所がある。
「アイツは興味が無いから、持ってくる茶葉も目についた物しか持って来ん。今度からお前さんが選んで持たせろよ、今日は良かったが、時々とんでもない物を持って来よる」
それからイリノアの図書館に行く時は、ライオネルが茶葉を選ぶ様になった。
図書館に行くとハゼル殿とお茶を飲み、彼から色々な話を聞く。
管理人をしているだけあって、彼の知識は幅広く学ぶ事も多かった。
そしてそれは、ラングロア家から客人扱いでウエストリア家に来ているライオネルにとって、気の休まる大切な時間にもなっていた。
彼は好き勝手しているように見えて、こういう所がある。
その彼が、ライオネルに人を育てろと言う意味も良く分かっている。
いずれ自分は、ラングロア家を継ぎ、タルパスの街を治めなくてはならない。
家を継ぐのであれば、父に仕えている人以外に、信頼できる部下を作る事は必要だった。
彼は面白いからと言うが、自分の育てた騎士がローエングルグ家にいれば、お互い都合の良い場合が多い事も理解できる。
転移門のあるタルパスの街は、ウエストリア領内の中心に位置し、王都やイーストリア、ノーストリアからの荷が運び込まれる要の街で、多くの雑多な人々が集まる場所だった。
その街を管理し治めるのは、決して簡単な事ではない。
そしてその能力が無いと見なされれば、セリス様も彼もラングロア家では無く、他の家に街を任せる事を躊躇するような人でも無い。
彼は意味のない事を口にしない。
彼の側を離れたく無いと思うのと同じくらい、彼に失望されたくも無い。
いつの間にかそう思っているのだから、本当にどうしようも無い。
ライオネルが屋敷に来た時から、意識を共有すると言われる彼のリグは、まるで影のように彼の側にいた。
ウエストリアの屋敷を出ると、彼は瞳を布で隠している為に、リグの力が必要なのかと思ったが、屋敷の中でも彼らは片時も離れる事が無い。
朝起きた時から、寝る時までずっと側にいるのだから、見慣れるまでは違和感さえ覚えた。
緋色の瞳を持った領主の息子と、生まれてすぐに親元から離された森の落とし子。
言葉を発するのも、行動を起こすのも彼なので、始めは主従の関係なのだと思っていた。
だが暫く側にいると、単に彼のリグが人と話すのを苦手としているだけだと分かる。
地の力はコントロールが難しいらしく、そちらに意識を使うため、面倒な役目を彼が担っている。
彼はリグの事をよく見ているし、リグが嫌だと感じている事はしない。
自由に、好き勝手しているように見えて、実は一番リグの事を考えているのが分かると、リグが離れない気持ちが良く分かる。
そしていつの間にか、自分も同じようになっている。
始めは腹を立て、側にいるのを諦めかけ、一緒に行動するようになってからも呆れる事が多かったのに、側を離れろと言われると寂しいとさえ感じる。
彼の側にいるのは、居心地が良かった。
今日の様に馬を駆り、始めてイリノアの街に行った時を思い出す。
図書館で、『好きに時間を使え』と言われたものの、自分はまだ彼のペースに慣れておらず、何となく居心地の悪さを感じていた時、いい紅茶の香りがした。
そのまま誘われる様に香りのする方を向くと、ハゼルと呼ばれた人が手招きしているのが見える。
「まぁ、座りんさい」
ハゼル殿がライオネルを席につかせ、手際良く紅茶を入れてくれる。
「いい香りじゃろう」
「ありがとうございます」
ウルフレッドが渡していた茶葉で入れたお茶は、とても良い香りがして、久しぶりに美味しい紅茶を飲ませて貰う。
「お前さんも好きなんじゃろ?」
お茶を味わって飲んでいると、いきなりハゼル殿に言い当てられる。
「あの、どうして?」
「いつもより茶葉が多かったからの、お前さんに飲ませてやれ、ちゅう事なんじゃろうなぁ」
ハゼル殿にそう言われ、彼が何故知っているのかと驚かされる。
確かに"風使い"は匂いに敏感な者が多いが、紅茶好きは、あくまでライオネルの好みでしかない。
騎士は、よく食べ、よく飲みと言う人が多いが、ライオネルは酒を飲むより、ゆっくり紅茶を飲む方が好きだった。
だがウエストリア家に来て、そんな事を口にした覚えは無いし、そんな様子を見せた覚えも無い。
自分が何も言えずにいると、そんなライオネルを見てバゼル殿が笑いながら教えてくれる。
「観察はアレの趣味の様なもんじゃからの、気にする事はない。それよりやっと味の分かるのが来てくれて有難いのぉ」
そう言われ、窓側で無心に本を読んでいる二人のお茶が無いのに気が付く。
「彼らのお茶は、良いのですか?」
「アイツらには、白湯でも飲ませておけばいいんじゃ」
「白湯、ですか?」
「何を飲ませても同じ反応しかせんからの、面白くも何ともない」
「彼は味に煩いと思っていましたが、、、」
屋敷の食事にも良く固いだの、辛いだの言っているのを聞いている。
「アイツはの、どうせ食べるなら旨い方が良いと思っているだけで、こだわりは無いからのぉ」
そう言われると、確かに文句は言ってもパンが固ければスープに漬けて食べるし、塩が辛い時は薄めて流し込んでいて、どちらかと言えば、他の騎士達が言い難い事を代弁している様な所がある。
「アイツは興味が無いから、持ってくる茶葉も目についた物しか持って来ん。今度からお前さんが選んで持たせろよ、今日は良かったが、時々とんでもない物を持って来よる」
それからイリノアの図書館に行く時は、ライオネルが茶葉を選ぶ様になった。
図書館に行くとハゼル殿とお茶を飲み、彼から色々な話を聞く。
管理人をしているだけあって、彼の知識は幅広く学ぶ事も多かった。
そしてそれは、ラングロア家から客人扱いでウエストリア家に来ているライオネルにとって、気の休まる大切な時間にもなっていた。
彼は好き勝手しているように見えて、こういう所がある。
その彼が、ライオネルに人を育てろと言う意味も良く分かっている。
いずれ自分は、ラングロア家を継ぎ、タルパスの街を治めなくてはならない。
家を継ぐのであれば、父に仕えている人以外に、信頼できる部下を作る事は必要だった。
彼は面白いからと言うが、自分の育てた騎士がローエングルグ家にいれば、お互い都合の良い場合が多い事も理解できる。
転移門のあるタルパスの街は、ウエストリア領内の中心に位置し、王都やイーストリア、ノーストリアからの荷が運び込まれる要の街で、多くの雑多な人々が集まる場所だった。
その街を管理し治めるのは、決して簡単な事ではない。
そしてその能力が無いと見なされれば、セリス様も彼もラングロア家では無く、他の家に街を任せる事を躊躇するような人でも無い。
彼は意味のない事を口にしない。
彼の側を離れたく無いと思うのと同じくらい、彼に失望されたくも無い。
いつの間にかそう思っているのだから、本当にどうしようも無い。
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