エルメニア物語 - 黄金の狼は退屈な日常を満喫する -

小豆こまめ

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第六章 エリス

05 エリスの魔具

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 エリスは部下達から、魔術師エリスと敬意を持って呼ばれていた。
 彼は小さな球体を自分の周りに浮遊させ、それを敵に放って攻撃した。

 その特別な球体は、敵に当たれば火炎となり、また、雷電となって敵を倒し、彼の意識の中でそれは外れる事がなかった。

 両手を広げ小さな色とりどりの球体が彼の周辺に浮遊し始めると、彼は頼もしく恐ろしい将になった


***


「僕、どうしてもっと魔力が無いのかな」

 エリスがつぶやく。

「どうしたのかな、お前は人並み以上だと思うけれど」
「剣を使っても、火炎を使っても、クラウス様やファーレン様のようになれないし」
「まぁ、剣はお前に向いていないだろうね」

 ウエストリアに来てから、双剣の使い手と呼ばれるクラウス様に剣を教えて貰っているが、もともと体の華奢なエリスは上手く扱う事が出来ない。

「その代わり、水や風、地の力も使えるだろう?」

 確かに師は自分の魔力を万能だと言ってくれるが、自分は精々十数メートル先までしか位置の把握は出来ず、広範囲を把握出来るオルグ様には到底及ばない。

 また、セルトのように多くの水を扱える訳でもない。
 火炎や雷電も扱えるが、それらもクラウス様やファーレン様に勝るものではない。

「これじゃぁ、役に立てない」
「気にするな。自分に合った魔具があれば良いのだが、お前みたいなのは珍しいからね」

 戦が始まろうとしているのに、情けなくて仕方ないが、師は気にする様子もない。

「それより、球体を作れる様になったのだろう? ほら作ってみろ」

 水の入ったコップを差し出す。
 アッタリアとの戦が始まろうとしているのに、気にするなと言われてもと思うが、こんな顔をしている師に何を言っても聞いて貰えない。

「分かった」

 そう言って、左手に付けた魔具でいくつか球体を作る。

「一度に幾つくらい動かせる」
「十個くらいかな」

 そう言って、球体の数を増やし師匠や自分の周りをクルクル動かして見せる。

「すごいな」

 師匠が周りにある球に触ろうとするので、その球を触れない位置まで逃がして言う。

「でも、水を球体にして動かせるだけだよ」
「要は使いようさ」

 師は笑っているが、まだ気持ちは晴れない。

「なら良いけど、、、」
「気にする事はない、そろそろ頼んでいた物も届く頃だしね、お前は早く寝なさい」

 そんなやり取りをした三日後、師の部屋で新しい魔具を渡された。

「これを使ってごらん」

それは、師が左手に付けている火炎を放つ魔具に似ていたが、示された魔具は二つあり、両手に付けるようになっている。

「両手に付けるのですか?」
「そうだね、片手では十個くらいまでしか扱えないようだしね」

「これは?」
「それも一緒に作って貰った、特別な液体だね」

 魔具を作った魔工師が、心配そうに言う。

「ちょっと使ってくれませんか、全ての魔力を使えるって人は珍しいですからね、おまけに雷電まで扱うって聞いているし」

 師の方を向くと頷いているため、渡された魔具を身につけるとまたコップを差し出される。

「ほら、作ってみろ」

 魔力を魔具に込めて、コップの水を小さな球体に次々に変化させる。

「こりゃ凄い」

 魔工師が感心したように言う。

「どうだい?」
「前の魔具より使いやすいです」

 作った球体が部屋中をクルクル回りだす。

「まぁ水ならこんなものだろうね」
「よし、外にでよう。次はそれの使い方を教えよう」

 師が特別な液体と言った小瓶を持って部屋を出て行く。

 薬液が火炎や雷電を込めやすくなっている事、これらを使って攻撃する事などを教えられ、しばらくは練習するように言われる。

「どんな感じになったかな?」

 しばらくして、師が聞いて来る。

「うん、大丈夫。大体使える様になったと思う」

 やっと自分も力が出せる事が嬉しい。
 魔力をやっと自在に使う事ができるようになって、これで自分も役に立つ事もできる。

「エリス、おいで」

 その様子を見ていた師匠が、珍しく自分を近くに座らせる。

「お前の魔具と薬液は、強力に見えるがそれはあくまで敵と距離を取った時だけだ。薬液が無くなり、敵と近くなれば、その優位性は失われる」

 真っ直ぐに自分の顔を見て話す。

「戦だからね、僕はお前が使いやすいような魔具を持たせたが、それは命を守るための物であって、捨てるための物ではないからね」

 と頭を撫でながら、釘をさされる。

「忘れるなよ」
「はい、必ず」

 有頂天になっていた自分を反省し答える。

 四年前、始めてこの人に会った時から、彼だけが自分にとって絶対で勇逸無二の存在だ。

 この人が言った事を忘れる事はない。
 この人が側にいる限り、その言葉に反する事など決してしない。
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