エルメニア物語 - 辺境の令嬢は大きな獣に愛される -

小豆こまめ

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第3章

11 森(3)

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 森での生活は楽しいものだった。

 明るい間は森を歩いて、薪や木の実、木の幹からは樹液を集め、部屋に戻るとそれらを使って冬の準備をし、保存食を作る。

 その間、常にザイード様が側に寄り添ってくれる。

 歩きながら食べられる物や薬草として使えるもの、甘く美味しい木の実や匂いに誘われても食べてはいけない実のことを思いつくままに話すと、彼が耳を動かして聞いている事を教えてくれる。

 森の中に赤い紐を見つけて『なんだ?』と首を傾けるので、

「あの赤い紐ですか? あれは、フレの花が咲いている場所が判るように結んであります。
 フレは気まぐれな花なので、新緑の頃、先ず薄緑色に咲く花を探して紐を付けておきます。花が散って、種をつける頃に何度も足を運んで、種が大きくなった頃、摘むので見印にしているんですよ。

 ああして紐を残しておいて、また次の年も目印に花を探します。
 でもフレの花はなかなか同じ処に咲かないので、森人達は毎年、花を探して紐を付けます。」

 そうした話をしながら森を歩く。

「何時もならこの辺りで野営するが、さすがにこの寒さではリディアは難しいな」
「アルフレッドの腕輪もありますけど、残ってはいけませんか?」

「リディアがいないと皆が寂しがると思うが、夜になるとこれ以上寒くなる。体調を崩しても仕方ないからね」

 魔力を持つ者は、その力を使って自分を守ることが出来る。
 寒さを感じなくなる訳ではないが、力を持たない者とは比べものにならない。

 私は外が冷えればそれだけ寒さを感じることになる。
 我儘を言っても仕方がないので、森の家に戻らなくてはと思っていると、ザイード様が服の裾を引っ張って自分の側に座らせる。

「どうしたの?」
 
 そうするとザイード様が守るようにぐるっと自分の体を囲んでくれる。

「まぁ、とっても暖かいわ」
「寒くはないかい?」
「ええ」

 おじ様が安心したように離れて行く。

「ありがとうございます、ザイード様。
 フレの実を採るのは早朝の場合が多いので、遠出する場合はこうして野営するのですけど、夏ではありませんから、私は帰らなければならない所でした。この季節に外で眠るのは初めてです」

 森人の子ども達がサイラス様とイグルス様の側に寄っていき、同じ様に二頭の間に入って眠ろうとするのを見て、子ども達と同じように守られているのかと思うと気恥ずかしいが、とても居心地の良いので今は忘れることにする。

 夜になると森人が集まってくるので、“ニコ”を弾く。
 森人はこの森の中に消えていくような“ニコ”の音が大好きなので、私が弾く“ニコ”でも楽しんでくれる。

 夜が更け森人達がいなくなるので、膝を丸めて、ザイード様に体を預ける。
 ザイード様にふれている所は暖かいし、尻尾を使って冷たい風に当たらないように守ってもくれる。
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