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第3章
12 雨上がり(1)
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麦の収穫が終わったころ、数日雨が続く。
ガルスでは雨が珍しいらしく、サイラス様だけでなく、イグルス様までも日が落ちると闇の中に消えて行く。
明け方どうやら戻って来るようだが、疲れているのかそのまま部屋から出て来ないようなので、食事場にいるのはザイード様だけに違いない。
父から早い時間の食事であれば、それほど気を遣う必要はないと教えて貰ったので、食事場にいる人に声をかける。
「ザィード様、お食事が終わったら川に行きましょう」
「川、ですか?」
「ええ」
「お嬢様、食事を急かすものではありませんよ」
「ごめんなさい、マルタ」
「さぁ、少し落ち着いて、お座りになって下さい」
マルタがお茶を用意してくれるので、目の前の席に座って話す。
「川とは、先日行ったところですか?」
「ええ、この前行った所より、もっと上流になるのだけど」
「雨の降った後は、危険ではありませんか?」
「少しね。だからジャルドに付いて来て貰うけれど、バーブやクレスは雨上がりでないと取れないから」
「取る?」
「そう、バーブは、ザィード様が今、食べているものよ、その赤いジャム」
「これが?」
「ええ、美味しいでしょう? クレスは、ジャルドが来てくれれば、夜に食べられるわ」
「珍しいな」
「?」
「貴女が人に任せるとは」
「仕方ないわ、クレスは崖に生えているから、残念だけど私ではちょっと無理なの」
一度崖から降りてみたら、川に流させそうになって、散々ジャルドに文句を言われた。
「お嬢、馬の用意が出来たっすよ」
「まぁ、ありがとう」
「殿下も行くっすよね?」
「出来れば同行させて頂きたいな」
「是非来て欲しいっすね」
「あら、そんなに無理をお願いしていないでしょう?」
「へぇ、そうだったんすか?」
「ふふっ、頼りにしているわ」
ジャルドが少々憎まれ口を叩いていても、何時もの事なので気にする事はない。
「アルフレッド殿は、行かれないのですか?」
「ええ、弟はやる事があるから」
雨が上がった後は川の水が増えるので、アルフレッドは兵士達と危険な場所を見て回る。
魔力や魔道具を使っての修理や整備に自分は役に立たないので、いつも自分の我儘にジャルドを付き合わせている。
馬車では無く、馬に乗って走り出す。
いつも遊んでいる川をさらに上に行くと、ちょっとした高台にたどり着く。
馬を繋ぐと、ジャルドは崖に近づき、命綱を付けさっさと下に降りていくので、クレスは彼にまかせてバーブを集める。
ジャルドの方を見ていたザイード様が、水量の増えた川岸に生える野草を指さして聞いてくる。
「あれがクレスですか?」
「ええ、春先にもっと下流で取れる野草なのだけれど、この時期に取れるものは、ちょっと癖があって私は大好きなの」
「それでここまで?」
「一応、ジャルドも好きなのよ、多分」
自分が我が儘を言っている自覚があるので、ちょっと視線を外して肩をすくめる。
「リディア嬢は何を?」
「私はバーブを集めるわ」
「ではお手伝いしましょう」
一見、食べることが出来るとは思えない野草を教えて、太い茎をマテの粉で煮るジャムになると教えると、これをよく食べようと思うものだと驚いている。
するとザイード様が急に頭を上げ、何かが聞こえたような仕草をする。
「ザイード様、どうされましたか?」
「いや、声が聞こえたような」
「声?」
「ああ」
確かめるため、馬に乗る準備をしていると何事かとジャルドが崖から上がってくる。
「お嬢」
「ジャルド、声が聞こえるみたいなので、ちょっと行ってみるわ」
ジャルドが意識を広げ、周りを探っているのが分かる。
問題ないと教えてくれるので、そのままザイード様と下流に馬を走らせる。
ガルスでは雨が珍しいらしく、サイラス様だけでなく、イグルス様までも日が落ちると闇の中に消えて行く。
明け方どうやら戻って来るようだが、疲れているのかそのまま部屋から出て来ないようなので、食事場にいるのはザイード様だけに違いない。
父から早い時間の食事であれば、それほど気を遣う必要はないと教えて貰ったので、食事場にいる人に声をかける。
「ザィード様、お食事が終わったら川に行きましょう」
「川、ですか?」
「ええ」
「お嬢様、食事を急かすものではありませんよ」
「ごめんなさい、マルタ」
「さぁ、少し落ち着いて、お座りになって下さい」
マルタがお茶を用意してくれるので、目の前の席に座って話す。
「川とは、先日行ったところですか?」
「ええ、この前行った所より、もっと上流になるのだけど」
「雨の降った後は、危険ではありませんか?」
「少しね。だからジャルドに付いて来て貰うけれど、バーブやクレスは雨上がりでないと取れないから」
「取る?」
「そう、バーブは、ザィード様が今、食べているものよ、その赤いジャム」
「これが?」
「ええ、美味しいでしょう? クレスは、ジャルドが来てくれれば、夜に食べられるわ」
「珍しいな」
「?」
「貴女が人に任せるとは」
「仕方ないわ、クレスは崖に生えているから、残念だけど私ではちょっと無理なの」
一度崖から降りてみたら、川に流させそうになって、散々ジャルドに文句を言われた。
「お嬢、馬の用意が出来たっすよ」
「まぁ、ありがとう」
「殿下も行くっすよね?」
「出来れば同行させて頂きたいな」
「是非来て欲しいっすね」
「あら、そんなに無理をお願いしていないでしょう?」
「へぇ、そうだったんすか?」
「ふふっ、頼りにしているわ」
ジャルドが少々憎まれ口を叩いていても、何時もの事なので気にする事はない。
「アルフレッド殿は、行かれないのですか?」
「ええ、弟はやる事があるから」
雨が上がった後は川の水が増えるので、アルフレッドは兵士達と危険な場所を見て回る。
魔力や魔道具を使っての修理や整備に自分は役に立たないので、いつも自分の我儘にジャルドを付き合わせている。
馬車では無く、馬に乗って走り出す。
いつも遊んでいる川をさらに上に行くと、ちょっとした高台にたどり着く。
馬を繋ぐと、ジャルドは崖に近づき、命綱を付けさっさと下に降りていくので、クレスは彼にまかせてバーブを集める。
ジャルドの方を見ていたザイード様が、水量の増えた川岸に生える野草を指さして聞いてくる。
「あれがクレスですか?」
「ええ、春先にもっと下流で取れる野草なのだけれど、この時期に取れるものは、ちょっと癖があって私は大好きなの」
「それでここまで?」
「一応、ジャルドも好きなのよ、多分」
自分が我が儘を言っている自覚があるので、ちょっと視線を外して肩をすくめる。
「リディア嬢は何を?」
「私はバーブを集めるわ」
「ではお手伝いしましょう」
一見、食べることが出来るとは思えない野草を教えて、太い茎をマテの粉で煮るジャムになると教えると、これをよく食べようと思うものだと驚いている。
するとザイード様が急に頭を上げ、何かが聞こえたような仕草をする。
「ザイード様、どうされましたか?」
「いや、声が聞こえたような」
「声?」
「ああ」
確かめるため、馬に乗る準備をしていると何事かとジャルドが崖から上がってくる。
「お嬢」
「ジャルド、声が聞こえるみたいなので、ちょっと行ってみるわ」
ジャルドが意識を広げ、周りを探っているのが分かる。
問題ないと教えてくれるので、そのままザイード様と下流に馬を走らせる。
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