40 / 82
第3章
13 雨上がり(2)
しおりを挟む
しばらく川に沿って下って行くと、子どもの鳴き声が聞こえてくる。
幼い兄妹が流れの早い川岸で泣いていて、今にも川の中に落ちそうになっている。
急いで側に行き、川岸から離そうとすると、川の中にも少し年長の男の子が、岩に引っかかった木に摑まっているのが見える。
「なんてこと」
普段なら問題なく歩ける川岸だけど、こうして雨が降った後は、水かさが増える。
風や水の魔力を使える者がいれば助ける事もできるが、私ではどうする事も出来ない。
どうしたら、、、と思った時、力尽きたのか男の子の手が離れ、川に中に消えて行くのが見える。
「いや」
声が漏れた瞬間、銀色の大きな獣が川の中に飛び込んで行き、少年と同じ様に川の中に消えてしまうのを見て、今度は息が止まりそうになる。
自然の流れは魔力でどうにか成るものではない。
いくら彼が強くても、流されてしまってはどうにもならない。
川岸に座り込み、泣いている子ども達を抱きしめ、どのくらい時間が経ったのか、、、
「お嬢」
ジャルドに声を掛けられ、顔を上げると、下流の方から男の子を抱いてザイード様が戻って来る。
「ザイード様! 大丈夫ですか?」
「ええ、少し水を飲んでしまっていますが、意識を失っていたのがかえって良かった」
「ザイード様は?」
「大丈夫です」
「本当に? どこも怪我などしていませんか?」
「大丈夫ですよ、少し下った所に流れが緩くなった場所があって、上手く岸に上がることが出来ました」
「良かった」
本当に大丈夫なのかと彼の側から離れなくなっていると、安心させるようにザイード様の手がそっと頬に触れるので、その手に自分の手を重ねて彼が温かい事を確認する。
水に浸かっていた子どもも意識が戻ったので、服を脱がせ自分のフードで包む。
前日まで雨だったため、ジャルドが集めてくれた薪に何とか火をつけ、焚火を作るが暖を取るには程遠い。
「ジャルド、アルフレッド達を探して来てくれない? この辺りにいるのでしょう?」
アルフレッドと兵士達は、危険な場所を調べ、杭を打ち、領民が近づかないようにするため川の周囲を回っているはずだった。
「まだだいぶ下流っすね。屋敷の方が近いっすから、ちょっと行ってきます」
「おねがい」
ジャルドが行ってしまった後、なんとか子ども達の体温を上げようと、周囲から薪になるものを探す。
川に落ちた子はもちろんだが、残りの二人も濡れてカタカタと震えていて、このままでは体が冷え切ってしまうだろう。
「リディア、姿を変えても大丈夫だろうか?」
「ザイード様は大丈夫なのですか? 姿を変えるのは、魔力を使うのではないのですか?」
「それは気にする程ではないが、子ども達を怖がらせたくないからな」
「それは平気だと思いますが、、、」
するとザイード様の姿が狼に変わる。
大丈夫なのかと心配になるが、彼が頬を舐めるのでやっと安心することが出来る。
いきなり現れた獣にびっくりして声を無くしていた子ども達も、すぐに寒さの方が勝って側に寄って来るのでザイード様が温めてくれる。
しばらくして屋敷から馬車が迎えに来てくれたので、狼から離れなくなった幼い子ども達と一緒に馬車に乗り屋敷に戻る。
それからザイード様達は、ウエストリアの屋敷でも狼の姿でいる事が多くなった。
サイラス様は狼の姿で寛いでいると、使用人達が居間に食事まで用意するので、益々人に戻る様子がない。
ザイード様は変わらず人の姿でいる事が多いが、夕食の後、暖炉の前に行くと必ず狼の姿で側に寄り添ってくれる。
その穏やかな時間は、いつの間にかかけがえの無い時間になりつつある。
幼い兄妹が流れの早い川岸で泣いていて、今にも川の中に落ちそうになっている。
急いで側に行き、川岸から離そうとすると、川の中にも少し年長の男の子が、岩に引っかかった木に摑まっているのが見える。
「なんてこと」
普段なら問題なく歩ける川岸だけど、こうして雨が降った後は、水かさが増える。
風や水の魔力を使える者がいれば助ける事もできるが、私ではどうする事も出来ない。
どうしたら、、、と思った時、力尽きたのか男の子の手が離れ、川に中に消えて行くのが見える。
「いや」
声が漏れた瞬間、銀色の大きな獣が川の中に飛び込んで行き、少年と同じ様に川の中に消えてしまうのを見て、今度は息が止まりそうになる。
自然の流れは魔力でどうにか成るものではない。
いくら彼が強くても、流されてしまってはどうにもならない。
川岸に座り込み、泣いている子ども達を抱きしめ、どのくらい時間が経ったのか、、、
「お嬢」
ジャルドに声を掛けられ、顔を上げると、下流の方から男の子を抱いてザイード様が戻って来る。
「ザイード様! 大丈夫ですか?」
「ええ、少し水を飲んでしまっていますが、意識を失っていたのがかえって良かった」
「ザイード様は?」
「大丈夫です」
「本当に? どこも怪我などしていませんか?」
「大丈夫ですよ、少し下った所に流れが緩くなった場所があって、上手く岸に上がることが出来ました」
「良かった」
本当に大丈夫なのかと彼の側から離れなくなっていると、安心させるようにザイード様の手がそっと頬に触れるので、その手に自分の手を重ねて彼が温かい事を確認する。
水に浸かっていた子どもも意識が戻ったので、服を脱がせ自分のフードで包む。
前日まで雨だったため、ジャルドが集めてくれた薪に何とか火をつけ、焚火を作るが暖を取るには程遠い。
「ジャルド、アルフレッド達を探して来てくれない? この辺りにいるのでしょう?」
アルフレッドと兵士達は、危険な場所を調べ、杭を打ち、領民が近づかないようにするため川の周囲を回っているはずだった。
「まだだいぶ下流っすね。屋敷の方が近いっすから、ちょっと行ってきます」
「おねがい」
ジャルドが行ってしまった後、なんとか子ども達の体温を上げようと、周囲から薪になるものを探す。
川に落ちた子はもちろんだが、残りの二人も濡れてカタカタと震えていて、このままでは体が冷え切ってしまうだろう。
「リディア、姿を変えても大丈夫だろうか?」
「ザイード様は大丈夫なのですか? 姿を変えるのは、魔力を使うのではないのですか?」
「それは気にする程ではないが、子ども達を怖がらせたくないからな」
「それは平気だと思いますが、、、」
するとザイード様の姿が狼に変わる。
大丈夫なのかと心配になるが、彼が頬を舐めるのでやっと安心することが出来る。
いきなり現れた獣にびっくりして声を無くしていた子ども達も、すぐに寒さの方が勝って側に寄って来るのでザイード様が温めてくれる。
しばらくして屋敷から馬車が迎えに来てくれたので、狼から離れなくなった幼い子ども達と一緒に馬車に乗り屋敷に戻る。
それからザイード様達は、ウエストリアの屋敷でも狼の姿でいる事が多くなった。
サイラス様は狼の姿で寛いでいると、使用人達が居間に食事まで用意するので、益々人に戻る様子がない。
ザイード様は変わらず人の姿でいる事が多いが、夕食の後、暖炉の前に行くと必ず狼の姿で側に寄り添ってくれる。
その穏やかな時間は、いつの間にかかけがえの無い時間になりつつある。
0
あなたにおすすめの小説
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる