エルメニア物語 - 辺境の令嬢は大きな獣に愛される -

小豆こまめ

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第3章

15 トレポレの街(2)

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「リディア」
「オルグ様」

「いつも綺麗だね」
「まぁ、ありがとうございます。おじ様」

 急に人が現れたので護衛の兵が緊張しているが、それが誰か分かると安心した顔をする。

「お客人もトレポレの祭りを楽しんでおられるかな?」
「はい、おかげ様で」

「そうか、祭りは来月からが本番だが、、、今も賑やかで楽しいだろう?」
「そうですね、人の多さには驚かされています」

「まだ始まったばかりさ、これから人も店もどんどん増えていくからね、君達も僕のお姫様の警護をよろしく頼むよ」

 警護の兵に声をかけ、また人混みの中に消えてゆく。
 オルグ様は、相変わらずだ。
 声をかけて来た時も離れていく時も、ふっと存在が紛れて消えるようにいなくなる。

「彼は?」
「オルグ様ですか? 彼はこの街の責任者の1人で、リサ様の夫で、カイの父親ね」

「森で会った?」
「そう。それと、お父様にとってはリグと呼ばれる特別な人」

「リグ?」
「私とジャルドのようなものね」

「ウエストリア伯に護衛が必要とは思えないが」

「ふふっ、リグってね、繋がるという意味があるの。
 地の力が強い人は、長く側にいる相手と繋がることが出来るの。
 相手の位置と重なって感じるのだそうよ、お父様もそれは判るのですって面白いでしょう?」

 私には全く分からないけれど、ジャルドも同じような事を言っていた。

「父は、右手に剣、左手に火炎の魔道具を付けて戦うのだけど、離れた所にいる敵の把握が苦手なの、、、戦闘中、必ず父の側にいて、助けてくれるのだと聞いているわ」

「エリス殿も炎の使い手なのですか?」

「エリス様は、全てね。
 火、水、風、雷、それに地の力。全て使えるわ。さすがに癒しの力は無理みたいだけど」

「それは知りませんでした」
「父は、オルグ様がいなければ、自分より強いだろうと言っているわね」

「距離があれば負けないと?」
「まぁ、そう言う事かしら」

 父に距離や時間を与えると、おそらくどうにもならなくなる。

 真正面まともに戦うより、戦わずに勝つ事を考えるような人なので、とっても面倒な事になる。
 おまけに側にはオルグ様がいるのだから、きっと始末に負えない気がする。

「確かに、ウエストリア伯と争いたくは無いな」
「エリスおじ様よりも?」

「そうですね。
 エリス殿とも戦いたくは無いが、、、ウエストリア伯は、敵にしたくない相手ですね」

「ふふっ、父にとっては、最高の誉め言葉ね」
「しかし、地の力と言うのは、不思議なものですね」

「ザィード様達も、同じような事ができるのでしょう?」
「我々のやり方とは違いますね」

「そうなのですか?」
「私達が、音や匂いに敏感な事は?」
「覚えています」

「私達が相手を探す場合は、音や匂いによるもので、存在そのものを探す様なものではありません。
 番に対しても同じで、自分にとって特別なため、微かな匂いでも見つけられるようになるだけです。

 自分の魔力を与えていれば、その力を感じる事も出来ますが、そうで無ければ、感じることは出来ません。
 我々が番と離れる事を嫌うのは、そのせいかも知れませんね」

「ジャルド達とは、違うものなのですね」

「彼は貴方のリグになるのですか?」
「私には判らないけれど、そうなのかしら? ジャルドも私だけは、見つけられるって。
 小さい頃は、本当かしら? って不思議に思っていたから、時々隠れてみたりしたのよ」

「見つけられた?」
「ええ、必ず、どこにいても。 私には感じられないので、ちょっと悔しいわ」

「彼はいつから?」
「いつも側にいる様になったのは、五年前かしら。でも始めて会ったのは、もっと前よ、私が2歳か3歳の頃」

 ジャルドは私に捕まえられたと言うけれど、初めて会った頃の事はさすがに覚えていない。
 それでも私を『お嬢』と呼ぶ口の悪い人が、リグになってくれた事を後悔したことはない。
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