エルメニア物語 - 辺境の令嬢は大きな獣に愛される -

小豆こまめ

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第5章

18 告白

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 久しぶりに顔を見る。
 意識が戻ってから、彼は私から離れてしまい、明らかに距離を取っていた。

 その理由が判っていても、少し腹立たしいので殊更距離を取って話す。

「ありがとうございます、ザイード様。助けて頂いたと、ジャルドやロニから聞きました」

「体調は?」
「もう大丈夫です。もう毒は残っていないそうですし、後は体力が戻るのを待つだけです」

 しばらく私の中に彼の魔力が残っていたので、彼は知っているとは思うが言葉で伝えておく。

「うん」

「もう、いらっしゃらないかと思っていました」
「うん」

 近づいてくると、愛おしいと言うように、そっと頬に指が触れる。

「私が側にいるのは嫌ですか?」
「嫌なわけがない、だが、いつか貴方はいなくなる」

「ザイード様、私には貴方が抱える不安を取り除いてあげる事はできません。
 それでも一緒にいる間は、幸せにしたいと思っていますし、幸せになりたいとも思っています。それだけではダメですか?」

「そうだな、、、そなたを離したく無いのだから仕方がない」

 それが全てだった。
 彼が私を諦められないのなら、私も離れるつもりはない。

「ザイード」

 自分に触れていた指に手を重ね微笑むと、その手で抱きしめられた。

「愛している、リディア」

「ふふっ」

 嬉しくて笑っていると、不思議そうに彼が尋ねる。

「どうした」
「ザイード様が大切に思って下さるのは分っていましたけど、言葉にして下さるのは初めてです。
 思っていた以上に嬉しいものなのですね」

「そう思っているのなら、私にも言って欲しいな」
 
 両手を広げ、少し困ったような顔をするので、首に両手を回して耳元で伝える。

「私も、愛しています、ザイード」

 そのままぎゅっと抱きしめられた、けっして離さないというように。

 やっと腕の中から解放したかと思うと、今度は抱き上げられ、ガゼボに連れて行かれる。

 日差しが強くなって来たからかと思えば、そのまま彼の膝の上に座らされ、額や頬に彼の唇が触れてくる。
 愛おしくて仕方ないと言うように。

「私といる事で、そなたも辛い思いをするぞ」
「私が人だからですか?」
「そうだ」

「気になりますか?」
「リディアが辛いのは嫌だ」

「どこにいても辛いことはありますわ、傷つくことも。現に、安全だと思っていた場所で大変な目に合いましたし」

「解っている。だが、ここに居れば考えられない事だ」
「辛いことや大変な事があっても、それ以上に楽しい事や嬉しい事があれば良いのです」

「そうかも知れないが」
「では、辛いことがあった時は、ザイード様が慰めて下さい」

「私が?」
「はい」

「私にできる事など」
「こうして抱きしめて下されば良いのですわ」

「そんな事で良いのか?」
「ザイード様しか出来ない事です。もちろん嫌だと言うなら他の方に、、、」

「それはダメだ」
「ふふっ」

 甘える様に彼に身を預けると、そっと抱きしめて髪を撫でてくれる。

「これで良いのか?」
「はい」

 この時から、こうして甘えると彼が必ずそっと抱きしめてくれる様になった。

 彼の指が唇にふれたかと思うと、今度は唇が重なる。
 軽く、そっと、、、そして、また額にとふれては、困ったように笑う。

 彼が魔力を与えてくれていたのは聞いているが、意識のない間なので、私には初めてのことだった。
 
 ぼんやりと彼の腕の中で唇に指をふれ、唇が重なった時の事を考えていると、唸るような声が聞こえて、また唇が重なる。
 先ほどとは違い、もっと強く。

「だめだ、貴方は体調も戻っていない、それに、まず伯にお許しを頂かないと」

 ザイード様の言葉で少し冷静になる。
 カシム様との婚約が解消されたとは言え、ザイード様と何か決まっている訳ではない。

 ロニは気を使って離れているが、ここは屋敷の庭園で人目もある。
 自分が何をしていたのか考えると、顔から火が出るくらい恥ずかしい。
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