【オメガバース】替えのパンツは3日分です

久乃り

文字の大きさ
24 / 66

24.コレがアルファ様の結論かぁ

しおりを挟む
24
「へ?」

 突然のことに驚く貴文をよそに、義隆はさっさと準備を進めていく。まずは貴文に膝にブランケットをかけ、それからアイマスクを取り出した。

「パソコン操作で目が疲れますよね?これで癒しましょう」

 貴文が理解する前にアイマスクをかけてきた。じんわりと温かいものが貴文の目の周りを優しく包み込む。

「はぁぁ」

 思わずおっさん臭い声が出てしまったのは仕方がないことだろう。だって29歳だ。三十路一歩手前のアラサーなのだ。

「シート、熱かったりしませんか?」

 耳元で義隆の声がした。言われて考える。そういえば、座った瞬間嫌な感じがしなかった。高級感溢れるシートだったから、ドキドキしながら腰掛けたのだ。だが、以外にも座り心地がよくふんわりと包み込まれるような座り心地だった。

「いや、全然。凄く気持ちいい、です」

 こんな座り心地のいいシートに座ったのは初めてだった。いつも乗せてもらう姉の車は軽自動車で、シートはベンチシートだ。いい歳をして助手席に座ると肩がぶつかりそうでなんだか気恥しくなる。父親の車はミニバンだ。10年以上乗っている。買い出しに便利だからと乗り続けているが、後部座席は貴文たちが乱暴に乗っていたから座り心地はかなり悪い。母親も姉と同じく軽自動で、とにかく小さくて狭い。電車通勤をしている貴文は車を持っていないという訳だ。
 そんなわけで、貴文にはシートが個別に分かれているということが既に衝撃的だった。しかもシートが暖かくなるなんて驚きだ。冬は車がなかなか温まらないと姉がボヤいていたのを思い出した。

「良かった。熱くなったら言ってくださいね。温度を下げますから」

 温度調整までできると知って、貴文はますます驚いた。乗ったことは無いがまるで飛行機のファーストクラスみたいだと思ったのだった。

「気持ちいい」

 側頭部を大きな手に包み込まれてやさしく揉まれた。偏頭痛持ちでは無いけれど、そんなところも凝るものなのだと初めて知った。

「ゆっくり揉みほぐしていきますから、眠くなったら寝ちゃってください」

 なんて贅沢な。と、思ったのもつかの間、貴文は安らかな寝息を立てていた。冬になると電車のシートが温かくなるから、座ったら絶対に寝過ごすと帰りはいつも立っている貴文である。全身が温かくなり、オマケにアイマスクまでつけてしまったら、それはもう寝るしかないのだ。

「寝ちゃいましたね。杉山さん」

 義隆は貴文が眠ったのを確認すると、医師に言われた箇所を念入りにマッサージし始めた。まずは首の付け根から、まともに見てしまえば、噛みたくて方がないぐらい魅力的な項だ。そこを親指の腹でゆっくりと押し上げるようにして少しずつ下に下がっていく。オイルを使えば滑りはいいが、それでは貴文の私服を汚してしまう。
 だから、アイマスクに染み込ませたオイルで嗅覚を刺激することにした。なんと言ってもアルファとオメガはお互いを香りで認識するのが常だ。義隆は自分のフェロモン近い香りを配合させて、オイルを用意した。まずはリラックスした状態で匂いに慣れてもらう作戦だ。
 もちろんそれとなく義隆だってフェロモンをゆっくりと放つのを忘れない。医師が言うことが正しければ、貴文の中に眠るオメガは、義隆のアルファを感じ取ったはずなのだから。

「杉山さん、俺の事を感じてくださいね」

 義隆は祈りながらマッサージをするのだった。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

うそつきΩのとりかえ話譚

沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。 舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。

変異型Ωは鉄壁の貞操

田中 乃那加
BL
 変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。  男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。  もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。  奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。  だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。  ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。  それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。    当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。  抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?                

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

神託にしたがって同居します

温風
BL
ファンタジー世界を舞台にしたオメガバースです。 アルファ騎士×美人ベータ(?)  【人物紹介】 受け:セオ(24歳)この話の主人公。砂漠地帯からの移民で、音楽の才がある。強気無自覚美人。 攻め:エイダン(28歳)王室付き近衛騎士・分隊長。伯爵家の三男でアルファ。料理好き。過労気味。 【あらすじ】 「──とりあえず同居してごらんなさい」 国王陛下から適当な神託を聞かされたセオとエイダン。 この国にはパートナー制度がある。地母神の神託にしたがって、アルファとオメガは番うことを勧められるのだ。 けれどセオはベータで、おまけに移民。本来なら、地位も身分もあるエイダンと番うことはできない。 自分は彼の隣にふさわしくないのになぜ? 神様の勘違いでは? 悩みながらも、セオはエイダンと同居を始めるのだが……。 全11話。初出はpixiv(別名義での投稿)。他サイト様にも投稿しております。 表紙イラストは、よきなが様(Twitter @4k7g2)にお願いしました。 追記:2024/3/10開催 J. Garden55にて、『神託にしたがって同居します』の同人誌を頒布します。詳しい内容は、近況ボードにまとめます。ご覧頂ければ幸いです!

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

【完結】エデンの住処

社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。 それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。 ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。 『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。 「兄さん、僕のオメガになって」 由利とYURI、義兄と義弟。 重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は―― 執着系義弟α×不憫系義兄α 義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか? ◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·

処理中です...