安心してください。俺は課長のストーカーですから

久乃り

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第9話

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「ご満足いただけたようで何よりです。課長」

 呼吸を整えていた直江の息が一瞬止まった。そしてゆっくりと瞼を開ければ、自分の顔を覗き込むような体勢の部下、安倍の顔があった。

「……安倍くんっ」

 気まずい。非常に気まずい。なにしろ久しぶりに味わった達成感の後の賢者タイムである。余韻に浸りたいところに、部下の顔である。と、言うより、今この状況を説明しろと言われたら、赤面ものである。いや、説明なんてできるわけが無い。四肢を投げ出し、浅い呼吸を繰り返す。しかも全身は背後にいる部下の安倍に預けきっている。ついでにいえば、頭を安倍の肩にもたれかけ、安倍の手が優しく直江の髪を撫でているのだ。
 なんと甘美な空気だろうか。
 本来の賢者タイムとはまるで違う。逞しい腕に抱かれて余韻に浸るなんて、なんて、素晴らしい経験だろうか。

「沢山出ましたね。ちゃんと男の子でしたよ」

 そう言って安倍がこめかみ付近に唇を落とす。そんな甘く優しいキスなんて、直江の経験上かつてない。呼吸が浅いのは賢者タイムだからである。決して胸が高鳴ってなどいない。直江は自身にそう言い聞かせることにした。だがしかし、直江を見つめる部下の瞳が怪しく光った。

「ところで、課長。前を向いてみませんか?」

 言われるままに、安倍の顔から視線を動かし、正面へと向けてみる。自宅のリビングであるから、部屋の配置ぐらいは覚えている。リクライニングソファーの前にあるものは、テレビである。大画面で映画を楽しむために設置した、サブスクも観られる高画質の大型液晶TVである。

「!!」

 直江は言葉を失った。
 リラックスタイムのために奮発したテレビが、よもや、まさか、まさかのまさかである。

「大きなモニターにぜぇんぶ映ってますね」

 黒いテレビ画面に映っているのは紛れもなく直江と安倍である。二人仲良くソファーに座り、リクライニングに両脚を投げ出している。しかも、二人揃って下半身が丸出しである。ついでにいえば、直江の部屋着がまくり挙げられていて、臍どころか胸まで顕になっていた。その姿が、ハッキリと目の前のテレビ画面に映し出されていたのである。

「う、あ……」

 叫び出しそうな自分の口を直江は慌てて塞いだ。口は塞いだが、両目は見開いたままである。驚愕な事実を受け入れられなくて、直江は瞬きをすることさえ忘れてしまった。最早賢者タイムなど遥か遠い過去である。

「課長の息子くん。また隠れちゃいましたね」

 目を見開いたままテレビ画面を見つめる直江の股間に安倍の手が伸び、繁みの中に隠れた直江の愚息を探し出した。テレビ画面に映し出された直江の愚息は、くったりとしてはいるものの、画面越しでもわかるほどにテラテラと輝いていた。
 確かに、黒い画面は光をよく反射する。使い方によっては鏡のような効果もある。そこまでハッキリとでは無いが、それでも、嫌でも、目の前にある巨大なテレビ画面に映し出された自分の姿は衝撃的であった。まさか起動していないテレビのモニター画面をこの様な使われ方をされるだなんて思いもよらなかった。何しろ、黒い画面である。テラテラと光る自分の愚息がなんだ大層ご立派な代物に見えてしまう。やはり黒はそれだけで素晴らしいということなのだ。
 ゴクリ
 喉が鳴った。
 はるか昔の記憶が呼び覚まされる。妻と初めて入った歓楽街のラブホテルの天井は鏡張りだった。初々しい妻が驚いて悲鳴を上げたのがまた嬉しかったものである。そして今、悲鳴を上げそうになったのは直江である。が、新たなる興奮が湧き上がって来たのは間違いなかった。

「課長の息子さん、元気になってきましたね。どうしてでしょう」

 安倍の手のひらにもたれ掛かるようにしていたはずの直江の愚息が、ピクピクと活力を取り戻してきた。それをモニター越しに直江は確認してしまった。黒い画面に映し出された自分の愚息は、ヌルヌルとした光を放ちながら懸命に繁みの中から顔を出してきたのだ。視覚による興奮作用がここまであるとは、直江雅治はこの歳にして初めて知ったのであった。

「今度は一緒に達きましょうね。課長」

 耳元で安倍の声がした。直江の顔は真っ直ぐ前を向いたままである。客観的に自分が何をされ何をするのか、直江は目が逸らせなくなっていた。

「ぬぁあ」

 全身を安倍に預けていたとはいえ、面白いように身体の自由が効かなかった。安倍の膝により直江の足が驚くほどに開脚されている。両手は自由なはずなのに、空を掴むしかできずにいた。そして、手の甲から安倍の掌の温もりを感じたかと思えば、そのまま自分の股間に誘導されていた。

「一緒に、しましょうね。課長」

 ねっとりとした安倍の声が耳朶に響いた。されるがままに自分の掌で自分の愚息と安倍の息子を握らされてしまった。抗うことぐらい容易いだろうに、何故かできない。しかしながら、それを不思議とも思わず、直江は安倍と一緒になって手を動かした。

「少し足しましょう」

 安倍が時折尖端にぬめりけのある液体をかけてくる。一瞬の冷たさがなんとも言えない刺激となり、また一段と直江の愚息が張りを取り戻す。

「くっうう」

 先程とは違い、随分と時間がかかる。理由は明白で、刺激が足りないからだ。だからと言って自分の愚息だけに刺激を与えることができないのがもどかしい。何より、安倍の手から与えられる刺激が尾てい骨になんとも言えない甘い痺れを与えてくるのだ。それがもっと欲しくて直江は腰を動かし愚息に安倍の指先が当たるようにしていた。もちろん、そんな事は安倍にはバレていて、鏡のように二人の姿を映し出す暗いモニターを見つめながら、安倍は何度も舌なめずりを繰り返した。

「いいですね。課長。すっかり男の子を取り戻しちゃいましたね」

 直江が無意識に腰を動かすのに合わせて、安倍も遠慮なく腰を動かしていた。下から突き上げるような動きをすれば、長年の電車通勤で引き締められた直江の小ぶりな尻が安倍の尾てい骨にぶつかってきた。

「最高です。課長。前をしっかり見てください」

 安倍の手が直江の顎を掴んでしっかりと目線を前に固定した。意識があちこちに飛んでいた直江は、その瞬間に正気に返った。そして、暗いモニターに映し出された自分の姿を見て、さらにはヌラヌラと鈍い光を放つ愚息をその隣に愚息よりも反りがよく赤黒いエラをもった安倍の息子が目に飛び込んできた。

「んっ、んんぅ」

 視覚の暴力に耐えきれなくなった直江は、二度目の達成感を得た。愚息から感じる熱い脈は安倍の息子から伝わってくるものだ。なんと力強いのだろうか。直江は静かな興奮を覚えつつ、年齢的な体力もあり、そのまま目を閉じてしまったのだった。
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