【完結】英雄が番になるって聞いたのになんか違う

久乃り

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第12話 あるいは恋バナかも知れない

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 Ωの発情期に飲む薬は、割と種類があるらしい。
 授業でちゃんと教えてくれた。
 俺だけたまたま発情してしまったため、俺の発情期明けを待って、授業で詳しい話をしてくれた。

「リュートは飲んだんだよね?」
 オウリルが興味津々で聞いてきた。

「うん、今回飲んだやつ、俺にはあってた」

「それって、母君が飲んでるから、ってこと?」

「多分そうだ。母上の指示だ」
 俺がそう言うと、ガゼルが困った顔をした。

「俺、どうしよう」

 βの間に生まれたガゼルは、親のお勧めとかそう言うとないもんな。

「βの間に産まれたΩは、統計がとられているからそれを参考にした方がいいよ」
 オウリルが、教科書を開いてガゼルに指し示す。

「ほんとだ」

 貴族のΩは、基本的にΩから産まれているので、母親が使っている薬がそのまま合う場合が多い。それなので、βの間に産まれたΩは、体質に合う薬の統計が取られているようだ。
 ガゼルは、一番人気の薬から、試すことになるんだろう。

 優秀な侍従に管理されて、発情期が、終わったら羞恥でたまらないんだろうな、きっと。
 俺は母上がいてくれたから・・・つか、母上にまで俺のフェロモンを嗅がれて、変な声聞かれていたのかと思うと、それはそれで、いたたまれなかった。

「ねぇ、リュート」
 オウリルが声を潜めて俺を呼ぶ。

「なんだよ」

「式典で発情したってことはさぁ、好みの匂いがあったの?」

 さすがはオウリルである。発情の条件とかちゃんと分かっている。
 でも、隣でガゼルはキョトン顔だ。

「うん、なんかこう、いい匂いがしたんだよな。発情期の間も、なんか思い出すぐらい」

「それって、運命の番かな?」

 身を乗り出して聞いてくるオウリルは、なんだか可愛い。恋バナしてる女子みたいだ。
 まぁ、見た目だけならか弱そうで、綺麗な髪の毛が長くて、お淑やかな美人なんだよな、オウリルは。

「うん、そう思いたい。でもさ、俺たちって、国が決めた相手に嫁ぐんだろ?」

「いやいや、リュートは上位貴族の子弟だから、逆に指名できるはずだよ」

「え?そうなの?」

 俺は普通に驚いた。母上の言い方だと、俺欲しさに功績を上げた騎士が、俺を褒美として嫁に貰う感じがしたんだよな。

「できるよ。だって、家格があるもの」

 オウリルが力説する。
 上位貴族である以上、家格の差がある婚姻を拒否できるらしい。格下すぎる家には嫁がせない。って、拒否権があるそうだ。
 まぁ、確かに俺も下級貴族の所には嫁ぎたくはない。生活水準ってものがあるからな。雑な扱いも受けたくないし。

「一応、母上には話はしといたんだ」

「それ正解だよ、リュート」

 オウリルはビシッと俺の顔に人差し指を向けてきた。

「婚姻の打診は家長に行くからね。運命の番かもってあるなら、そこは息子の幸せのために動いてくれるはずだよ」

 オウリルは、どうやら運命の番に憧れているようだ。
 まぁ確かに、運命の番を扱った恋愛小説多いもんな。この学園にきて、ガゼルにやたらと勧めまくっているようで、ガゼルはそこから学んだとか言っていたよな。

「いいなぁ、リュート。俺なんか、貴族に嫁げるってだけで嬉しいけど」

 ガゼルの本音はこれだ。
 平民の身でありながら、Ωであるため、国から保護されて優秀なαに嫁げる。ものすごい幸運だ。

 何より、Ωの身の安全は国が保証しているため、3ヶ月毎に健康診断を受けられるのだ。拒否は出来ない。発情期の確認から、薬の相性、体に傷など付けられていないかなど、念入りに見てもらえるため、Ωが虐待などの悲惨な目にあうことはなくなった。
 まぁ、だからこそ、運命の番に、憧れちゃうんだよな。

「ガゼルは、気になる匂いはなかったの?」

 オウリルは興味津々でガゼルに聞いてくる。なにせ、ガゼルは式典の最中、雄叫びを聞く度に震えていたほどだ。熱波となって飛んでくるαのフェロモンを全身で受け止めていたに違いない。

「そんなのよくわかんない。なんか、全身で痛かったって言うか?なんか飛んできてた、みたいな?」

 実感のないガゼルには、何かがぶつかってきたって感じだったらしい。そうなると、αのフェロモンは痛いのか?興味深い話だ。

 「相性の悪いαのフェロモンは、体が受け付けないから痛いのかなぁ?」

 オウリルがまたまた興味深いことを言う。

 「相性の良いαのフェロモンは嗅いでみると心地いいからな。Ωのフェロモンも甘いとか、美味しそうとか、言うもんな」

 俺も思ったことを口にした。うん、あの時嗅いだ匂いに、ものすごくいい匂いがあって、もっと嗅ぎたかったんだ。

 「前列にいた人なんだから、上位貴族で間違いないし、その人だってリュートのフェロモンに反応したに違いないよね」
 オウリルはものすごく楽しそうだ。

 「戦争が終わったら、リュートは運命の番と結婚かぁ」

 なんか、俺よりオウリルの方がうっとりしているけど、いいのか?それで。
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