【完結】英雄が番になるって聞いたのになんか違う

久乃り

文字の大きさ
13 / 19

第13話 ついに来た?

しおりを挟む
 やっぱり戦争は長かった。
 戦地で負傷した騎士が、時々帰ってくると、俺たちがその治療にあたった。
 手足の欠損とかがないのは、俺たちが作った御守りのおかげらしい。それでも怪我はしてしまうのは仕方がないことと割り切らないとならない。

 敵国はだいぶ攻め込まれて疲弊はしているらしい。まぁ、王様のワガママみたいな理由で戦争してるんだから、可哀想だよな。
 怪我をして戻ってくるのが、βの騎士ばかりなのは、やはりαの騎士が優秀ってのを裏付ける。

「これは、やっぱり、英雄が生まれるのかな?」

 オウリルはものすごく興奮して言ってくる。
 どうしても俺の運命の番が、英雄となって俺に求婚するってストーリーが出来上がってしまっているようだ。
 俺はそこまでの、夢物語は望んじゃいないんだけどな。

「だいたい、英雄の条件ってなんだよ?」
 俺は馬鹿らしくて、オウリルに聞いてみる。

「そーだなぁ、やっぱり戦争を終わらせられるだけのか何かをした人だよね」

「なにかって?」

「うーん、やっぱり敵国の王様の首をとる?」

 オウリルはドヤ顔で言うけれど、それってめちゃくちゃ難易度高いじゃん。

「確かに、それをすれば戦争終わるだろうけどさぁ」

 俺がいまいち乗り気でないのが分かると、ガゼルも口を挟んできた。

「でも、敵国の兵士たちは、もともと戦争をしたくなかったって、聞きますよ?」

「ああ、それな」

「王様のワガママで、キレイなΩが欲しいってのが発端らしいよね」

 そう言うオウリルはうんざりとした顔をしている。まぁ、はたから見たら綺麗なΩと言えば、オウリルだよね?って感じだからな。
 この学園のなかで、ダントツにオウリルは美人だ。3年生になって、オウリルは大人の色気も出てきたから、もはやΩに敵無しって感じになっている。

 まぁ、俺とはガゼルは、小柄で可愛らしい感じのΩではある。そこまで美人にはなれなかった。やっぱり髪の毛を、伸ばさなかったのが敗因なんだろうか?
 まぁ、俺としては、俺のフェロモンに惚れてくれるαと、番えたらいいのにな。って、ぐらいに考えることにしてある。

 もうそろそろ3年も経つので、あの式典で、俺が嗅いだフェロモンの持ち主であるαだって、俺の事忘れてると思うんだよね。なにせ戦地にいるんだから。

 そんなわけで、俺はΩになって心底良かった。って日々を過ごしていた。だって、戦争に行かなくて済んだし、ギチギチに勉強させられて、上位貴族だから成績は上位を取らないと、とかのプレッシャー感じないで済んだ。

 まぁ、ダンスとか行儀見習いとか、外国語とかは大変だったけど、優秀なΩになるためだったから、順位争いがなかったのが一番良かったな。
 楽しい学園生活が送れたと思う。

 そんなわけで、もうすぐ卒業だなぁ。



ぼんやりと過ごしていたいた冬の終わり事だった。

「戦争、終わったらしいよ!」
 ガゼルがサロンに飛び込んできた。

 ちょっとはしたないと言われそうだけど、俺たち男だし。足音をめちゃくちゃ立てて走ってきたもんだから、サロンにいた全員がガゼルに注目した。

 ガゼルも、ここまで来ると見られることに慣れてきていて、30人程度の目線が集中してもなんとも思わなくなっていた。まぁ、学園1の美人であるオウリルと一緒にいるから、免疫の付き方も半端ないよな。

「え、マジで?」

 答える俺も俺。お淑やかで上品な喋り方が未だにできない。上位貴族の子弟であることに、あぐらをかいているのは否定しない。

「じゃあ、ついにリュートの運命の番が現れた?」

 オウリルの夢みる乙女思考は、まだ健在だった。

「そう、それ!」
 ガゼルが指をパチンと鳴らす。

 こんなことするガゼルもなかなか、おしとやかにはなれないようだ。

「英雄きた?」
 オウリルが嬉しそうだ。

「そう、それなんだよ!聞いてよ、リュート!」

 ガゼルが、めちゃくちゃテンション高い。走ってきたからか、興奮しているからか、それとも両方なのか、ガゼルの頬は、上気して赤くなっている。

「敵国の王様とったらしいよ!」
 ガゼルが勢いよく言うと、オウリルが反応した。

「英雄だ!」
 言うなり何故かガゼルとオウリルが抱き合っている。

「リュートの運命の番!」
 俺を置いてきぼりにして、二人で盛り上がっている。

「リュート、今の気持ちは?」
 二人揃って聞いてくるけど、俺はイマイチなんだよな。

「いや、あの時のフェロモンのαがそうだと限らないじゃん」

「そんなことないよ!王様とったんだよ?」

 オウリルは、だいぶ興奮しているようだ。まぁ、待ちに待った英雄誕生だからな。

 「その騎士が英雄と言って間違いないでしょ!」

 ガゼルも興奮していた。
 兎にも角にも、英雄が生まれたのは間違いない。このくだらない戦争を、終わらせたのだ。

「絶対あれだよね。褒美を与えるって言われたら、Ωの番を、って言うやつだよね」

「ないない」

「あるよ、だってαだよ!」

 オウリルの、乙女思考はとまらない。どーしても、どーしても、英雄には運命の番を得て欲しいようだ。そんなオウリルの力説を、サロンにいる俺以外が全員支持しているのだからたまらない。

 そう、なぜか学園の生徒が揃いも揃って、俺の運命の番が英雄になる。って信じているのだ。
 あの日、発情期を起こした俺を、運命の番のフェロモンに当てられてのことと、語り継がれてしまっているわけだ。

 これって、戦地の騎士たちにも伝わっているのだろうか?だとしたら、下手に俺を番に指名できないよな。お互いものすごいプレッシャーだ。

 「まぁ、なんにしたって、その英雄とやらが俺を指名したのなら、俺の家から連絡が来るだろう」

 前に言っていた、家格の問題があるのなら、絶対に打診があるはずだ。公の場で恥を晒すわけにはいかないからな。

 まぁ、一番怖いのは、家長である親父が納得して俺には連絡が来ない。って、パターンだよな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった

angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。 『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。 生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。 「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め 現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。 完結しました。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

俺を注意してくる生徒会長の鼻を明かしてやりたかっただけなのに

たけむら
BL
真面目(?)な生徒会長×流されやすめなツンデレ男子高校生。そこに友達も加わって、わちゃわちゃの高校生活を送る話。 ネクタイをつけてこないことを毎日真面目に注意してくる生徒会長・伊佐野のことを面白がっていた水沢だったが、実は手のひらの上で転がされていたのは自分の方だった? そこに悪友・秋山も加わってやいのやいのにぎやか(?)な高校生活を送る話。 楽しんでいただけますように。どうぞよろしくお願いします。

撫子の華が咲く

茉莉花 香乃
BL
時は平安、とあるお屋敷で高貴な姫様に仕えていた。姫様は身分は高くとも生活は苦しかった ある日、しばらく援助もしてくれなかった姫様の父君が屋敷に来いと言う。嫌がった姫様の代わりに父君の屋敷に行くことになってしまった…… 他サイトにも公開しています

α主人公の友人モブαのはずが、なぜか俺が迫られている。

宵のうさぎ
BL
 異世界に転生したと思ったら、オメガバースの世界でした。  しかも、どうやらここは前世の姉ちゃんが読んでいたBL漫画の世界らしい。  漫画の主人公であるハイスぺアルファ・レオンの友人モブアルファ・カイルとして過ごしていたはずなのに、なぜか俺が迫られている。 「カイル、君の為なら僕は全てを捨てられる」  え、後天的Ω?ビッチング!? 「カイル、僕を君のオメガにしてくれ」  この小説は主人公攻め、受けのビッチング(後天的Ω)の要素が含まれていますのでご注意を!  騎士団長子息モブアルファ×原作主人公アルファ(後天的Ωになる)

わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

水ノ瀬 あおい
BL
 若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。  昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。  年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。  リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。  

処理中です...