37 / 52
目撃者の兄弟(閑話)
しおりを挟む
今日はバイトも休みだし、早く帰ってゲームだな。
高校の門を出て足早に歩いていると制服を着た警官とスーツを着た男二人が話しかけてきた。
「小林優斗君だね? 僕を覚えているかな」
「ああ、あの女の人が倒れていた時の・・警察の人ですね」
「うん、良かった覚えててくれて。今日はまた話を聞かせて欲しいんだけど大丈夫かな? 今日はバイトの日?」
「いえ、休みです。だけどテストが近いから少しだけなら」
「そうか。じゃあまた同じ質問をするかもしれないけど、ちょっと時間を貰うね」
スーツの人は吉田さん、制服の人は坂本さんと言っていた。俺ら3人は近くの喫茶店の奥まった場所で話をした。
大体は同じような質問だった。あの土手で誰かとすれ違わなかったか・・等々。
あの日俺はバイト帰りでいつもの土手を自転車で走っていた。
寒かったからコンビニで買った肉まんを食べながら走っていたんだけど、食べ終わって包み紙をズボンのポケットにねじ込もうと視線を下げた時に視界の端に白っぽい物が映ったんだ。
橋の下に白っぽい物・・。
なんとなく気になって自転車を止めて降りて行ってみたら女の人が倒れている。ホームレスとかじゃなさそうだし、声を掛けてみたが反応がない。スマホの明かりで照らしてみたら額に血が流れていた。俺はびっくりして1歩下がったけど、こういう時は救急車だよな。そう思って119番に電話した。
10分位で救急車とパトカーが来て、その後親が呼ばれた。父さんと母さんと一緒に警察の人に詳しい話をして、やっと僕は開放された。
あの女の人は生きてたみたいだ。声をかけても動かなかったから、もしかして死んでるのかもって思ったけど・・。きっと土手から転んで下に落ちたんだろうな。
____
「ただいま~腹減ったあ」
「兄ちゃんお帰り」
「優斗、もうすぐご飯だから着替えて来て。陸斗もゲームはもうしまって」
「お父さんは?」
「今日は遅くなるんですって。だから早く食べちゃいましょ」
俺と陸斗の部屋は一緒。俺たちは小さなアパートの2階に住んでるから子供部屋はひとつしかない。
「陸斗、ゲームどこまで進んだ?」
「まだ全然だよ、でもすぐ兄ちゃんに追いつくかな」
「ちぇっ、もう少し早く帰ってこれたらなあ、俺もご飯前に少しやる時間あったのに」
「どうしたのさ?」
「警察の人がまた話を聞かせてくれって、喫茶店に連れて行かれた」
「・・・・」
陸斗は10歳。俺の6個下だ。いつもなら喫茶店で何飲んだの、とかうるさく聞いてくるのに今日は無口だ。
「どうしたんだよ?」
「・・兄ちゃんが見つけた女の人って、橋の下で倒れてたの?」
「そうだよ、病院に運ばれたんだって。でも死んでないぞ」
「死んでたら、兄ちゃんは『死体』を発見した事になるの?」
「そうだけど、死んでないから死体じゃないかな」
「お前、怖いのか?」
「こ、怖くないよ」
「でも僕、怒られるかな?」
「誰に?」
「父さんに」
「何やったんだよ?」
「・・・・」
「俺が一緒に謝ってやるから言ってみろよ」
「僕、父さんのビデオカメラをこっそりいじっちゃったんだ」
「壊したのか?」
「壊してないよ、まだ・・ここにある・・」
陸斗は俺たち二人の秘密の隠し場所にしてある、押し入れの仕切りの裏から小型のビデオカメラを取り出した・・。
高校の門を出て足早に歩いていると制服を着た警官とスーツを着た男二人が話しかけてきた。
「小林優斗君だね? 僕を覚えているかな」
「ああ、あの女の人が倒れていた時の・・警察の人ですね」
「うん、良かった覚えててくれて。今日はまた話を聞かせて欲しいんだけど大丈夫かな? 今日はバイトの日?」
「いえ、休みです。だけどテストが近いから少しだけなら」
「そうか。じゃあまた同じ質問をするかもしれないけど、ちょっと時間を貰うね」
スーツの人は吉田さん、制服の人は坂本さんと言っていた。俺ら3人は近くの喫茶店の奥まった場所で話をした。
大体は同じような質問だった。あの土手で誰かとすれ違わなかったか・・等々。
あの日俺はバイト帰りでいつもの土手を自転車で走っていた。
寒かったからコンビニで買った肉まんを食べながら走っていたんだけど、食べ終わって包み紙をズボンのポケットにねじ込もうと視線を下げた時に視界の端に白っぽい物が映ったんだ。
橋の下に白っぽい物・・。
なんとなく気になって自転車を止めて降りて行ってみたら女の人が倒れている。ホームレスとかじゃなさそうだし、声を掛けてみたが反応がない。スマホの明かりで照らしてみたら額に血が流れていた。俺はびっくりして1歩下がったけど、こういう時は救急車だよな。そう思って119番に電話した。
10分位で救急車とパトカーが来て、その後親が呼ばれた。父さんと母さんと一緒に警察の人に詳しい話をして、やっと僕は開放された。
あの女の人は生きてたみたいだ。声をかけても動かなかったから、もしかして死んでるのかもって思ったけど・・。きっと土手から転んで下に落ちたんだろうな。
____
「ただいま~腹減ったあ」
「兄ちゃんお帰り」
「優斗、もうすぐご飯だから着替えて来て。陸斗もゲームはもうしまって」
「お父さんは?」
「今日は遅くなるんですって。だから早く食べちゃいましょ」
俺と陸斗の部屋は一緒。俺たちは小さなアパートの2階に住んでるから子供部屋はひとつしかない。
「陸斗、ゲームどこまで進んだ?」
「まだ全然だよ、でもすぐ兄ちゃんに追いつくかな」
「ちぇっ、もう少し早く帰ってこれたらなあ、俺もご飯前に少しやる時間あったのに」
「どうしたのさ?」
「警察の人がまた話を聞かせてくれって、喫茶店に連れて行かれた」
「・・・・」
陸斗は10歳。俺の6個下だ。いつもなら喫茶店で何飲んだの、とかうるさく聞いてくるのに今日は無口だ。
「どうしたんだよ?」
「・・兄ちゃんが見つけた女の人って、橋の下で倒れてたの?」
「そうだよ、病院に運ばれたんだって。でも死んでないぞ」
「死んでたら、兄ちゃんは『死体』を発見した事になるの?」
「そうだけど、死んでないから死体じゃないかな」
「お前、怖いのか?」
「こ、怖くないよ」
「でも僕、怒られるかな?」
「誰に?」
「父さんに」
「何やったんだよ?」
「・・・・」
「俺が一緒に謝ってやるから言ってみろよ」
「僕、父さんのビデオカメラをこっそりいじっちゃったんだ」
「壊したのか?」
「壊してないよ、まだ・・ここにある・・」
陸斗は俺たち二人の秘密の隠し場所にしてある、押し入れの仕切りの裏から小型のビデオカメラを取り出した・・。
4
あなたにおすすめの小説
【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~
Mimi
恋愛
若様がお戻りになる……
イングラム伯爵領に住む私設騎士団御抱え治療士デイヴの娘リデルがそれを知ったのは、王都を揺るがす第2王子魅了事件解決から半年経った頃だ。
王位継承権2位を失った第2王子殿下のご友人の栄誉に預かっていた若様のジェレマイアも後継者から外されて、領地に戻されることになったのだ。
リデルとジェレマイアは、幼い頃は交流があったが、彼が王都の貴族学院の入学前に婚約者を得たことで、それは途絶えていた。
次期領主の少年と平民の少女とでは身分が違う。
婚約も破棄となり、約束されていた輝かしい未来も失って。
再び、リデルの前に現れたジェレマイアは……
* 番外編の『最愛から2番目の恋』完結致しました
そちらの方にも、お立ち寄りいただけましたら、幸いです
逆行したので運命を変えようとしたら、全ておばあさまの掌の上でした
ひとみん
恋愛
夫に殺されたはずなのに、目覚めれば五才に戻っていた。同じ運命は嫌だと、足掻きはじめるクロエ。
なんとか前に死んだ年齢を超えられたけど、実は何やら祖母が裏で色々動いていたらしい。
ザル設定のご都合主義です。
最初はほぼ状況説明的文章です・・・
転生した女性騎士は隣国の王太子に愛される!?
桜
恋愛
仕事帰りの夜道で交通事故で死亡。転生先で家族に愛されながらも武術を極めながら育って行った。ある日突然の出会いから隣国の王太子に見染められ、溺愛されることに……
竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!
身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される
絵麻
恋愛
桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。
父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。
理由は多額の結納金を手に入れるため。
相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。
放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。
地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる