男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される

山口三

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続々と明らかになる事実2

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「あら、景子。今日は仕事だったんじゃないの?」

 キッチンで遅い朝食を取っている景子を見たリカが驚いて言った。

「今日の仕事は‥番宣はキャンセルになったのよ。明日ドラマの撮影が終わったら、実質のレギュラー番組はあと1本になっちゃうわ」

「でもまた仕事が入って来るでしょ? 景子は売れっ子なんだから!」
「これから先は分からないわ。私事務所を解雇されたのよっ」

「な、なんですって!?」
「新しい事務所も紹介してもらえなかったわ。自分の足で探すか、個人事務所を立ち上げるしかないの」
「・・だ、大丈夫。景子は売れっ子なんだから引く手あまたよ」

 リカが必死に景子をなだめていると父親の敦司が真っ蒼になって姿を現した。

「た、大変だ。保健所が抜き打ち検査に来てる」
「何ですって! まさか工場にも来てるんじゃないでしょうね?」
「工場にも来てる、書類も急いで処分した方がいい」

「え、何なの? お父さん」
「な、何、大した事ないさ。景子はゆっくり食事してなさい」



 この後、高野家が経営する和菓子工場で賞味期限切れの小麦粉を使用していた事がニュースで大々的に報道された。賞味期限切れ間近の小麦粉を大量に安く仕入れ、それを期限が切れた後も使用して作った菓子を販売していたのだ。

 他にも砂糖や小豆などの材料も同じような方法でコストを抑えており、現在工場は営業停止処分が下っている。

 また過去にあった火災に関しても再び取り上げられ、高野家の経営体制に対する非難が続出していた。

「うちは・・うちはもうお終いだ・・大口の取引先は皆無くなってしまった。銀行もお金を貸してくれなくなったし、今度の給料日にはどうやってお金を工面したらいいか・・」高野敦司はずっとひとりで呻いている。

「そもそもリカ、お前が賞味期限切れの材料を使い続けるから悪いんだ!」
「まぁ! あなただっていいアイデアだって言ってたじゃない。今更私一人に責任を押し付けないでよ」

「修二はどこへ行ったんだ? こんな大変な時に・・」
「何言ってるのよ、修二さんは金策に走ってるわ。あなたこそぶつぶつ文句ばっかり言ってないでなんとかしたらどうなの!」

「うるさい! 俺が何も知らないと思ってるのか? お前と修二が・・俺の目を盗んで・・チキショー-俺の家から出て行け!」

「ちょっとやめてよ、お父さんもお母さんも! 少し冷静になってちょうだい」
「そうだ景子、五瀬さんとどうなったんだ? 彼ならお前の為にお金を用立ててくれるんじゃないか?」

「お父さん、だめよ。五瀬馨は私なんて眼中にもないわ」
「そうだわ! 沙耶よ。沙耶から五瀬社長に頼んでもらいましょう? あのお人好しなら私達に同情するに決まってるわ」

 リカの言葉で3人は頭をつつき合わせ相談に入って行った・・。



_________



 社長室で高野家の記事を読んでいた馨はタブレットを置いて言った。

「もう高野家は終わりだな」
「不祥事は2度目ですからね」
「後は沙耶の父親の問題が解決すればな・・」

「それについては朗報があります。上手くいけば京都のホテルの問題も一気に解決できるかもしれません」

 涼の言葉に期待して、馨は早めに帰る事にした。(早く帰れる日は滅多にないしな‥)



 早めの帰宅をした馨が結花を呼ぶと、2階からしぶしぶ結花が顔を覗かせた。

「何? 兄さん、私期末テストの勉強で忙しいんだけど」
「それは悪かったな、今日は来客があるんだが・・また後にするか」

 馨の後ろから沙耶がひょこっと顔を出した。

「あっ沙耶さん!」

 結花は階段を駆け下りてきた。

「結花ちゃん、お久しぶりです。元気だった? ごめんね勉強中に」
「いいの、全然いいの。沙耶さん、会いたかった!」


 リビングに場所を移すと園田がお茶を運んできた。

「まあ! 沙耶ちゃん!」
「あっ、園田さん? 懐かしい・・ほんとに園田さん?」

「そうですよ、園田です・・まあまあお綺麗になって・・お元気でしたか?」
「はい、色々ありましたけど今は五瀬さんに良くして頂いてるので」

「園田さんも掛けて一緒に話を聞いてください」馨は園田にソファに座るよう勧めた。

 馨は高野家の状況を詳しく話して聞かせた。

「多分彼らは沙耶を説得して五瀬家からお金を引き出そうとするだろうから、誰ともしばらくは接触させたくないんだ」

「沙耶さんをうちが守るんだね!」結花はぐっと乗り出した。

「その通り。しばらくはここで生活してもらって、人と会う時は誰かが一緒に居る事。高野家の人間やその関係者と二人きりにさせない事」

「なんだか私、子供みたいですね」
「君は立派な大人だと思っているが、相手がずる賢いからな。それに君は優しすぎる」

「クリスマスも沙耶さんと一緒に過ごせるね」
「私も腕によりをかけてご馳走を作りますよ」

 結花も園田も嬉しそうだ。そして馨自身が誰より、沙耶がここで過ごすことを快諾してくれて嬉しかったのだった。
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